「まずは無料のもので試してみて」と言われて、ヒートマップツールの一覧を見比べている方は多いはずです。困るのは、同じツールが記事によって無料にも有料にも並んでいることでした。どちらが本当か分からないまま、候補だけが増えていきます。
迷う原因は、探し方のほうにありました。無料と有料を分けているのは機能の差ではなく、測れる量とデータが残る期間だからです。この2つを自社の数字と照らせば、一覧を読み比べなくても決まります。
この記事では、上位記事が紹介していた16件について、公式の料金ページを1件ずつ確かめた結果をお見せします。Googleの標準機能でどこまで見えるかも、公式ヘルプで整理しました。読み終えるころには、無料で足りるかを自分で判定できるはずです。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
先に結論|無料かどうかは量で決まります
まず最初に、結論からお伝えします。ヒートマップツールの無料と有料を分けているのは、機能の差ではなく「量」です。
どれだけ測れて、どれだけ残るか。この2つで線が引かれています。
だから「無料のツールはどれか」という探し方をしている限り、答えは見つかりません。記事によって同じツールが無料の側にも有料の側にも出てくるのは、多くのツールが両方のプランを持っているからです。
- 無料と有料を分けているのは機能ではなく、測れる量と残る期間です
- スクロールやクリックの材料は、Googleの標準機能でも取れます
- 見るページと開く条件を先に決めないと、色は出ても判断は出ません
1つ目は、無料と有料の線が「量」で引かれているということです。分かれ目になるのは、月に何ページ分・何回の訪問まで見られるか、いくつのURLを登録できるか、そしてデータがいつまで残るかでした。機能の一覧を見比べても、この線は出てきません。
2つ目は、ヒートマップが見せている絵の材料が、Googleの標準機能でも取れるということです。どこまでスクロールされたかも、外部リンクが押されたかも、公式ヘルプに手順が書かれています。市販のツールが引き受けているのは、集めた記録をページの上に重ねて絵にする部分だと考えると、費用の意味がはっきりします。
3つ目は、入れる前に決めておくことがあるという話です。どのページを見るのか、何人分たまったら開くのか。ここを決めずに設置すると、色の付いた画面だけが増えていきます。訪問が10人でも色が付いてしまう道具があるため、見る前の基準がないと判断が日によってぶれてしまうのです。
この記事では、16件を公式ページで調べた結果と、Googleの公式ヘルプに書かれている内容をそのままお見せします。読み終えるころには、自社の閲覧数と比べたい期間という2つの数字から、無料で足りるかどうかを自分で判定できるはずです。
ヒートマップツールが見せている4つの絵
ヒートマップツールの画面には、赤や青に塗り分けられた絵が並びます。色そのものは直感的でしょう。ただし、その色が何を数えた結果なのかを知らないまま眺めると、読み取りを間違えてしまいます。
ここでは代表的な4つの絵について、機械が実際に拾っているものを整理しました。

先に全体像をお見せしましょう。呼び名はツールによって少しずつ違いますが、拾っているものは次の4つに整理できます。
| よくある呼び名 | 機械が拾っているもの | 答えられる問い |
|---|---|---|
| クリックマップ/タップマップ | 押された位置 | 押してほしい場所が押されているか |
| スクロールマップ/終了エリア | どこまで進んだか | 下のほうまで届いているか |
| アテンションマップ/熟読エリア | 画面に映っていた時間 | 長く映っていた場所はどこか |
| ムーブマップ/マウスの動き | ポインタが通った位置 | 手の動きがどこで止まったか |
クリックの絵は押された瞬間の座標です
クリックマップは、押された位置を大量に集めて重ねた絵です。押した回数の多い場所が濃く、少ない場所が薄く表示されます。
ここで押さえておきたいのは、ブラウザがクリックの位置として渡す値のひとつが、画面を基準にした座標だという点です。ブラウザの仕様を解説する開発者向け資料にも「ページにおける座標ではありません」と書かれています。
この違いが実務で効いてくるのです。画面の幅が変われば、文章の折り返し位置も、ボタンの並び方も変わります。同じ座標が同じものを指すとは限らないわけです。
だからパソコンとスマートフォンの結果は、1枚に重ねても読み取りにくくなります。端末ごとに分けて見るのが前提だと考えてください。
もうひとつ知っておきたいことがあります。読者は、リンクだと思って画像やアイコンを押すことがあります。
押せない場所の操作まで記録する道具では、赤くなっている場所がすべて成功した操作とは限りません。むしろ押せない場所が赤くなっていたら、それは期待と実装がずれている合図だと考えたほうが役に立ちます。
スクロールの絵はどこまで進んだかの分布
スクロールマップが見せるのは、ページのどこまで進んだ人がどれくらいいたか、という分布です。上から下へ向かって色が薄くなっていく絵になります。
この絵の読み方はわりと素直で、色が急に薄くなる場所は、そこで多くの人が離れたことを意味します。長い記事で「後半に置いた大事な情報が読まれていない」と気づけるのは、この絵の得意分野です。
ただし、進んだ距離をどう数えるかには、道具ごとのくせがあります。Googleが公式に用意している計測の例では、しきい値を初めて通過したときだけ記録し、上に戻った動きは数えません。原文はあとの章で紹介します。
ここで確かめておきたいのは、自分が使う道具が同じ数え方をしているかどうかです。もし同じ方式なら、スクロールの絵は読者が到達した最も深い地点の分布であって、どこを行き来したかの記録ではありません。「どこまで届いたか」と「どこを読み返したか」は別物だと踏まえておくと、過剰な読み取りを避けられます。
熟読の絵は画面に映っていた時間です
アテンションマップや熟読エリアと呼ばれる絵は、名前だけ見ると「読まれた場所」を示しているように思えます。実際に機械が測れるのは、そこまで踏み込んだものではありません。
測れるのは、その部分が画面に映っていた時間の長さです。長く映っていれば濃くなり、すぐ通り過ぎれば薄くなります。
ここに、この絵の限界があります。画面に映っている間、読者が本当にその文章を読んでいたのかどうかを、機械は区別できません。
画面を開いたままコーヒーを取りに行った時間も、真剣に読み込んだ時間と同じように積み上がります。
ですから熟読エリアの濃い場所は、「よく読まれた場所」ではなく「長く画面に留まった場所」として受け取るのが正確です。
そのうえで、留まった理由を考えてみてください。うまく伝わって熟読されたのか、それとも分かりにくくて読み返す羽目になったのか。同じ濃い色でも、意味は正反対になりえます。
4つの絵はどれも平均された姿を見せます
4つに共通する性質がひとつあります。どの絵も、期間中に訪れた人たちの行動を重ね合わせた結果だという点です。
重ね合わせた絵には、落とし穴があります。その色のとおりに動いた人が、実際には1人もいない場合があるのです。半分の人が上半分だけを読み、もう半分の人が下半分だけを読んだとしても、絵の上では「全体がほどよく読まれている」ように見えます。
当社も、似た読み違えを検索結果側の数字で経験しました。自社メディアのある記事でタイトルを変える前の28日間を見ると、ページ全体では259回の表示に対してクリックが3回で、クリック率は約1.16%です。
ところが同じ期間に、そのページで最も順位が高かった検索語だけを取り出すと、38回表示されてクリックは0回でした。ページ全体をならした1.16%という数字は、どの検索語の実力でもなかったわけです。
ヒートマップの色も、これと同じ構造を持っています。絵は集団の平均であって、誰か1人の体験ではありません。色を見て手を動かす前に、「この色は誰の行動を重ねた結果か」を一度考えると、読み違えがぐっと減ります。
なお、絵を見る前に整えておける部分もあります。記事の見た目をどう設計するかはオウンドメディアデザインの判断基準の記事にまとめました。測って決める部分と、あらかじめルールで決めておける部分を分けておくと、道具に頼る範囲は小さくなるはずです。
ヒートマップツールの無料の線は量で決まる
比較記事を何本か開くと、たいてい「無料のツール」と「有料のツール」に分かれた一覧が出てきます。ところが本によって、同じツールが無料の側にも有料の側にも登場するのです。当社はこの状態を確かめるため、上位に並ぶ記事が個別に紹介していたツールを洗い出し、公式の料金ページを1件ずつ開いて調べました。

16件を公式ページで調べた方法と母数
調べ方を先にお伝えします。恣意的に選んだのではないことを確かめていただくためです。
まず「ヒートマップツール」とその関連語で検索し、上位に並んだ10本の記事を対象にしました。そのうえで、10本のうち2本以上で個別に見出しを立てて紹介されていたものを数え、16件を母数としています。
1本の記事にしか登場しないものは8件ありましたが、これらは除きました。比較表に名前が載っているだけのものも数に入れていません。
なお10本のうち2本には、ツール名を見出しに立てた個別紹介がありませんでした。1本は自社サービスの機能を説明するページ、もう1本は名前を出さずに「おすすめツール1」から「5」と並べたページです。このあと出てくる「何本の記事が」という数は、そのツールを載せていた記事の中での数になります。
次に、この16件それぞれについて公式の料金ページを開きました。まとめ記事の記載は一切採用せず、提供元が自分で書いている内容だけを根拠にしています。確認できなかった項目は「不明」として残し、0や「なし」に置き換えることはしませんでした。
結果として、公式ページで無料プランを確認できたのは16件のうち10件でした。残る6件の内訳は、無料トライアルだけのものが4件と、料金が問い合わせや見積もり制で無料プランの記載が見当たらないものが2件です。トライアルの4件のうち、日数まで明記されていたのは3件でした。
調査日は2026年8月12日で、以下の数字はすべてこの時点のものになります。
同じツールが無料にも有料にも並ぶ理由
最初に確かめたのは、記事どうしの食い違いです。
母数16件のうち、ある記事では無料の枠に、別の記事では有料の枠に置かれていたものが8件ありました。ちょうど半分です。
掲載していた記事のすべてが無料に置いたものは2件で、無料か有料かで仕分けている記事に限れば、すべてが有料に置かれていたものが6件でした。ただしこの6件のうち4件は、無料か有料かで分けていない節にも別の記事で登場しています。
ただしこの8件という数字には、注意書きが要ります。10本のうち1本が、同じツールを「無料◯選」の節と「有料◯選」の節の両方に載せているためです。その1本を集計から外して数え直すと、食い違いは4件になります。どちらの数え方でも、4件から8件は無料とも有料とも紹介されていると理解してください。
さらに、記事の分類と公式ページが食い違っていたものも2件見つかりました。一方は無料として紹介されているのに、公式の料金ページには無料プランの記載が見当たりません。もう一方は逆で、無料の枠に置いた記事が1本もなかったのに、公式には無料のプランが用意されていました。
誰かが間違えているという話ではありません。多くのツールが無料プランと有料プランの両方を持っているため、記事の切り口しだいでどちらの箱にも入るのです。だから「無料のツールはどれか」という問いの立て方をしている限り、記事を何本読んでも答えは定まりません。
計測できる量の上限が線引きの本体です
では、無料と有料は何で分かれているのでしょうか。公式ページを並べて見ると、答えははっきりしていました。機能の有無ではなく、扱える量です。
無料プランがあった10件のうち、8件が使える量の上限を数字で示していました。残り2件のうち1件は上限を設けていないと明記しており、上限の記載を見つけられなかったのは1件だけです。
示され方は3通りに分かれます。
| 何で区切っているか | 確認できた範囲 |
|---|---|
| ページの閲覧数(月あたり) | 3件。月1,000・月3,000・月30万 |
| 訪問の回数(月あたり) | 3件。値は月500と月20万の2種類 |
| 見られる対象の数 | 3件が「1つ」に限定 |
閲覧数で区切っていた3件を比べると、最も小さいものが月1,000、最も大きいものが月30万で、300倍の開きがあります。同じ「無料」という言葉でも、中身はまったく違うわけです。
実務で効いてくるのは3行目でしょう。無料で見られる対象そのものが1つに限られている、という条件です。内訳は、登録できるURLが1つに限られていたものが2件と、作れるヒートマップが1枚だけのものが1件でした。
これだと、記事を10本並べて改善の当たりを探す、という使い方はできません。逆に言えば、直したいページが1つに決まっているなら、無料のままで十分に足ります。
保存期間を確認できたのは10件中3件
もうひとつ、見落とされやすい線があります。集めたデータがいつまで残るのかという条件です。
ヒートマップは、直す前と直したあとを比べてはじめて判断の材料になります。前の絵が消えていれば、比べようがありません。
ところが、無料プランのデータ保存期間を公式ページで確認できたのは、10件のうち3件だけでした。
残る7件の内訳もお伝えしておきましょう。期間は提示していないと書かれているものが1件、項目名はあるものの画面上で切り替わる表示のため読み取れなかったものが1件でした。残る5件は、記載そのものを見つけられていません。
確認できた3件の中身は、およそ1か月が2件、最も長いもので9か月でした。短いほうを基準にすると、先月の絵はもう残っていない可能性があるということになります。
ここから導ける進め方はひとつです。無料で始めること自体は、まったく問題ありません。ただし始める前に、自分のサイトの月あたりの閲覧数と、比べたい期間の長さという2つの数字を手元に置いてください。
この2つが決まっていれば、料金ページを開いた瞬間に足りるか足りないかが分かります。おすすめの一覧を読み比べるより、はるかに早いはずです。
Googleの標準機能でどこまで見えるか
ヒートマップを調べていると、「Googleの無料のもので済ませられないか」という考えが一度は頭をよぎるはずです。すでにアクセス解析を入れているなら、なおさらでしょう。この章では公式ヘルプに書かれている内容だけを根拠に、Googleの標準機能で何が取れて何が取れないのかを整理しました。

GA4のヒートマップは表の色分けのこと
結論からお伝えすると、GA4に「ヒートマップ」という言葉は実際に存在します。ただし、探しているものとは別のものを指しています。
この言葉が出てくるのは、自由に条件を組み合わせて表を作る「データ探索」という機能の設定項目です。アナリティクス ヘルプの「自由形式のデータ探索」には、セルタイプという項目の説明としてこう書かれています。
「指標の値を書式なしテキスト、棒グラフ、またはヒートマップとして表示します。」
つまりここでいうヒートマップは、表のマス目を数値の大小に応じて色の濃さで塗り分ける表示形式のことです。数字が並んだ表を見やすくするための機能であって、ページの上に色を重ねて見せるものではありません。
言葉が同じで、中身が違います。この一点を知らないまま探すと、設定画面のどこかにあるはずだと思い込んで時間を使うことになります。
クリックの分析は2017年にサポート終了
「昔はGoogleでもできた気がする」という記憶をお持ちの方がいるかもしれません。その記憶は正しいものです。
Googleはかつて、閲覧中のページに解析データを重ねて表示するブラウザの拡張機能を提供していました。アナリティクス ヘルプに残っている説明によれば、この拡張機能で確認できたものの中に「ページ内クリック分析(ユーザーがクリックしたページ内の場所)」がありました。
クリックできる要素には、クリックした人の割合を示す丸印が表示されたのです。しかも色の表示をオンにすると、その丸印はクリック数の相対的な割合に応じて青・緑・オレンジ・赤に塗り分けられました。
やっていることは、いま各社が提供しているクリックの絵とよく似ているでしょう。ただし同じページに、次のように書かれています。
「ページ解析レポートのサポートが、2017 年第 1 四半期に終了したことに伴い、Chrome 拡張機能「Page Analytics」のサポートを 2017 年第 3 四半期に終了しました。本拡張機能は更新されませんが、継続して使用できます。」
サポートが終わってから、すでに8年以上が経ちました。「Googleの無料のヒートマップ」を探して見つからないのは、探し方が悪いからではありません。いまも手入れが続いている公式の道具としては、置かれていないのです。原典のとおり、拡張機能そのものは更新されないまま残っています。
なお当時の仕様には、いまも参考になる考え方が含まれています。この拡張機能には「クリックのしきい値」という設定があり、クリック数がその値に満たない要素には丸印を出さない仕組みになっていました。数が少ないうちは表示しないという判断が、道具の側にあらかじめ組み込まれていたわけです。
GA4のスクロールは90%到達の1点だけ
では、いまのGA4は読者の行動を何も見ていないのでしょうか。そんなことはありません。ただし拾い方に、はっきりした限界があります。
拡張計測機能イベントのヘルプを見ると、スクロールが記録されるのは次のタイミングだと書かれています。
「ユーザーが各ページの最下部まで初めてスクロールしたとき(垂直方向に 90% の深さまで表示されたときなど)」
記録されるのは1点だけです。一番下まで届いたかどうかは分かりますが、その手前のどこで止まったかは読み取れません。
3割で離れた人と8割まで読んだ人は、同じ「届かなかった人」としてまとめられます。
クリックについても同様です。同じヘルプで「離脱クリック」として説明されているのは、現在のドメインから外のサイトへ出ていくリンクを押した動きです。そのとき記録される情報も、リンクのクラス名・ドメイン・ID・URLといったリンクそのものの属性で、画面のどの座標が押されたかではありません。
ちなみにこれらは、管理画面のスイッチで有効と無効を切り替えるものだと同じページに明記されています。収集しないイベントを個別に無効にできるとも書かれています。「入れてあるから取れているはず」と考えず、一度設定を開いて確かめてみてください。
スクロールの深さは標準機能でも取れます
90%の1点では粗すぎる、という場合の道も公式に用意されています。タグマネージャーの「スクロール距離」という仕組みです。
タグマネージャーは、GA4とは別にGoogleが無料で配っている道具です。計測用のタグと、それを動かす条件をまとめて管理できます。使うにはサイトに専用のタグを1つ置く必要があるため、GA4だけで完結する話ではありません。
スクロール距離トリガーのヘルプには、ページの高さに対する割合でもピクセル数でも設定でき、複数の地点をカンマ区切りで指定できると書かれています。たとえば10、50、90と入力すれば、その3か所を通過したことがそれぞれ記録される仕組みです。ここまで来ると、スクロールマップとほぼ同じ材料が手元に集まります。
そして同じページには、計測のくせも正直に書かれています。
「トリガーが発動するのは、各ページで発動ポイントを初めて通過したときのみです。ユーザーが上にスクロールして戻っても、トリガーは発動しません。」
もうひとつ、見落としやすい注意もあります。設定した地点がページを読み込んだ時点ですでに画面に入っていた場合、読者がスクロールしていなくても記録されるという点です。短いページで10%の地点を設定すると、開いただけで到達したことになります。
この2つは、市販のツールの絵を読むときにも確かめておきたい点になります。色の濃さに読み返しが含まれるのかどうか、短いページで数字が良く出ていないかどうかを確かめてください。絵の裏側で何が数えられているのかを疑う癖は、どの道具を使う場合でも役に立つでしょう。
違いは絵にして重ねてくれるかどうか
ここまでを並べると、境界線がはっきりしてきました。
スクロールの深さも、リンクが押されたことも、Googleの標準機能で記録できます。足りないのは材料ではなく、集めた記録をページの絵の上に重ねて見せる部分です。市販のツールが引き受けているのは、主にこの最後の工程だと考えると、費用の意味も分かりやすくなるでしょう。
当社の自社メディアでも、GA4の拡張計測のうち外部リンクのクリックについては有効にしてあります。2026年5月末に設定を確認した記録が、運用手順書に残っていました。ただしこれで分かるのは、読者が外のサイトへ出ていったという事実までです。ページのどのあたりを押したのかは、この設定からは出てきません。
判断の目安をお伝えしましょう。知りたいことが「一番下まで届いているか」「外部リンクが押されているか」で足りるなら、いま入っている道具のままで進められます。
一方で「押されるはずのボタンが押されていない理由を、見て確かめたい」のであれば、絵にして重ねてくれる道具を足す価値があるでしょう。この線引きを先にしておくと、無料か有料かで迷う前に、そもそも必要かどうかが決まります。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
ヒートマップツールを入れる前に決めること
ツールの導入そのものは、タグを1つ貼るだけで終わるでしょう。難しいのはそのあとです。色は出たけれど何をすればいいか分からない、という状態で止まってしまうのは、よくあるつまずきです。ここでは設置する前に手元で決めておきたい3つを挙げます。

どのページを見るかを先に1つ決める
最初に決めるのは、見るページです。サイト全体ではなく、1ページに絞ってください。
当社がお客様の計測を設計するときも、順番は同じです。先に道具を入れてから何を見るか考えるのは逆です。知りたいことを決めてから、それが分かる形に計測を組みます。これは自社のナレッジとして明文化しています。
ヒートマップも同じです。見たいページと確かめたいことが決まらないまま全ページへ入れると、色の付いた画面が増えるだけで判断は増えません。
絞り込みには、すでに手元にある数字が使えます。見るとよいのは、訪問はあるのに次の行動につながっていないページと、会社として最も大事なページの2つです。この2つが重なる場所から始めると外れません。数字で当たりをつける手順そのものは記事のアクセス解析と改善の記事で扱っているので、あわせてご覧ください。
ページが決まったら、確かめたいことを1行で書いておきます。「申し込みボタンまで届いているのか」「料金の説明で止まっていないか」といった形で十分です。この1行があると、絵を見た瞬間に答え合わせができます。逆にこれがないと、赤い場所を眺めて「よく見られているんだな」と思って終わります。
何人分たまったら見るかを先に決める
次に決めるのは、いつ見るかです。日付ではなく、何人分たまったらという形で決めてください。
ヒートマップの厄介なところは、訪問が10人でも色が付いてしまう道具がある点にあります。色が出ている以上、そこに意味を読み取りたくなるのが人情です。表示の下限を持たない道具では、10人のうち3人が同じ場所を押しただけで、その場所は濃く表示されます。
当社も同じ問題を、検索結果側の数字で先に踏みました。表示回数の少ないものまで拾って判断すると、日によって結論が変わってしまうのです。そのときどう決着させたかは、CTRの記事で詳しく書きました。
同じことは手作業でもできます。「このページの訪問が500に届いたら開く」と決めて、カレンダーではなく数字で判断します。前の章でお伝えしたとおり、Googleがかつて提供していた拡張機能にも、クリック数が一定に満たない要素には印を出さない設定がありました。母数が足りないうちは見せないという考え方は、道具の作り手の側にも昔からあったわけです。
もうひとつ、比べ方も先に決めておきます。直したあとにもう一度見るとき、期間の長さは前回とそろえてください。2週間と1か月を比べても、増えたのが改善の成果なのか期間の差なのかが分かりません。
見ない指標を書き出して残しておく
3つ目は、見ないものを決めることです。これが最も抜けやすく、そして効きます。
ヒートマップツールの画面には、こちらが頼んでいない情報まで並ぶでしょう。訪問者の操作を最初から再生できる機能を持つものもあり、つい見入ってしまいます。
全部を見に行くと時間だけが溶けていきます。今回は見ないと決めたものを、決めた理由ごと書き出して残してください。
口頭で外したつもりの指標は、次に数字を並べる場面で戻ってきます。書き残していない判断は、あとから復活してしまうものです。
あわせて、読み取りの注意をひとつお伝えします。画面に出ていないことを「起きていない」と読み替えないでください。
当社の自社メディアでは、アクセス解析の流入元の一覧に、ある経路を示す行が2つの時点とも現れませんでした。ここで「その経路からは誰も来ていない」と結論づけるのは早すぎます。正確には、その分類に集計されたものがなかった、というだけです。集計の仕組みが取りこぼしていた可能性は残ります。
ヒートマップでも同じことが起きます。色が付いていない場所について言えるのは、記録された操作が少なかったということまでです。
誰も見ていないのか、記録の対象になっていなかったのか、そもそも表示されていなかったのか。絵だけでは区別がつきません。
今泉の視点:ヒートマップを入れたいというご相談を受けたとき、私が必ず確認するのは「絵を見たあと、誰が何を直しますか」です。当社のナレッジでも、ヒートマップは離脱している場所を見つけるための一手段であって、それ自体が目的ではないと位置づけています。よくある失敗は2つあります。一度にページを大きく変えて何が効いたのか分からなくなること、そして判定の期間が短すぎて効果を読み違えることです。どちらも、絵を見る前に決めておけば避けられるものでした。道具を選ぶ時間より、見たあとの段取りを考える時間のほうが、結果に効きます。
ヒートマップツールについてよくある質問
まとめ
- 判定に必要なのは、自社の月あたりの閲覧数と比べたい期間の2つだけです
- 閲覧数の上限には300倍の開きがあり、保存期間を確認できたのは10件中3件でした
- 絵の材料そのものは、Googleの標準機能でも記録できます
16件の公式ページを1件ずつ確かめて分かったのは、同じ「無料」でも中身がまったく違うということでした。機能の一覧を見比べても、この差は出てきません。
次にやることは1つだけです。自社の月あたりの閲覧数と、比べたい期間の長さを書き出してください。この2つが手元にあれば、料金ページを開いた瞬間に足りるかどうかを判断できます。読まれ方の設計から見直したいときは、当社の記事制作の支援もお役に立てるかもしれません。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
