AI記事のトンマナ(トーン&マナー:文章の語り口と表記の決まりごと)は、書く人が増えるほどそろわなくなります。AIに任せた記事だけ、どこか他人行儀に読めてしまう。複数人で使ったら記事ごとに文体がばらばらで、公開前の手直しに、書くのと同じくらいの時間がかかっている。
当メディアを運営する株式会社街中文学は、AI記事の制作とリライトを数百本の規模で続けてきました。その中で分かったのは、トンマナを左右するのはAIの性能より仕組みだということです。人のライターなら察してくれた「うちらしさ」も、AIは察してくれません。
ルールを1枚の文書にし、書かせる前と公開前の両方で使うことが、トンマナをそろえる近道です。この記事では、当メディアが実際に使っているルールを記入例にした、スタイルガイドのテンプレを公開します。
AIへの伝え方3つと指示文の例、添削の頼み方、公開前に機械と人で見る項目も、実例つきでまとめました。読み終えるころには、自社用の1枚目を書き始められるはずです。
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先に結論:トンマナは「1枚のガイド」を入口と出口に通せばそろう
まず最初に、結論からお伝えします。
- 崩れる原因はAIの性能より、基準・入口・出口の仕組みがないこと
- ガイドは1枚・10項目前後。AIへの指示(入口)と公開前チェック(出口)に同じものを通す
- 統一の最優先は文体より、自社の「名前と用語」
3つ目は意外に思われるかもしれません。トンマナというと文末や言い回しの話に聞こえますが、最初にそろえるべきは自社名・サービス名・主要な用語の呼び方です。その理由はプロの判断基準の章で説明します。
自分の状況に近い行を選び、最初にやることと読む章を決めてください。
| あなたの状況 | 最初にやること | 読む章 |
|---|---|---|
| 1人でAIを使って書いている | 「うちらしい記事」を3本選び、共通点を5〜10個書き出す | テンプレ→指示文の例 |
| 複数人・外注先もAIを使っている | 全員が同じガイドを指示文に入れる運用に決め、表記の揺れは公開前に機械で拾う | 言葉の辞書→機械で見る型 |
| AIツールに登録して、毎回の貼り付けをやめたい | ガイドをツールの指示欄に登録し、ガイドの正本を1つに決める | 登録する方法→守られないときの対処 |
複数人で使う場合の要点は、指示文の書き方を個人の工夫に任せないことです。任せると、人数分の文体が生まれます。
AI記事のトンマナが崩れる原因
AI記事のトンマナが崩れる原因は、AIの性能ではなく「基準・入口・出口」の3つがないことです。当メディアの初稿でも、基準を文書にしていたのに、出口の機械チェック前は同じ文末の連続が多く残っていました。原因の整理、実測のデータ、崩れたときに失うものの順に説明します。

原因は「基準・入口・出口」の3つがないこと
AI記事のトンマナのばらつきは、突き詰めると次の3つの不在から生まれます。
| 不在 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 基準の不在 | 担当者ごとに「良い文章」の解釈が違う | スタイルガイドの明文化 |
| 入口の不在 | AIへの指示が毎回その場しのぎ | 指示文(プロンプト)へのガイド組み込み |
| 出口の不在 | 公開前に文体を見る工程がない | チェックリストへのトンマナ項目追加 |
3つのうち根っこにあるのは、基準の不在です。基準が担当者の頭の中にしかないと、AIへの指示も公開前の見直しも、人によって中身が変わってしまうのです。
国の文書にも、同じ考え方が書かれています。文化審議会の「公用文作成の考え方(建議)」(令和4年1月)がその1つです。この文書は、親しみやすい表記を使ってよい解説・広報の文書でも、同じ用語の表記を混ぜないよう求めています。
そのうえで「個人の判断に頼らず、各部署で表記に関する考え方を共有しておく。」と書いています。スタイルガイドは、この「表記に関する考え方」を自社用に1枚へまとめたものです。
初稿47本の実測:同じ文末の3連続は72%で起きた
生成AIで書いた当メディアの初稿47本を2026年8月に集計すると、34本(72%)で同じ文末が3文続いていました。内訳は次の表のとおりです。
| 観測項目 | 結果 |
|---|---|
| 同じ文末が3文連続した初稿の割合 | 34本/47本(72%) |
| 3連続の合計箇所数 | 196箇所(1本あたり中央値4箇所・最大19箇所) |
| 3連続の文末の内訳 | 「〜ます」186箇所(95%)/「〜です」7箇所(4%)/「〜ません」2箇所(1%)/「〜こと」1箇所(1%) |
| 一文60字超・4文以上の段落 | この2項目を測った14本すべてで発生(合計432文・254段落) |
※観測条件:2026年8月に、自社メディアの初稿(機械チェックを最初に通した時点の版)47本を集計した実測値です。この原稿は生成AIで執筆したもので、人の手書きの統計ではありません。
母数は項目により異なる点にご注意ください。3連続の割合は47本中、一文の長さと段落の長さは途中から測り始めた14本中の集計です。「47本中14本で発生」という意味ではありません。
1メディア・47本の記録であり、一般的な傾向を示すものではありません。60字・4文の基準は当社独自の測定基準で、文章術の本の目安とは別物です。
この初稿は、文末などの品質基準を文書にし、書く前から把握したうえで書いたものです。それでも72%で崩れが残ったことから、基準を渡す入口だけでは防ぎきれないと分かります。
一方で、直す場所は「〜ます」の連続に集中していました。出口で文末の3連続を機械で見つければ、手直しの当たりはすぐにつきます。
文体のばらつきは読者の信頼を削る
見落とされがちなのは、トンマナの統一が見た目だけの問題ではないことです。文体や表記がばらつくと、「いろいろな人が書き散らしたサイト」という印象を持たれやすくなります。記事ごとに語り口が変わると、読者はどこまで同じ基準で書かれているのかを判断しにくいからです。
Googleの「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」にも、関係する問いがあります。自己評価の問いの1つが「コンテンツに誤字やスタイルに関する問題はありませんか。」です。記事ごとに表記や語り口が変わるサイトは、この問いに胸を張って答えにくくなるでしょう。
トンマナには「らしさ」の器という面もあります。どんなに良い一次情報を入れても、毎回違う声色で語られたら、読者の記憶には積み上がりません。同じ声で語り続けることが、メディアを「誰かの発信」に変えるのです。
なお、文体レベルの「AIっぽさ」の直し方は、AI臭さを消すリライトの記事で症状別に扱っています。この記事のガイドは、その症状を出さないための予防策にあたります。
スタイルガイドのテンプレ:6分類と記入例
スタイルガイドの1枚目は、6分類・10項目前後のテンプレに記入例を埋める形で作ると迷いません。下の表は、当メディアが実際に使っているルールをそのまま記入例にしたものです。表記の土台、作る手順、言葉の辞書まで順に示します。
載せるのは6分類・10項目前後
最初のスタイルガイドに載せるのは、次の6分類で足ります。項目を増やしすぎると守られにくくなるので、影響の大きいものから10項目前後に絞りましょう。
| 分類 | 決めること | 当メディアの記入例 | 書くときのコツ |
|---|---|---|---|
| 読者と声 | 誰に向けて書くか/敬体か常体か/専門用語の扱い | 読者はSEO・コンテンツの実務者。敬体(です・ます)で統一し、専門用語には1文の補足を添える | 読者を1行で書くと、ほかの項目の判断がぶれない |
| 結論の位置 | 冒頭で結論を出すか/書き出しの定型文 | 「先に結論」の節は「まず最初に、結論からお伝えします。」で始める | 定型文は1つに固定し、使わない書き出しも決めておく |
| 構成の型 | 説明の順番/見出しの階層/箇条書きの上限 | 結論から書く型(PREP:結論→理由→具体例→結論)。要素は「1つ目は〜です」と番号で示す。体言止めは使わない。箇条書きは1項目70字以下 | 上限を超えたら文章で書く、という逃げ道まで決める |
| 表記ルール | 漢字とかなの使い分け/記号/専門用語の書き方 | 疑問符と括弧は全角。「技術SEO」ではなく「テクニカルSEO」と書く。SEO用語のカタカナは漢字の造語に置き換えない | 迷いやすい語だけを「AではなくB」の形で並べる |
| NG表現 | 使わない言葉/扱いを人が判断する言葉 | 使わないと決めた語3つ(言い回し・誤った訳語・略語)は機械で止める。断定や割合を言い切る表現4つは警告にとどめ、人が文脈で判断する | 語を2段に分けると、手順の案内まで消さずに済む |
| 名乗りと呼称 | 自社・サービス・主要用語の正式な呼び方 | 社名は「株式会社街中文学」、代表者名は「今泉 佑基」で統一 | 正式名と、やりがちな誤記を並べて書く |
この表をコピーして、記入例の列を自社の言葉に書き換えれば1枚目ができます。
空欄から書く場合は、「決めること」の列を質問として読み、答えを1行ずつ埋めてください。「書くときのコツ」の列は、ガイドを渡された人が迷わないための注意書きです。
表記は公的な基準を土台にする
表記のルールは、ゼロから作らずに公的な基準を土台にすると早く決まります。原因の章で紹介した「公用文作成の考え方」には、文体について次の一文があります。
一つの文・文書内では、常体と敬体のどちらかで統一する。
同じ文書は、広く一般に向けた解説や広報なら、読み手に配慮してよいという立場です。漢字を使うことになっている語でも、仮名で書いたり振り仮名を使ったりできるとしています。
| 公的な基準に任せる部分 | 自社で書き足す部分 |
|---|---|
| 1つの文書の中で常体と敬体を混ぜない | 敬体と常体のどちらを使うか |
| 同じ用語に幾つもの表記を混ぜない | 自社名・サービス名・業界用語の正式な書き方 |
| 解説・広報では読み手に配慮した表記にしてよい | どの語を仮名で書くか(例:「下さい」→「ください」) |
当社の判断基準は、公的な基準をそのまま土台にし、自社で決める部分だけをガイドに書き足すことです。土台がある分だけガイドは短くなり、守られやすくなります。
最初の1枚を作る3ステップ
テンプレを埋める作業は、次の3ステップで進めます。
「うちらしい記事」を3本選び、共通点を言葉にする
既存記事のベスト3を並べ、なぜ良いのかを表記・文体・構成の観点で書き出します。ゼロから理想を考えるより、実物から逆算するほうが速くて正確です。
AIへの指示文の冒頭にガイドを貼る
作った1枚を、記事を書かせる指示文に毎回入れます。貼り方と指示文の例は、AIへの伝え方の章にまとめました。指示文全体の組み立ては、プロンプト設計の記事が参考になります。
公開前チェックに「トンマナ3項目」を足す
結論の位置・NG表現の有無・表記の揺れの3つに絞って、公開前に見直します。全体のチェックの仕組みは公開前チェックリストの記事を参照してください。
ステップ1の「共通点の言語化」は、たとえば次の粒度で足ります。「結論が最初の3行以内に出ている」「専門用語には初出で一言の補足がある」「事例は自社の実体験に限る」といった形です。
5〜10個書けたら、それがガイドの原型になります。言葉にできないときは、ベスト3とイマイチな1本をAIに渡し、「違いを10個挙げて」と頼むとたたき台ができます。
大事なのは、ガイドを完成品にしないことです。運用中に見つけた違和感は、月に1回ガイドへ書き足していきましょう。スタイルガイドは書いて終わるものではなく、育てるものです。
1枚目に置く「うちの言葉の辞書」
ガイドの1枚目には、文体のルールより先に「うちの言葉の辞書」を置くことをおすすめします。自社名・サービス名・主要な用語の正しい書き方と、やりがちな誤記を並べた小さな表のことです。
| 種類 | 正しい書き方 | やりがちな誤記 |
|---|---|---|
| 自社名 | 株式会社〇〇 | 〇〇社/(株)〇〇/〇〇株式会社 |
| サービス名 | 〇〇クラウド | 〇〇Cloud/〇〇くらうど |
| 主要な用語 | テクニカルSEO | 技術SEO |
| 読者の呼び方 | ご担当者様 | あなた/皆様(記事ごとに混在) |
※自社名・サービス名・読者の呼び方の行は、書き方を示すための作例です(例は架空)。主要な用語の行は、当メディアの実際のルールです。
載せるのは、読者が目にする言葉だけで構いません。社内でしか使わない略語まで載せると、辞書が太って読まれなくなります。10語前後の小さな辞書が、いちばん使いやすい大きさです。
辞書で決めるのは、会社・サービス・用語の名前です。どの表記を正式にするか迷うなら、検索でよく使われる表記を優先する決め方があります。
その決め方はSEOキーワードの記事で紹介しました。辞書を文体より先に作る理由は、判断基準の章で説明します。
AIへのトンマナの伝え方:3つの方法と指示文の例
AIへのトンマナの伝え方は、指示文に貼る、お手本を添える、ツールに登録する、の3つです。まずは1つ目から始め、書き手や記事数が増えてきたら2つ目と3つ目を足していきます。最後に、AIがルールを守らないときの対処もまとめました。
方法1:ガイドを指示文の冒頭に貼る
いちばん手軽なのは、スタイルガイドを記事の指示文の冒頭に貼る方法です。依頼の内容より先にルールを置くのは、何を書くかより先に、どう書くかを決めて渡すためです。
ラベルを付けて項目を分けると、AIにも人にも読みやすくなります。次の例は、この記事の説明のために作った作例です。
以下のスタイルルールに従って、記事の本文を書いてください。
- #読者:中小企業のマーケティング担当者。専門知識の深さは人によって違う
- #文体:です・ます調で統一する。体言止めは使わない
- #表記:疑問符と括弧は全角。「技術SEO」ではなく「テクニカルSEO」と書く
- #NG表現:大げさな言い切りは使わない。「〜することが可能です」は「〜できます」と書く
- #お手本:下に貼る2本の文章の語り口に合わせる。内容や言い回しはまねない
- #補足:専門用語が出たら、直後に1文で意味を説明する
(このあとに、記事のテーマ・読者の悩み・見出し案を続けて書く)
ポイントは、NG表現も「使わない」で終わらせず、代わりの書き方まで示すことです。読者の欄を具体的にするには、AI記事のペルソナ設定の記事が参考になります。
方法2:お手本の文章を2〜3本添える
2つ目は、ルールと一緒にお手本の文章を2〜3本添える方法です。ルールだけでは伝わりにくい語り口の温度や説明の細かさを、実物で見せられます。
お手本には、ステップ1で選んだ「うちらしい記事」をそのまま使えます。記事をまるごと渡さなくても構いません。語り口がよく出ている段落を抜き出せば足ります。
添えるときは「語り口だけを参考にし、内容や言い回しはまねない」と書き添えてください。2〜3本にするのは、1本だけだとその記事の話題や決まり文句まで写しやすいからです。複数本を並べると、共通する語り口のほうが伝わりやすくなります。
方法3:毎回貼らずに済む場所に登録する
3つ目は、ガイドをAIツールの設定に登録し、毎回貼らずに済むようにする方法です。登録できる場所の例は、ChatGPTの「カスタム指示」や、Claudeの「プロジェクト」ごとの指示欄です。
Claudeのヘルプ記事(What are projects?)は、指示の例に、よりフォーマルな口調の指定を挙げています。特定の役割や業界の視点で答えさせる使い方も、同じ記事で紹介されています。トンマナのルールを置く場所として、そのまま使える機能です。
当メディアも、記事制作に使う設定に文体の指定を登録しています。登録で気をつけたいのは、ガイドの正本を1つに決めておくことです。登録した内容と手元のガイドが食い違うと、どちらが正しいのか誰にも分からなくなります。
複数人で使う場合は、全員が同じ登録内容を使う運用にそろえましょう。
AIが守ってくれないときの対処

スタイルガイドを作っても、AIが守ってくれないことがあります……。
守られないときの対処は、次の3つです。
①禁止より置き換えで書くこと。禁止だけを書くと、AIは代わりに何を書けばよいかを自分で推測することになります。「〜の代わりに〜と書く」まで示せば、その推測の余地が減ります。
②1回の指示に詰め込みすぎないこと。項目が多すぎると守られにくくなるので、影響の大きい10項目前後に絞ります。残りは、公開前チェック(出口)で拾う前提にしてください。
入口ですべてを防ごうとしないことが、この対処の要点です。漏れは出口で捕まえると決めておけば、指示文は短いまま保てます。
③守られなかった型は、指示文ではなくガイドに書き足すこと。その場の指示文だけを直すと、次の記事で同じ崩れが起きます。ガイドのほうを直しておけば、同じガイドを使う全員の、次の記事から効果が出るはずです。
キーワード選定から構成、AIによる一次執筆、人による編集、WordPress入稿まで一括で対応します。制作リソースの不足や、記事ごとの品質差にお困りの企業向けサービスです。
プロの判断基準:統一は「名前と用語」から始める
ガイドの項目には優先順位があり、当社は自社の「名前と用語」の統一を最優先にしています。次に信頼にかかわる表現、最後に文末などの読み味の順です。あわせて、NG語の分け方と、そろえても評価されない線引きを示します。

そろえる順番は「名前と用語→信頼→読み味」
統一の効き目が大きい順に並べたのが、次の表です。
| 優先度 | 統一する項目 | なぜこの順番か |
|---|---|---|
| ①最優先 | 自社名・サービス名・主要用語の呼び方 | 人とAIの両方に「何者か」を伝える蓄積になる |
| ②次点 | 信頼にかかわる表現(誇張・断定・出典の書き方) | 読者の信頼と法令リスクに直結する |
| ③その後 | 読み味(文末・漢字の開き・記号) | 統一感は増す。①②に比べると、崩れたときの影響は小さい |
①を最優先にするのは、検索エンジンやAIが会社をどう覚えるかに関わるからです。当社は、同じ名前が同じ文脈の中で言及され続けているかどうかが、その手がかりの1つだと考えています。そうして会社やサービスは、1つの実体(エンティティ:個別に見分けられる対象)として覚えられていきます。
「〇〇社」「〇〇株式会社」「〇〇グループ」が記事ごとに混ざるサイトを想像してみてください。サービスの呼び名まで時期によって変わると、この積み上げを自分で妨げかねません。
表記の揺れは、読者への小さな不親切であると同時に、AIに正しく覚えてもらいにくくなるという機会損失でもあります。だからガイドの1枚目には、文体のルールより先に「うちの言葉の辞書」を置くのです。
名前は頻繁に変えない
この考え方から、もう1つの判断が出てきます。名前は頻繁に変えないことです。サービス名や連載名を気軽に変えるたびに、積み上げた認識が途切れやすくなります。
変える場合は、新しい名前と古い名前の関係をサイト上で明示してください。一貫性は、記事の間だけでなく、時間の流れの中でも守るものです。
NG語は「消す語」と「人が見る語」に分ける
NG語は1つのリストにまとめず、「消す語」と「人が見る語」の2段に分けます。当メディアの公開前チェックも、この2段で動いています。
| 段階 | 登録する語の種類 | 見つかったときの扱い |
|---|---|---|
| 消す語(エラー) | 使わないと決めた言い回し・誤った訳語・読者に伝わらない略語 | 公開前に消す。1つでも残っていれば公開しない |
| 人が見る語(警告) | 断定を強める言い切り・割合を言い切る表現 | 人が文脈を読み、誇張なら直し、手順の案内なら残す |
2段に分けるのは、断定を強める語を一律に禁止すると、手順の案内まで弱い言い方に変わってしまうからです。たとえば「保存してから閉じる」という手順を強く念押しする言い切りは、誇張ではなく読者への親切です。こうした語は機械で見つけるところまでにとどめ、残すかどうかは人が決めます。
AIへのNG指定も同じ形にすると、指示が短くなります。指示文には「消す語」だけを置き換えの形で書き、「人が見る語」は公開前チェックに回しましょう。
文体をそろえても、中身の量産は評価されない
トンマナの統一は、それ自体がゴールではありません。文体がそろっていても、中身が同じ記事を価値を足さずに大量に作れば、検索での評価にはつながらないからです。
Googleの「スパムに関するポリシー」には、「大量生成されたコンテンツの不正使用」という項目があります。定義は次のとおりです。
ユーザーをサポートすることではなく、検索ランキングの操作を主な目的として大量のページを生成することを指します。
例の1つ目に挙がっているのは、次の行為です。
生成 AI ツールまたはその他の同様のツールを使用して、ユーザーにとっての価値を付加することなく大量のページを生成すること
注意したいのは、定義に「検索ランキングの操作を主な目的として」という意図の条件が付いていることです。AIで書くこと自体が問題とされているわけではありません。一方で、文体だけをそろえた記事を量産すれば、この例と見分けがつきにくくなります。
Googleが2023年2月に出した「AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンス」も、この点は同じです。ガイダンスには「作成方法ではなく、内容が評価の対象となります。」と書かれています。
機械チェックが拾えるのは、文末の連続や字数、NG語といった形の部分だけです。この情報が読者の役に立つかという判断は、今も人の仕事になります。
トンマナをそろえる作業は、その判断のための下ごしらえです。機械で片付く部分を先に片付ければ、人のレビューを読者への価値の判断に集中させられます。
- 迷ったら、名前と用語→信頼にかかわる表現→読み味の順にそろえる
- 名前は頻繁に変えず、変えるときは新旧の関係をサイト上で示す
- NG語は「消す語」と「人が見る語」の2段に分ける
- 文体をそろえるのは読みやすさのため。量産の見た目合わせにしない
今泉の視点:トンマナのご相談は、たいてい「文体を統一したい」から始まります。でも実際にサイトを監査して最初に見つかるのは、文末の揺れではなく、自社サービス名の表記の揺れです。
正式名称・略称・ひらがな表記が入り乱れ、ひどい場合は公式サイトと外部への寄稿で名前が違う。ご本人たちは毎日見ているので気づきません。
文体の統一は読者への礼儀ですが、名前の統一は自社の資産防衛です。ガイドづくりの最初の30分は、ぜひ「うちの言葉の辞書」に使ってください。
実例:AI記事を数百本運用するメディアのトンマナ管理
株式会社街中文学(代表 今泉 佑基)が運営する当メディアは、AI記事を数百本の規模で制作・リライトしています。トンマナは人の注意力に頼らず、仕組みで管理しているのが特徴です。ここでは、その仕組みを4つの場面に分けて公開します。

機械で見る3つの型
公開前には、次の3つの型を機械で見つけています。どれも人の目では見落としやすく、機械のほうが正確に拾える種類の崩れです。
| 型 | 当社の基準 | なぜ見るか |
|---|---|---|
| 同じ文末の連続 | 同じ文末が3文続いたら指摘 | 語り口が単調になる。当メディアの初稿では「〜ます」の連続が大半だった |
| 一文の長さ | 60字を超えたら指摘 | 長い文は読み返しが増える。2文に分けるだけで読みやすくなる |
| 段落の長さ | 4文以上の段落を指摘 | スマートフォンでは画面の大半を文字が占める。1段落3文までに分ける |
※3文・60字・4文は当社が定めた基準で、一般的な文章術の目安とは別のものです。
このほかに、箇条書きの字数とNG語も機械で見ています。箇条書きを1項目70字までにしているのは、超えるとスマートフォンで長く折り返すからです。それでは、一覧で見渡せるという箇条書きの良さが消えてしまいます。
ルールに理由まで書いておくと、ルールは「守らされるもの」から「納得して使うもの」に変わります。例外の判断も、理由があれば正しくできるでしょう。
効果は品質の安定だけではありません。ルールが文章になっていると、新しいメンバーや外部ライターの立ち上がりが速くなります。「過去記事を読んで雰囲気をつかんで」ではなく、「この1枚に従って」と渡せるからです。
機械と人の分担の全体設計は、量産と品質管理の記事で解説しています。
統一前後の文章比較(作例)
文末の3連続を直すと、文章はどう変わるのか。説明のために作った作例で比べてみます。
| 直す点 | 統一前(作例) | 統一後(作例) |
|---|---|---|
| 同じ文末の3連続 | スタイルガイドを作ります。AIへの指示文に貼ります。公開前に見直します。 | まず、スタイルガイドを1枚作ります。次に、その1枚をAIへの指示文の冒頭に貼ってください。最後は公開前のチェックで、崩れが残っていないかを見る流れです。 |
| 名前の揺れ | 〇〇クラウドの設定画面を開き、〇〇Cloudのメニューから登録します。 | 〇〇クラウドの設定画面を開き、同じ画面のメニューから登録します。 |
※表の文章は、説明のために作った作例です(例は架空)。
統一後の文章で変えたのは、文末だけではありません。「まず・次に・最後は」と順番を示す言葉を足し、文ごとの役割を分けています。文末を機械的に入れ替えるより、読み手が流れを追いやすくなるからです。
AIに添削を頼むときの依頼文
AIに添削を頼むときは、依頼文に「ここは変えないでください」を1つか2つ、先に書いておきます。「読みやすくしてください」とだけ頼むと、読みやすさの方向にすべてが寄るからです。
あえて短く切った一文や、繰り返して強調した言葉、業界で決まっている表記まで、平らにされて返ってきます。守りたいものを先に名指しすると、その周りが残る仕組みです。名指しは1〜2個が上限で、3つ4つと増やすとどれも守られなくなります。
あわせて次の4行を添えると、返ってくる指摘の粒度がそろいます。そのままAIへの依頼文に使える、持ち帰り用のフォーマットです。
- 誰が読むか(想定読者)
- 何のために書いた文章か(目的)
- どこまで直してよいか(修正の範囲)
- 変えないでほしい所(守りたい表現・言い回し)
添削にAIを使うときの準備は、文章添削AIを無料で使うときの記事でも詳しく扱っています。
添削に渡してよい文章・渡さない文章
添削で渡すのは、書かせるときの指示とは違い、完成した文章そのものです。しかも添削を頼みたくなる文章には、世に出る前のものが多くあります。そこで当社は、渡す文章を性質で3通りに分けています。
| 文章の種類 | 当社の渡し方 | 考え方 |
|---|---|---|
| すでに公開している記事の直し | そのまま渡す | 中身はすでに誰でも読める状態にある |
| 公開前の原稿 | 社名や数字を仮の言葉に置き換えてから渡す | 文章の直しに要るのは書き方で、固有の社名や数字は要らない |
| 発表前の企画そのものが書かれた文章 | 渡さず、自分で読み直す | 言葉を置き換えても、企画の中身そのものが伝わってしまう |
迷ったときは、「この文章が今日外に出たら困るか」で判断してください。困るなら、置き換えるか、渡さない側に入れます。
個人情報をどこまでAIに入力してよいかは、AIライティングと個人情報の記事で線引きを整理しました。
- AI記事作成のプロンプトの書き方:指示文の型を5つの原則で整える
- AI文章が不自然に見える原因:AI臭さを症状別に直す
- AI記事の公開前チェックリスト:機械と人で分ける20項目
- AI記事の量産と品質管理:本数を増やしても崩れない仕組み
- AI記事のペルソナ設定:読者の欄を実在の1人から作る
- AIライティングの完全ガイド:導入から運用までの全体地図
- 一次情報とは:AI記事に独自性を足す素材の見分け方
よくあるご質問
まとめ:同じ声で語り続ける仕組みを作る
- 崩れの原因はAIの性能より、基準・入口・出口の仕組みの不足
- ガイドは1枚・10項目前後。記入例つきのテンプレから始める
- AIへは、貼る・お手本を添える・登録するの3つで伝える
- 最優先は名前と用語の統一。「うちの言葉の辞書」を1枚目に
- 入口と出口で同じ基準を通し、機械と人で見る所を分ける
次の一歩は、自社の「うちらしい記事」を3本選び、共通点を5〜10個書き出すことです。あわせて、自社名とサービス名をサイト内検索して、表記の揺れを数えてみてください。その数が、言葉の辞書を作るきっかけになります。
どの項目をどこまで厳密に運用するかは、書き手の人数と外注の比率で決まるものです。1人で書くなら、辞書とNG語だけでも回ります。書き手が増えるほど、ガイドは品質より先に「議論の時間」を節約し始めるでしょう。
具体的な優先順位は、サイトの状況によって大きく変わります。制作進行・編集から公開後の改善まで、体制づくりはオウンドメディア運用代行で承っています。タイトルまわりの型は、タイトルの書き方もあわせてどうぞ。
キーワード選定から構成、AIによる一次執筆、人による編集、WordPress入稿まで一括で対応します。制作リソースの不足や、記事ごとの品質差にお困りの企業向けサービスです。
