
外国人向けの観光サイトの作り方に迷う自治体・DMO担当者へ、成果につながる道筋をやさしく示します。
ネイティブに伝わる翻訳・ローカライズ、情報設計、検索意図に沿う記事構成、多言語SEOや構造化データ、Core Web Vitalsまで、基礎から実務の勘所を噛み砕いて解説します。



予算や人手が限られても、CMS運用やSNS連携、MEO、KPI設計で観光サイトの集客とコンバージョンを安定して伸ばせたら、担当部局への説明はぐっと楽になります。
成功事例とチェックリスト、現実的な運用ロードマップを提示します。
今より少ないリソースで、訪日客の心に刺さる発信を始めませんか?
外国人向け観光サイトの作り方は?作成前に決めること





この章では、外国人向け観光サイト制作の成功を左右する3つの重要な前提について紹介します。
2025年1-3月期の訪日外客数は1,053万人(前年同期比23.1%増)を記録し、インバウンド需要が本格回復する中、戦略的なサイト設計がこれまで以上に重要になっています。
作成前に必ず決めるべき要素は以下の通りです。
- ターゲット国・言語・旅行形態の明確な定義
- 地域独自の観光体験価値(USP)とストーリー設計
- 予約・問い合わせ導線の最適化とKPI設定
前提(1)ターゲット国・言語・旅行形態(個人/団体)を定義する
外国人向け観光サイトで成果を出すには、「外国人全般」ではなく、特定の国・言語・旅行スタイルに絞ったターゲット設定が必須です。
2025年のデータでは韓国が全体の23.8%、中国が22.4%と上位2カ国で約半数を占めており、国によって検索エンジンやSNS利用傾向、旅行スタイルが大きく異なります。
韓国市場なら最新イベント情報重視でNaver検索対策が必要、欧米市場なら文化的背景を含む深いコンテンツが効果的、中国市場ならBaidu SEO対策と微信連携が基本となります。
前提(2)観光体験の強み(USP)とストーリーを設計する
単なる観光地紹介ではなく、その地域でしかできない独自体験を軸としたストーリー設計が差別化の鍵となります。
2025年の旅行トレンドでは持続可能性や本物の体験が注目され、混雑を避けた秘境やユニークな体験を求めるフロンティアトラベルが人気です。
富山市がニューヨーク・タイムズの「2025年に行くべき52か所」に選出されたのも「人混みを避けながら文化的感動と美食を楽しめる」点が評価されました。
成功する観光サイトは「3代続く刀鍛冶の工房で外国人が小刀作りを体験する90分コース」のように、人物と体験を組み合わせた具体的な物語を提供しています。
地域の職人、農家、料理人など「人」を中心としたストーリーテリングで、情報提供サイトから予約促進プラットフォームへ進化させることが重要です。
前提(3)予約・問い合わせ導線とKPI(CVR・滞在時間)を決める
サイトの目的を「情報提供」から「行動促進」に転換し、明確な導線設計と測定可能なKPI設定が成果向上の前提条件です。
一人当たり消費額が22万1,285円(前年同期比4.8%増)と高額化する中、サイト経由での送客価値は格段に向上しています。
CVR向上には体験予約ページへの直接リンク設置、多言語対応の予約フォーム、決済手段の多様化(Alipay、WeChat Pay対応)が効果的です。
KPI設定は段階的に行い、第1段階でサイト訪問数、第2段階で問い合わせフォーム完了率、第3段階で実際の予約・来訪につながったコンバージョン追跡を実施することで、継続的な改善サイクルを構築できます。
企業・自治体が外国人向け観光サイトを作るメリット





この章では、外国人向け観光サイト制作によって得られる5つの重要なメリットについて紹介します。
2025年1-3月期の訪日外国人旅行消費額が2兆2,720億円(前年同期比28.4%増)を記録する中、自社の多言語サイト運用の重要性はますます高まっています。
主なメリットは以下の通りです。
- 予約サイト手数料の削減による収益性向上
- ブランド信頼度向上と口コミによる持続的集客
- 顧客データ活用による再訪・クロスセル促進
- 多様なニッチ需要への対応による差別化
- 緊急時対応と価格戦略の自律的コントロール
メリット(1)直販比率を高めて手数料を削減できる
外国人向け観光サイトの制作により、OTA(オンライン旅行代理店)への手数料支払いを大幅に削減できます。
一人当たり消費額が22万1,285円(前年同期比4.8%増)と高額化するインバウンド市場において、OTAの手数料15-25%は事業者にとって大きな負担となっています。
一休.comが2025年3月にリリースした8言語対応サイトのように、多言語サイト経由の直接予約を増やすことで、この手数料分を利益として確保できます。
月間100件の海外予約(平均単価20万円)をOTAから自社サイトに移行した場合、手数料20%削減により月額400万円の収益改善が見込めます。
初期投資として多言語サイト制作費80-300万円を要しても、月間20-30件の直接予約転換で6-12ヶ月での投資回収が可能です。
メリット(2)ブランド信頼と口コミ拡散で中長期の集客が安定する
自社ブランドを軸とした多言語での情報発信により、外国人観光客からの信頼獲得と自然な口コミ拡散が促進されます。
2025年の旅行トレンドでは本物の体験が重視されており、OTAの画一的な情報よりも、地域事業者が直接発信する文化的背景や想いを込めたコンテンツが強く支持されています。
金沢市が雪吊りを「Winter protection art」として表現した英語サイトはPinterestで拡散し、冬期訪問者20%増を達成しました。
高知県では坂本龍馬の歴史的ストーリーと体験アクティビティを組み合わせたコンテンツで滞在時間30%向上を実現しています。
地域の職人・料理人・文化継承者を主人公とした「人物×体験」ストーリーコンテンツの制作により、Instagram・Facebook・微博での自然なシェアを促進できます。
メリット(3)行動データの蓄積で再訪・クロスセルを促進できる
自社サイトのアクセス解析データ活用により、外国人観光客の行動パターンを把握し、効果的な再訪促進やクロスセル戦略を実行できます。
韓国からのアクセス者が「桜の名所」ページに長時間滞在するデータを基に、春季限定プロモーションを韓国語で配信することで成約率向上につながります。
初回宿泊者へのメール配信(英語・中国語)で季節イベント情報を提供し、リピート率15%向上を達成した事例もあります。
Google Analytics 4の「オーディエンス機能」を活用した国籍別・興味関心別のセグメント配信体制により、継続的な関係構築が実現できます。
メリット(4)多言語でニッチ需要(ハラール・ベジタリアン等)を取り込める
多言語サイトを通じて、ハラール対応・ベジタリアン・アレルギー対応などのニッチ需要に特化した情報発信により、高付加価値な顧客層を獲得できます。
持続可能性と倫理的配慮が2025年の重要トレンドとなる中、食事制限や宗教的配慮を必要とする外国人観光客は、対応施設を事前に詳しく調べる傾向があります。
中東からの観光客向けに「ハラル認証レストラン一覧」をアラビア語・英語で提供したり、欧米市場向けに「精進料理体験」を「Buddhist vegetarian cuisine experience」として訴求することで競合との差別化が可能です。
「グルテンフリー対応店舗マップ」を英語・ドイツ語で提供し、該当ニーズ顧客の90%がリピートした成功事例もあります。
地域の対応可能施設と連携した「特別配慮対応マップ」の多言語制作が効果的です。
メリット(5)緊急時の情報発信や価格調整を自社でコントロールできる
自社サイト運用により、災害・パンデミック等の緊急時や需給変動に応じた迅速かつ柔軟な情報発信・価格調整が可能になります。
能登半島地震や集中豪雨などの自然災害発生時、OTAでは画一的な対応しかできませんが、自社サイトなら現地の正確な状況と復興支援メッセージを多言語で直接発信できます。
富山市が能登半島地震後に「復興途上だが観光客受け入れ中」として積極的な情報発信を実施した事例があります。
閑散期の需要喚起で外国人限定割引を多言語サイトで展開し、稼働率20%向上を達成したケースもあります。
緊急時対応マニュアルの多言語事前準備とSNS連動一斉配信体制の構築、動的価格設定システムの導入により、需要予測に基づく自動価格調整で収益最大化を図れます。
外国人向け観光サイトのデメリット・課題は?





この章では、外国人向け観光サイト制作・運用時に直面する5つの主要な課題について紹介します。
インバウンド需要が回復する一方で、多言語サイト運用には従来の日本語サイトにはない複雑さが伴います。
事前に課題を理解し、適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑えながら成果を最大化できます。主な課題は以下の通りです。
- 多言語コンテンツの制作・更新に伴う継続的コスト負担
- 予約・決済システム連携の技術的複雑性
- 文化・宗教的配慮不足による炎上・信頼失墜リスク
- 集客ノウハウ不足による投資回収の困難さ
- 各国の法令・個人情報保護規制への対応負担
デメリット(1)多言語運用と更新の継続コストがかかる
外国人向け観光サイトの最大の課題は、初期制作費に加えて継続的な翻訳・更新コストが発生することです。
一休.comが2025年3月にリリースした多言語サイトでは、8言語対応のために約10億文字の翻訳が必要でした。
観光情報は季節イベントや施設の営業時間変更など頻繁な更新が発生するため、各言語での同期更新が不可欠となります。
プロ翻訳では日本語1文字あたり8-20円、機械翻訳でも校正費用として3-8円程度のコストが継続的に発生します。
イベント情報20記事(各1,000文字)を3言語で更新する場合、月額18-60万円の更新コストがかかります。
翻訳メモリシステムを導入し、過去の翻訳資産を再活用する仕組み構築により、コストと品質のバランス最適化が重要です。
デメリット(2)予約・決済・在庫連携の技術的ハードルが高い
多言語サイトでは各国の決済手段や予約システム、在庫管理との連携が複雑化し、技術的な開発コストと運用負担が大幅に増加します。
外国人観光客は自国の決済手段を好む傾向があり、中国のAlipay・WeChat Pay、韓国のKakaoPay等への対応が求められます。
海外決済システム導入で初期費用50-200万円、月額手数料3-5%の追加負担が発生します。
既存の宿泊管理システムとの在庫連携では開発期間6ヶ月延長、費用300万円増となるケースもあります。
段階的な機能追加が効果的で、第1段階では主要2通貨対応と基本的な予約フォーム多言語化から開始し、予約件数の増加に応じて決済手段を順次追加することを推奨します。
デメリット(3)文化・宗教配慮を欠く表現の炎上リスクがある
言語翻訳だけでなく文化的配慮が不足すると、意図しない炎上や外国人観光客からの信頼失墜リスクが生じ、長期的なブランドダメージにつながります。
大阪メトロで「堺筋線」が「Sakai Muscle Line」と誤訳された事例のように、機械翻訳では文化的ニュアンスが伝わりません。



宗教的配慮では、イスラム教徒向けページで豚肉使用料理を推奨し中東市場での信頼を失墜させた事例があります。
政治的センシティビティでは、韓国語ページでの「竹島」表記により韓国からのアクセスが激減したケースも報告されています。
各言語のネイティブスピーカーによる文化的レビューを必須工程として組み込み、宗教的配慮が必要な市場向けには現地のマーケティング専門家との事前協議が重要です。
デメリット(4)集客施策が弱いと成果が出にくい
多言語サイトを制作しただけでは外国人観光客に発見されず、各国の検索エンジンやSNS特性に応じた専門的な集客施策が不可欠です。



韓国ではNaver、中国ではBaiduが主要検索エンジンであり、Google中心のSEO対策では効果が限定的となります。
Google SEOのみでBaidu対策を怠った場合、中国からのアクセスが月間100件以下に留まるケースがあります。
SNS戦略でも、FacebookとInstagramのみでWeChat・微博を活用しない場合、中国市場でのリーチ率が1%未満となる事例が報告されています。
各国の検索エンジン・SNS専門家との連携体制構築が重要で、初期段階では主要2-3市場に絞り、Naver・Baiduの専門業者と提携することで効率的な集客施策を実行できます。
デメリット(5)法令・個人情報・Cookie対応などコンプライアンス負担がある
多言語サイトでは各国の法律に準拠した個人情報保護・Cookie規制・消費者保護法への対応が必要となり、法的リスクと対応コストが増大します。
EUのGDPRやカリフォルニア州のCCPA等、各国・地域で個人情報保護規制が強化されています。
GDPR違反の場合、EU居住者の個人データ処理で適切な同意取得がない場合、最大2,000万ユーロの制裁金が課される可能性があります。
各国のCookie同意バナー表示義務への技術対応とプライバシーポリシーの多言語化も必要です。
予約・決済処理における消費者保護法対応も各国で異なり、予約システムの複雑化を招きます。
国際法務に詳しい弁護士との顧問契約を検討し、主要ターゲット国の法的要件を事前調査することが重要です。
外国人向け観光サイトの作り方(手順)
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この章では、外国人向け観光サイトを効果的に制作するための8つの重要な手順について紹介します。
2025年1-3月期のインバウンド消費額が2兆2,720億円を記録する中、戦略的なサイト制作プロセスがこれまで以上に重要となっています。
制作経験の少ない担当者でも実践できるよう、具体的なアクションプランを含めた手順は以下の通りです。
- 市場調査とターゲット設定による戦略的基盤構築
- ユーザー視点での情報設計と導線最適化
- 外国人ニーズに対応したコンテンツ企画
- 多言語・多通貨対応の技術基盤選定
- モバイルファーストのデザイン制作
- 国際SEO対応の技術実装
- 品質保証のための包括的テスト実施
- 継続的成長のための運用・改善体制構築
手順(1)市場・競合調査とペルソナ/旅程(ジャーニー)設計を行う
外国人向け観光サイトの成功には、データに基づいた市場調査と具体的なペルソナ設計が不可欠です。
2025年1-3月期のデータでは韓国が23.8%、中国が22.4%と国別訪問比率が明確に分かれており、ターゲット国によって検索エンジンやSNS利用傾向、旅行スタイルが大きく異なります。
JNTO統計から主要3市場を特定し、同規模自治体の多言語サイトを5-10サイト調査してコンテンツ構成や導線設計を比較分析します。
台湾の32歳女性、IT企業勤務、3泊4日の美食・ショッピング旅行といった具体的なペルソナを設定し、旅行計画から現地体験、帰国後シェアまでのカスタマージャーニーマップを作成することで、その後の制作効率と成果に大きく影響する戦略的基盤を構築できます。
手順(2)情報設計(IA)と導線:観る・食べる・泊まるを旅程ベースで配置する
外国人観光客の行動パターンに基づいた直感的な情報設計により、迷いのないサイト構造を構築することが重要です。
従来の日本の観光サイトは「観光スポット」「グルメ」「宿泊」という機能別分類が多いですが、外国人観光客は「1日目:到着・市内観光」「2日目:文化体験・温泉」のような時系列で情報を求める傾向があります。
2025年のトレンドでは体験型観光が重視されており、単なる場所紹介から体験提案への転換が必要です。
高知県サイトの「Ryoma Sakamoto experience tour」のように歴史と体験を統合したページ構成や、トップページから3クリック以内でどの体験予約ページにもアクセス可能な設計が効果的です。
PowerPointやMiroを使用してサイトマップを作成し、階層は3階層以内に収めることが重要です。
手順(3)コンテンツ企画:モデルコース・地図・FAQ・安全情報を用意する
外国人観光客が実際に行動を起こせる具体的で実用的なコンテンツ企画が、予約転換率向上の鍵となります。
外国人観光客は文化的背景の違いから、日本人には当たり前の情報(交通アクセス、マナー、緊急時対応等)を詳しく知りたがる傾向があります。
富山市がニューヨーク・タイムズに評価された理由も、具体的で実用的な情報提供にありました。
「着物体験→伝統工芸見学→地元料理ランチ」を1日プランとして具体的な時間・料金・予約方法を記載したモデルコースや、Google Maps埋め込みで各施設の営業時間・定休日・多言語対応状況をピンで表示するインタラクティブマップが効果的です。
「雨の日の過ごし方」「ベジタリアン対応レストラン」「無料Wi-Fiスポット」など外国人特有の質問に対応するFAQと、緊急連絡先の多言語表記、災害時避難場所、医療機関情報の安全・防災情報を必須で掲載します。
手順(4)CMS/予約/決済の選定:多言語・多通貨・税の要件を決める
多言語サイトに適したCMSと決済システムの選定は、運用効率とユーザー体験の両方を左右する重要な技術的判断です。
一休.comの多言語サイトでは8言語対応で約10億文字の翻訳管理が必要でしたが、通常のCMSでは多言語コンテンツの一括管理や翻訳ワークフローに対応できず、更新作業が煩雑化します。
WordPress + Polylangプラグイン(中小規模)やDrupal(大規模・複雑な要件)といった多言語CMS選定、Stripe(多通貨対応)+ PayPal + Alipay/WeChat Pay(段階的導入)による決済システム統合が効果的です。
既存の宿泊管理システムとのAPI連携可能性を事前確認し、不可能な場合はJTB BOKUNなどの観光特化型システムを検討します。
技術選定前に制作会社3社以上から技術提案を取得し、初期導入コストだけでなく月間運用コスト、カスタマイズ性、将来の拡張性を総合的に評価することが重要です。
手順(5)デザイン制作:モバイルファーストと高速表示を最適化する
外国人観光客の多くがスマートフォンで情報収集・予約を行うため、モバイルファーストのデザイン設計と表示速度最適化が必須です。
訪日外国人の90%以上がスマートフォンを利用して観光情報を収集しており、特に現地での情報確認は100%モバイル経由となります。
海外からのアクセスでは物理的距離により表示速度が遅くなりがちで、3秒以上の読み込み時間で50%以上のユーザーが離脱します。
画面幅375px(iPhone SE)を基準とした設計、タップ領域44px以上の確保によるモバイルファーストデザインと、画像WebP形式変換、CDN導入、不要なJavaScriptの削除で読み込み時間2秒以内を目標とする高速化対策が効果的です。
中国市場向けは赤・金色の活用、欧米向けは余白を活かしたミニマルデザインといった文化的配慮も重要です。
PageSpeed Insightsでの表示速度テストを必須とし、デザインシステムを構築して多言語展開時の一貫性を保ちます。
手順(6)技術実装:URL構造・hreflang・構造化データ(Place/Event等)を実装する
国際SEO対応の技術実装は、多言語サイトが検索エンジンで適切に評価され、ターゲット国のユーザーに発見される前提条件です。
韓国ではNaver、中国ではBaiduが主要検索エンジンであり、それぞれ異なる技術要件があります。
hreflangタグの設定ミスは重複コンテンツペナルティの原因となり、構造化データの実装不備は検索結果での優遇表示を逃すことになります。
example.com/en/(英語)、example.com/ko/(韓国語)のサブディレクトリ形式によるURL構造設計、hreflangタグの正確な記述、LocalBusiness、TouristAttraction、Event等のschema.org対応でリッチスニペット表示を実現する構造化データ活用が重要です。
Google Search Console、Baidu Webmaster Tools、Naver Search Advisorへの登録も必須で、hreflangタグは自動生成ツールを活用し、手動設定によるミスを防止します。
各検索エンジンへのサイトマップ送信も忘れずに実行してください。
手順(7)テスト:ユーザーテスト・翻訳レビュー・アクセシビリティを確認する
公開前の包括的なテスト実施は、文化的な誤解や技術的な不具合を防ぎ、外国人観光客からの信頼獲得に不可欠です。
大阪メトロの「堺筋線」が「Sakai Muscle Line」と誤訳された事例のように、翻訳ミスや文化的配慮不足は大きな信頼失墜リスクとなります。
各国のアクセシビリティ基準への準拠も法的要件として重要性が高まっています。
各言語について現地在住者による文化的・言語的チェックを実施するネイティブスピーカーレビュー、ターゲット国出身者5-10名による実際の予約フロー体験テスト、WAVE、axeなどのツールでWCAG 2.1 AA準拠を確認するアクセシビリティ監査、iOS/Android、Chrome/Safari/Samsung Internet等での表示・機能確認を行います。
テスト予算として制作費の10-15%を確保し、クラウドソーシングを活用することで、コストを抑えながら品質の高いレビューを取得できます。
手順(8)公開後運用:SNS・広告・PRと改善サイクルを回す
サイト公開は終了ではなく開始であり、継続的な運用・改善サイクルの構築が長期的成果の鍵となります。
2025年1-3月期のインバウンド消費額が前年同期比28.4%増と急成長する市場において、競合他社も多言語サイト強化を進めています。
定期的なコンテンツ更新、SEO対策、SNS連携により、検索順位の維持・向上と継続的な認知拡大が必要です。
Instagram(欧米・韓国)、微博・小紅書(中国)での定期的な魅力発信によるSNS連携戦略、月1回の特集記事更新と季節イベント情報の多言語同期配信、Google Analytics 4での月次レポート作成とCVR向上施策の継続実行、海外旅行博出展や現地インフルエンサーとのコラボレーション企画が効果的です。
公開後3ヶ月は週次、それ以降は月次でのパフォーマンス分析を実施し、主要KPI(アクセス数、滞在時間、予約転換率、国別流入数)をダッシュボードで可視化してデータに基づく改善施策を継続実行します。
多言語対応とローカライゼーションはどう進める?





この章では、外国人向け観光サイトの多言語対応とローカライゼーションを効果的に進めるための5つの重要な施策について紹介します。
一休.comが2025年3月に8言語対応サイトをリリースし、約10億文字の翻訳管理を実現した事例のように、単なる翻訳を超えた戦略的なローカライゼーションが成功の鍵となっています。
多言語対応で重要な要素は以下の通りです。
- 検索エンジン最適化のためのURL構造とhreflang実装
- コスト効率と品質を両立する翻訳ワークフロー構築
- 各国の文化・慣習に適合した表記ローカライゼーション
- 視覚的要素の文化的配慮とガイドライン策定
- リアルタイム多言語サポート体制の整備
多言語(1)URL階層とhreflangで国と言語の意図を正しく示す
多言語サイトの技術的基盤として、適切なURL構造設計とhreflang実装により、検索エンジンに言語・地域の意図を正確に伝達することが必須です。
韓国ではNaver、中国ではBaiduが主要検索エンジンであり、各検索エンジンが多言語サイトを適切に認識するためには技術的な設定が不可欠となります。
example.com/ja/(日本語)、example.com/en/(英語)、example.com/ko/(韓国語)のサブディレクトリ形式を推奨し、hreflangタグの正確な記述により重複コンテンツペナルティを回避できます。



Google Search Console、Baidu Webmaster Tools、Naver Search Advisorへの各言語サイトマップ送信も重要で、Google公式の国際化ガイドラインに準拠した設定により検索順位向上を実現できます。
多言語(2)機械翻訳+ネイティブ校正のワークフローを整える
コストと品質のバランスを最適化するため、機械翻訳とプロ翻訳を戦略的に使い分ける階層化されたワークフロー構築が重要です。
一休.comの事例では約10億文字の翻訳管理が必要であり、全てをプロ翻訳で対応すると膨大なコストが発生します。
キャッチコピーやブランドストーリーはプロ翻訳+ネイティブチェック(1文字15-30円)、FAQ・施設情報はDeepL等高品質機械翻訳+ネイティブ校正(1文字3-8円)、口コミ・店舗リストは機械翻訳のみ(免責事項付き、1文字1円未満)という階層化により効率化を図れます。
翻訳メモリとターミノロジー構築により、過去翻訳の再利用で更新コスト50-80%削減が可能です。



Fiverr、Upworkを活用したネイティブチェッカーとの長期契約により品質の一貫性を保てます。
多言語(3)通貨・単位・日時・祝祭日など表記をローカライズする
言語翻訳だけでなく、各国の文化・慣習に適合した表記ローカライゼーションにより、外国人観光客にとって自然で使いやすいサイト体験を提供できます。
外国人観光客は自国の通貨・単位・日時表記で情報を理解したがる傾向があり、日本の表記のままでは情報の理解・比較・意思決定が困難になります。
USD、EUR、KRW等での価格表示(リアルタイム為替対応)、MM/DD/YYYY(米国)・DD/MM/YYYY(欧州)形式による日時表記、メートル法⇔ヤード・ポンド法・摂氏⇔華氏の自動変換表示、国際形式での電話番号表記(+81-XX-XXXX-XXXX)と現地からのダイヤル方法併記が効果的です。
動的通貨変換はStripe、PayPalのAPIを活用し、為替手数料も含めた実際の支払額表示で信頼性を向上できます。
多言語(4)写真・色・アイコンの文化的配慮ガイドラインを作る
視覚的要素における文化的配慮により、各国ユーザーにとって親しみやすく、文化的な誤解を回避するデザイン体系の構築が重要です。
色彩やシンボルの文化的意味は国によって大きく異なり、意図しない否定的印象や宗教的配慮不足によるトラブルを避ける必要があります。
中国では赤・金色が縁起良く白は避ける、欧米では余白重視のミニマルデザイン、韓国では鮮やかなビビッドカラーが好まれるといった色彩配慮が重要です。
ターゲット国の人々が登場する写真使用で親近感を向上させ、イスラム圏向けには肌の露出を控えた服装と祈祷室の案内表示、仏教圏では仏像・寺院写真のrespectfulな扱いが求められます。
多言語(5)問い合わせ対応(チャット・メッセンジャー)の多言語体制を整備する
リアルタイム多言語サポート体制の整備により、外国人観光客の疑問・不安を即座に解決し、予約転換率向上と顧客満足度向上を実現できます。
外国人観光客は予約前に詳細な確認を求める傾向があり、特に文化的・宗教的配慮事項や緊急時対応について事前確認したがります。
Cognigyのような20か国語自然言語処理対応プラットフォームで基本的FAQ対応を行うAIチャットボット、WeChat(中国)・LINE(台湾・タイ)・KakaoTalk(韓国)での現地ユーザーに馴染みのあるプラットフォーム活用が効果的です。
AI初回対応から複雑な問い合わせは多言語スタッフまたは翻訳サービスにエスカレーションするハイブリッド体制により、ターゲット国のタイムゾーンに合わせた対応時間設定で24時間365日体制を低コストで実現できます。
SEO対策は何をすべき?(多言語・ローカルSEO)
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この章では、外国人向け観光サイトで効果的なSEO対策を実施するための7つの重要な施策について紹介します。
2025年1-3月期のインバウンド消費額が2兆2,720億円を記録し、競合サイトとの差別化が重要となる中、検索エンジンでの上位表示は集客の生命線となっています。
外国人観光客向けSEOで重要な要素は以下の通りです。
- ターゲット国の検索行動に基づくキーワード戦略
- 検索エンジンが理解しやすい構造化データ実装
- 多言語サイト特有の技術的SEO対応
- 現地検索に強いローカルSEO強化
- 信頼性を示すE-E-A-T要素の充実
- 外国人が求める実用情報の網羅的提供
- 権威性向上のための被リンク獲得戦略
SEO(1)国×地域×体験×季節のキーワード設計でカテゴリを作る
外国人観光客の実際の検索行動に基づいた4次元キーワード設計により、競合他社との差別化と検索上位表示を実現できます。
外国人観光客は「Japan travel」のような一般的キーワードではなく、「Tokyo cherry blossom viewing spots April」「Kyoto traditional tea ceremony experience」のような具体的で複合的なキーワードで検索する傾向があります。
韓国語では「교토 벚꽃 명소」(京都桜の名所)、中国語では「东京美食攻略」(東京グルメガイド)など、各国の言語で具体的なキーワードを設定することが重要です。
Google Keyword PlannerやNaver Keyword Tool、百度指数を活用して実際の検索ボリュームを確認し、「地域名+体験+季節+実用情報」の4軸でキーワードマップを作成することで、効率的な検索上位表示が可能になります。
SEO(2)構造化データ(TouristAttraction/Place/Event/FAQ/Review)を実装する
schema.orgの構造化データ実装により、検索結果でのリッチスニペット表示を実現し、クリック率向上と検索エンジンからの評価向上を図れます。
Googleは構造化データを理解しやすいコンテンツとして高く評価し、検索結果で星評価、営業時間、料金等の詳細情報を表示します。
- TouristAttraction
観光スポットの基本情報、開館時間、料金、アクセス方法を構造化し、Eventで祭り・イベントの開催日時、場所、参加費用、予約方法を明示することが効果的です。 - LocalBusiness
レストラン・宿泊施設の営業時間、電話番号、決済手段を構造化し、FAQで「雨天時の対応」「ベジタリアン対応」等の外国人特有の質問への回答を掲載します。 - Google Rich Results Test
構造化データの実装状況を定期的に検証し、段階的に追加することで検索結果での視認性を大幅に向上できます。
SEO(3)多言語SEO:canonicalとhreflangで重複を防ぐ
canonicalタグとhreflangタグの正確な実装により、多言語サイト特有の重複コンテンツ問題を解決し、各言語ページの検索順位を最適化できます。
多言語サイトでは同一内容を複数言語で公開するため、検索エンジンが重複コンテンツと判定するリスクがあります。
各言語ページで自己参照canonical(`
link rel=”canonical” href=”現在のページURL”>`)を設定し、hreflangタグで`
link rel=”alternate” hreflang=”en” href=”https://example.com/en/”>`の正確な記述を行います。
各言語のサイトマップを個別作成し、Google Search Console、Baidu、Naverに送信することも重要です。
hreflang生成ツールを活用して設定ミスを防止し、Google Search Consoleの「インターナショナル ターゲティング」レポートで各言語ページの認識状況を定期監視することで最適化を図れます。
SEO(4)ローカルSEO:Googleビジネスプロフィール・地図・口コミを強化する
Googleビジネスプロフィールの最適化と地図検索対策により、現地での「Near me」検索や「○○ 地名」検索での上位表示を実現できます。



外国人観光客の70%以上が現地でスマートフォンを使用して「nearby attractions」「restaurants near me」等の地図検索を行います。
営業時間、電話番号、住所、ウェブサイトURL、写真を多言語で最新化し、「Tourist attraction」「Japanese restaurant」「Traditional ryokan」等の適切なカテゴリを選択します。
季節イベント、新メニュー、安全対策等の最新情報を週1-2回定期投稿し、多言語での口コミ返信対応、5件以上のレビュー獲得で信頼性を向上させます。
外国人からよくある質問への事前回答を英語・中国語・韓国語で用意し、Q&A機能を活用することで利便性を高めます。
SEO(5)E-E-A-T:運営者情報・受賞歴・レビュー・安全情報を明示する
E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)要素の充実により、検索エンジンからの信頼性評価と外国人観光客からの安心感を同時に向上できます。
GoogleはYMYL(Your Money or Your Life)領域である旅行・宿泊情報において、E-E-A-Tを重要な評価指標としています。
自治体名、観光協会名、代表者名、所在地、連絡先を多言語で掲載し、富山市のニューヨーク・タイムズ選出のような権威ある機関からの評価を掲載します。
緊急連絡先、避難場所、医療機関、災害時対応を多言語で提供し、JNTO認定、観光庁認定、地域の観光専門資格等の保有を明示することが重要です。
TripAdvisor、Google、各国旅行サイトでの高評価を紹介し、「About Us」「Safety Information」「Contact」ページを充実させることで法人格や公的機関との連携を明確に示し、定期的な情報更新により、サイトの鮮度を保つことも重要です。
SEO(6)必須情報:アクセス・営業時間・料金・注意事項を網羅する
外国人観光客が求める実用的な基本情報を網羅的に提供することで、検索エンジンからの評価向上と実際の来訪促進を同時に実現できます。
外国人観光客は文化・言語の違いから、日本人には当然とされる情報(最寄駅、徒歩時間、定休日、持ち物等)を詳しく知りたがります。
最寄駅、バス停、徒歩時間、タクシー料金目安、駐車場情報を多言語表記で詳細に記載し、通常営業時間、季節変動、祝祭日対応、最終入場時間を明記します。
入場料、体験料金、追加オプション、団体割引、外国人割引の詳細と、季節別推奨服装、必要な持ち物、禁止事項を文化的配慮込みで説明することが重要です。
車椅子対応、エレベーター有無、段差情報、多目的トイレ位置などのバリアフリー情報も必須で、外国人観光客へのアンケート調査で「知りたかった情報」「困った体験」を収集し、FAQページを充実させることが効果的です。
SEO(7)被リンク獲得:観光協会・大使館・メディアとの連携を行う
権威性の高い機関・メディアからの被リンク獲得により、検索順位向上とサイト全体の信頼性向上を実現できます。
被リンクは検索順位に直接影響する重要な要素であり、特に公的機関、メディア、教育機関からのリンクは高く評価されます。
- JNTO、各国日本領事館・大使館のイベントカレンダーへの情報提供、各国の旅行専門誌、ブログ、YouTubeチャンネルへのプレスリリース配信が効果的です。
- 日本観光振興協会、地域観光推進機構への加盟と相互リンク、大学の日本研究学部、観光学部との共同研究・情報提供により権威性を高めます。
- 各国の旅行系インフルエンサーとのコラボレーション企画も有効で、大阪・関西万博等の大型イベントに合わせたタイムリーな情報発信を行うことで注目度を向上できます。
- 各国の主要旅行メディアリストを作成し、月1回のプレスリリース配信体制を構築することで、継続的な被リンク獲得と認知度向上を図れます。
まとめ


外国人観光客に選ばれるサイトを作るには、単なる情報の多言語化だけでは不十分です。
成功の鍵は、旅行者の視点に立ち、計画的な手順で構築することにあります。



ターゲット国の旅行者の行動を理解し、旅の体験に沿ったコンテンツを設計することが第一歩です。
その上で、多言語SEOやスマホでの高速表示といった技術基盤を固め、文化や習慣に配慮した表現を徹底することで、サイトの信頼性は格段に高まります。



本記事で解説した手順を参考に、地域の魅力を世界に届け、多くのファンを育てるサイト作りを始めましょう。”