「AIで書いた記事だけ、どこか他人行儀」「複数人でAIを使ったら、記事ごとに文体がバラバラになった」——AI活用が進むほど顕在化するのが、トンマナ(トーン&マナー: 文体と表記の統一感)の問題です。
当社は数百本規模のAI記事制作を運用していますが、トンマナの安定はAIの性能ではなく、渡すルールの明文化で決まります。人間のライターに口頭で伝えていた「うちっぽい文章」を、AIは察してくれません。逆に言えば、ルールを1枚の文書にした瞬間、AIは最も従順な書き手に変わるのです。この記事では、最小1枚のスタイルガイドの作り方と当メディアの実際のルール、そして「どの項目から統一すべきか」の判断基準を公開します。
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先に結論:ガイドは「1枚」から始める
まず最初に、結論からお伝えします。
- 崩れる原因はAIでなく「ルールが頭の中にしかない」こと
- ガイドは最小1枚(10項目前後)。入口と出口の2箇所で同じ基準を通す
- 統一の最優先は文体でなく、自社の「名前と用語」
3つ目は意外に思われるかもしれません。トンマナというと文末や言い回しの話に聞こえますが、実務で最初に統一すべきは、自社名・サービス名・主要な専門用語の呼び方です。これは読みやすさの問題を超えて、検索エンジンやAIが「この会社は何者か」を認識する手がかりに関わります。詳しくは後半の判断基準の章で扱う予定です。
トンマナが崩れる本当の原因

AI記事のトンマナのばらつきは、突き詰めると3つの不在から生まれます。
| 不在 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 基準の不在 | 担当者ごとに「良い文章」の解釈が違う | スタイルガイドの明文化 |
| 入口の不在 | AIへの指示が毎回その場しのぎ | 指示文(プロンプト)へのガイド組み込み |
| 出口の不在 | 公開前に文体を見る工程がない | チェックリストへのトンマナ項目追加 |
この「基準の不在」が実際にどれくらいの型崩れを生むか、当メディアの制作データで確かめました。
| 観測項目 | 結果 |
|---|---|
| 同じ文末が3文連続した初稿の割合 | 34本/47本(72%) |
| 3連続の合計箇所数 | 196箇所(1本あたり中央値4箇所・最大19箇所) |
| 3連続の文末の内訳 | 「〜ます」186箇所(95%)/「〜です」7箇所(4%)/「〜ません」2箇所(1%)/「〜こと」1箇所(1%) |
| 一文60字超・4文以上の段落 | 該当する14本すべてで発生(合計432文・254段落) |
※観測条件: 2026年8月に、自社メディアの初稿(機械チェックを最初に通した時点の版)47本を全数集計した実測値です。この原稿は生成AIで執筆したもので、人の手書きの統計ではありません。母数は項目により異なる点にご注意ください(3連続の割合は47本中、段落基準は該当する14本中の集計です)。「47本中14本で発生」という意味ではありません。1メディア・47本の記録であり、一般的な傾向を示すものではありません。60字・4文の基準は当社独自の測定基準で、文章術の本の目安とは別物です。
見落とされがちなのは、トンマナの統一が「見た目の問題」ではないことです。文体・表記のばらつきは、読者に「複数の外注が書き散らかしたサイト」という印象を与え、サイト全体の信頼を削ります。Googleの「有用で信頼性の高いコンテンツの作成」ガイドが自己診断に挙げる問い——「サイトに一貫した目的や軸があるか」——にも、文章の統一感は静かに影響します。
また、トンマナには「らしさ」の器という一面もあるのです。どんなに良い一次情報を入れても、毎回違う声色で語られたら、ブランドとしての記憶は積み上がりません。同じ声で語り続けることが、メディアを「誰かの発信」に変えます。なお、文体レベルの「AIっぽさ」の直し方はAI臭さを消すリライトの記事で症状別に扱っており、本記事のガイドはその予防装置にあたります。
最小1枚のスタイルガイド:項目テンプレ
最初のスタイルガイドに載せるのは、次の6分類・10項目前後で十分です。
| 分類 | 決めること(例) |
|---|---|
| 読者と声 | 誰に向けて書くか/敬体(です・ます)か常体か/専門用語をどこまで使うか |
| 結論の位置 | 冒頭で結論を出す型か/導入の定型文があるか |
| 表記ルール | 漢字とひらがなの開き方(例:「下さい→ください」)/数字は半角 |
| NG表現 | 使わない言葉のリスト(誇張・断定・古い言い回し) |
| 構成の型 | 見出しの階層ルール/箇条書きの長さ上限/FAQの形式 |
| 名乗りと呼称 | 自社・サービス・主要用語の正式な呼び方/読者を「あなた」と呼ぶか |
作る手順は3ステップです。
「うちらしい記事」を3本選び、共通点を言葉にする
既存記事のベスト3を並べ、なぜ良いのかを表記・文体・構成の観点で書き出します。ゼロから理想を考えるより、実物からの逆算が速くて正確です。
AIへの指示文の冒頭にガイドを貼る
作った1枚を、記事生成の指示文に毎回含めます。「以下のスタイルルールに従って」の一文とセットにするだけで、出力の質が目に見えて変わります。指示文の設計はプロンプト設計の記事の基本形に載せてください。
公開前チェックに「トンマナ3項目」を足す
結論の位置・NG表現の有無・表記ゆれの3つだけ、公開前に確認します。全文チェックの仕組みは公開前チェックリストの記事を参照してください。
ステップ1の「共通点の言語化」は、たとえばこんな粒度で十分です。「結論が最初の3行以内に出ている」「専門用語には初出で一言の補足がある」「た。た。た。と同じ文末が続かない」「事例は自社の実体験に限る」——5〜10個書けたら、それがガイドの原型です。うまく言葉にできない場合は、ベスト3の記事とイマイチな1本をAIに渡して「違いを10個挙げて」と頼むと、たたき台が出てきます。
大事なのは、ガイドを「完成品」にしないことです。運用中に見つけた違和感——「この言い回し、うちっぽくない」——を月1回ガイドに追記していく。スタイルガイドは書くものではなく、育てるものです。
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プロの判断基準——最優先は「名前と用語」の統一

ここからが本記事の核心です。ガイドの項目には優先順位があります。当社の判断基準を、統一の効き目が大きい順に示しましょう。
| 優先度 | 統一する項目 | なぜ最優先か |
|---|---|---|
| ①最優先 | 自社名・サービス名・主要用語の呼び方 | 人とAIの両方に「何者か」を伝える蓄積になる |
| ②次点 | 信頼にかかわる表現(誇張・断定・出典の書き方) | 読者の信頼と法令リスクに直結する |
| ③その後 | 読み味(文末・漢字の開き・記号) | 統一感は増すが、崩れても実害は小さい |
①を最優先にする理由は、AI時代の情報流通の仕組みにあります。検索エンジンやAIは、「一貫した名前で、一貫した文脈の中で言及され続けているか」を手がかりに、会社やサービスを一つの実体(エンティティ)として認識していきます。「〇〇社」「〇〇株式会社」「〇〇グループ」が記事ごとに混在し、サービスの呼び名が時期によって揺れているサイトは、この認識の蓄積を自分で妨げてしまいかねません。表記ゆれは読者への小さな不親切であると同時に、長期的には「AIに正しく覚えてもらえない」という機会損失なのです。だからスタイルガイドの1枚目には、文体のルールより先に「うちの言葉の辞書」——自社名・サービス名・主要用語の正しい表記と、やりがちな誤記のリスト——を置くことをおすすめします。
「言葉の辞書」の作り方も簡単です。正式表記を左、やりがちな誤記を右に並べるだけ——「正: 街中Brain/誤: 街中ブレイン・machinaka brain」のような形式です(例は架空です)。載せるのは読者が目にする言葉だけで構いません。社内でしか使わない略語まで載せると、辞書が太って参照されなくなります。10語前後の小さな辞書が、いちばん実用的です。
この観点はもうひとつの判断も導きます。名前は頻繁に変えないこと。サービス名や連載名を軽い気持ちでリニューアルするたび、積み上げた認識はいったんリセットされます。変える場合は、新旧の名前の関係をサイト上で明示する——一貫性は、時間方向にも守るものです。
ここで一つ、誤解しやすい点を補っておきます。トンマナの統一そのものはゴールではありません。GoogleはAI生成コンテンツに関する検索ガイダンスで、コンテンツの生成方法を問わず「読者の役に立つか」を評価の軸にする方針を示しています。機械チェックが拾えるのは文末の連続・字数・NG語といった表記・形式面だけで、「この情報が読者の役に立つか」という判断は、今も人間の仕事です。トンマナを統一する作業は、機械が拾える部分を先に片付ける下ごしらえです。そうすることで、人間のレビューを本当に判断が要る部分——読者価値の有無——に集中させられます。
実際、当メディアの初稿47本を集計した結果でも、機械チェックが拾う型崩れ(文末の3連続・一文60字超・4文以上の段落)は珍しくありません。文末の3連続は47本中72%(34本)で発生し、一文60字超・4文以上の段落は該当する14本すべてで発生していました。ただし、これは仕組みで直せる問題です。むしろ現場でサイトを監査するとき最初に驚かされるのは、別の種類のばらつきでした。
今泉の視点:トンマナのご相談は、たいてい「文体を統一したい」から始まります。でも実際にサイトを監査して最初に見つかるのは、文末の揺れではなく、自社サービス名の表記ゆれです。正式名称・略称・ひらがな表記が入り乱れ、ひどい場合は公式サイトと外部への寄稿で名前が違う。ご本人たちは毎日見ているので気づきません。文体の統一は読者への礼儀ですが、名前の統一は自社の資産防衛です。ガイドづくりの最初の30分は、ぜひ「うちの言葉の辞書」に使ってください。
実例:当メディアが運用しているルール

参考として、当メディアが数百本の制作・リライトで実際に運用しているルールの一部を公開します。
- 結論導入の型: 記事冒頭の結論は「まず最初に、結論からお伝えします。」で始める
- 箇条書きは1項目70字以内。超えるなら箇条書きをやめて文章で書く
- NG語リストを機械チェック化(誇張表現・使わない定型句を登録)
- 言い切りを強める断定表現は原則言い換える
- 英数字は半角・絵文字は使わない・見出しに記号を多用しない
ポイントは、これらの一部を機械チェックにしていることです。箇条書きの字数やNG語は、人間の目より機械のほうが正確に拾えます。人間のレビューは「らしさ」「誠実さ」のような判断が要る部分に集中させる——この分担で、チェックの負荷を増やさずに統一を保てます(機械と人間の分担の全体設計は量産と品質管理の記事参照)。見出し構造の基本はGoogleのSEOスターターガイドにも沿っています。
ルールには、それぞれ理由があります。たとえば「箇条書き70字」は、それを超えた項目はスマートフォンで3行以上に折り返し、箇条書きの一覧性という利点が消えてしまうからです。理由まで書いておくと、ルールは「守らされるもの」から「納得して使うもの」に変わり、例外判断も正しくなります。
効果は品質の安定だけではありません。ルールが明文化されていると、新しいメンバーや外部ライターの立ち上がりが速くなります。「過去記事を読んで雰囲気を掴んで」ではなく「この1枚に従って」と渡せるからです。トンマナの投資は、実は採用と外注の投資でもあります。

スタイルガイドを作っても、AIが守ってくれないことがあります……。
対処としては、次の3つが有効です。
①禁止より置き換えで書くこと。「〜は使わない」より「〜の代わりに〜と書く」のほうが、AIは着実に従います。
②1回の指示に詰め込みすぎないこと。ルールが30項目を超えると遵守率が下がるため、影響の大きい10項目に絞り、残りは公開前チェック(出口)で拾います。それでも漏れは出るので、入口で7割・出口で3割を捕まえる設計だと考えてください。
③添削の依頼文に「ここは変えないでください」を1つか2つ先に書いておくこと。「読みやすくしてください」とだけ頼むと、読みやすさの方向にすべてが寄ります。あえて短く切った一文・繰り返して強調した言葉・業界で決まっている表記まで、平らにされて返ってくるのです。守りたいものを先に名指しすると、その周りが残るという理屈です。名指しは1〜2個が上限で、3つ4つと増やすとどれも守られなくなります。
あわせて次の4行を添えると、返ってくる指摘の粒度がそろいます。そのままAIへの依頼文に使える、持ち帰り用のフォーマットです。
- 誰が読むか(想定読者)
- 何のために書いた文章か(目的)
- どこまで直してよいか(修正の範囲)
- 変えないでほしい所(守りたい表現・言い回し)
指示文の組み立てはプロンプト設計の記事、全体の体制はAIライティング完全ガイドで解説しています。
よくあるご質問
まとめ:同じ声で語り続ける仕組みを作る
- トンマナの崩れはAIのせいではなく、基準の明文化不足
- ガイドは最小1枚(10項目前後)から。育てる前提で始める
- 最優先は名前と用語の統一。「うちの言葉の辞書」を1枚目に
- 入口(AIへの指示)と出口(公開前チェック)で同じ基準を通す
- 機械で拾える項目は自動化し、人間は「らしさ」の判断に集中する
次の一歩は、自社の「らしい記事」を3本選んで、共通点を10個書き出すことです。あわせて、自社名とサービス名をサイト内検索して、表記ゆれを数えてみてください。その数が「言葉の辞書」を作る動機になります。なお、どの項目をどこまで厳密に運用するかは、書き手の人数と外注の比率次第です。1人で書くなら辞書とNG語だけでも回りますが、書き手が3人を超えたら、ガイドの整備は品質より先に「議論の時間」を節約し始めます。ガイドづくりから機械チェックの導入まで、制作体制の設計は記事制作・メディア支援で承っています。タイトルまわりの型はタイトルの書き方もあわせてどうぞ。
キーワード選定から構成、AIによる一次執筆、人による編集、WordPress入稿まで一括で対応します。制作リソースの不足や、記事ごとの品質差にお困りの企業向けサービスです。
