「広告を止めたら、問い合わせも止まってしまう」。そう感じながら、毎月の出稿を続けている方は少なくありません。オウンドメディアに力を移したほうがいいと言われても、いつ成果が出るのか分からないままでは、社内で説明のしようがないでしょう。
街中文学は、月間4,500万セッション級メディアの支援実績を持つ立場で、広告とオウンドメディアの両方に関わってきました。ご相談でいちばん多いのが「どちらにいくら置けばいいのか」という問いです。
お伝えしたいのは、この2つは選ぶものではなく、配分を決めるものだということです。読み終えるころには、自社がどちらに、いくら、どの順で置くかを決められます。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
先に結論:広告とオウンドメディアは別の仕事です
まず最初に、結論からお伝えします。
- 広告はいま買える枠、オウンドメディアはあとから効く在庫です
- 選ぶのではなく配分を決めます。決め方は4つの問いで示します
- 判断を鈍らせるのは「どちらが得か」という問いの立て方です
1つ目は、2つが代替関係ではないという点です。広告の枠は買っている間だけ自社のものですが、記事は公開後すぐ読まれないかわりに、見つけられたあとも残ります。
2つ目は、決めるべきものが選択ではなく配分だという点です。どちらかをゼロにする判断は実務でほとんど成立しません。広告を止めれば当面の問い合わせが減り、記事を書かなければ翌年の入口が増えないからです。
3つ目は、問いの立て方そのものが判断を止めているという話です。「どちらが費用対効果が高いか」と考えると、効く時期がずれたもの同士を並べることになります。
なお「オウンドメディアの対義語は何か」と問われることがありますが、厳密な対義語として定められた言葉はありません。自社で持つメディアに対して、費用を払って枠を借りるペイドメディアが実務上の対概念です。ここに第三者の口コミやSNSでの評判を指すアーンドメディアを加えた3分類を、トリプルメディアと呼びます。アーンドメディアだけは費用でも自社の意思でも直接は作れず、オウンドメディアの中身がその材料になります。
この呼び名は日本で生まれました。概念を日本に持ち込んだ横山隆治氏は、2009年に広告主協会のWeb広告研究会のセミナーでPOEという整理を紹介しました。後にWeb研がこれをトリプルメディアと名付けたそうです(宣伝会議『AdverTimes.』2024年3月27日)。3つの定義や始め方はオウンドメディアとは?完全ガイドにまとめました。この記事は、定義のあとに来る「で、どう配分するのか」に絞ります。
オウンドメディアとペイドメディアの4つの違い
2つの違いは、機能の一覧を眺めても腹落ちしません。実務で効いてくるのは、お金がどう減るか、成果がいつ立ち上がるか、やめたときに何が残るか、社内で誰の時間を使うかの4つです。

| 観点 | ペイドメディア | オウンドメディア |
|---|---|---|
| お金の行き先 | 掲載枠 | 記事という在庫 |
| 立ち上がり | 出稿した当日 | 当社事例では2か月で最初の変化 |
| 止めたあと | 翌日に枠が消える | 記事は残る |
| 社内の負担 | 運用担当で完結しやすい | 確認の応答日数が効く |
この表で押さえていただきたいのは、4行とも優劣ではなく性質の違いだという点です。どちらかが優れているなら選べばよいのですが、性質が違うものは配分するしかありません。
お金の減り方が根本的に違う
広告費は、掲載枠のオークションに参加して払う費用です。同じ言葉を狙う出稿者が増えれば、こちらが何も変えなくても単価は上がります。
単価そのものの統計ではありませんが、この競り合いの場がネットへ移っていることは公的統計でも確認できます。総務省の情報通信白書によると、日本ではインターネット広告費がマスコミ4媒体を2021年に上回り、その差が広がり続けているとのことです(総務省「令和7年版 情報通信白書」・2024年の数値)。
つまり自社の努力とは関係なく費用が動くのです。来期いくらで回せるかを自社だけでは決められません。
いっぽうオウンドメディアの費用は、枠ではなく制作と運用に消えます。払った分は記事として残りますが、残ったからといって自動的に集客するわけではありません。広告費は枠に、オウンドメディアの費用は在庫に変わると考えると判断しやすくなります。
成果が立ち上がる速さが違う
広告は出稿したその日に表示されます。予算を積めば表示が増え、止めれば止まるのです。この制御のしやすさが、ペイドメディア最大の利点でしょう。
オウンドメディアはこうはいきません。検索エンジンが記事を見つけて評価するまでに時間がかかるからです。Google自身も次のように書いています。
「変更した結果が Google 側に反映されるまでにはある程度の時間がかかります。数時間かかる変更もあれば、数か月かかる変更もあります。」(Google 検索セントラル「SEO スターター ガイド」・2025年12月18日更新)
これは変更が反映されるまでの時間であって、黒字化までの期間ではありません。それでも数か月という単位が出てくる施策と、当日から動く施策を同じ物差しでは測れないとわかります。
止めたときに手元へ残るものが違う
出稿を止めれば、枠は翌日から他社のものになるでしょう。記事は消えずに残りますが、残ることと機能し続けることは別だという落とし穴があります。
そこで当社は、契約終了時に何が残るのかを先に決めていただいています。確かめるのは、試したことの記録が残るか、公開した記事を契約後も自社サイトに残せるか、サイトへの変更に外部から張られたリンクが含まれていないかの3点です。
3つ目を確かめる理由もはっきりしています。外部リンクを使う施策が入っていた場合、契約終了とともにリンクが外れ、上がっていた順位が元に戻ることがあるためです。
社内で動く人と時間が違う
広告は、運用の担当者が管理画面で完結させられる部分が大きい施策です。オウンドメディアは違い、原稿の確認や事実関係の裏取りで社内の誰かの時間を使います。
この社内の時間について、当社は「月に何時間使えますか」ではなく「何営業日以内に返せますか」を確認しています。原稿の確認そのものは1本40分ほどで終わることが多いものの、その40分を取るのが5日後になれば、その月の公開はまるごと後ろへずれるからです。
1か月ずれれば、成果が立ち上がる時期も同じだけ遅れます。作業量ではなく応答の速さが効いてくる。ここが広告運用といちばん違うところです。
オウンドメディアの成果は何か月目に動くか
「時間がかかります」とだけ言われても、社内の説明には使えません。ここでは公式の見解と、当社が支援した案件の数字、そして自社メディアの実測を並べて、何か月目に何が起きるのかを見ていきます。

Googleが公式に述べている期間
この話題では「Googleは4か月から1年かかると言っている」という一文をよく見かけます。ところが2026年8月時点のGoogle公式ドキュメントに、この記述は見当たりません。かつて掲載されていたページを英語版・日本語版とも全文検索しましたが、該当する期間の記述は残っていませんでした。
では公式が期間について何も言っていないのかというと、そうではありません。コアアップデートの解説ページに次の記述があります。
「改善を行った場合、検索結果に効果が現れるまでには時間がかかることがあります。数日で効果が出るものもありますが、サイト全体が長期的に有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツを提供しているとシステムが学習し、確認するまでには、数か月かかることもあります。」(Google のコア アップデートについてサイト所有者が知っておくべきこと)
語られているのは、システムが学習し確認するまでの時間です。投資を回収するまでの期間を示した記述は見当たりません。「何か月で黒字になるか」に公式の答えはなく、あるのは「効果の確認まで数か月かかることもある」という目安だけなのです。
支援開始2か月と、その後の到達点
オリジナルグッズ制作をサポートする株式会社RONECT様の事例です。ご依頼の時点では、クライアント向けのホームページが整備されておらず、メディア経由の問い合わせもありませんでした。
| 時点 | セッション | 問い合わせ(出典の表記どおり) |
|---|---|---|
| 着手前 | — | 有効お問い合わせ 0件 |
| 1期目(2か月) | 46%増 | 新規お問い合わせ 月5件 |
| 2期を経た到達点 | 約13倍 | 有効お問い合わせ 月32件 |
注目していただきたいのは、最終的な数字ではなく1期目の行です。セッションつまりサイトへの訪問回数は伸びたものの、社内で見れば物足りない程度にとどまりました。2か月分の数字だけを見て費用対効果を判断すると、前半で撤退という結論になりやすいのです。
なお実施期間は2023年2月から3月と、2024年2月から3月の2期で、毎月続ける形の支援ではありませんでした。この事例の途中経過と、他社の事例を読むときの確認事項はSEO事例の読み方で詳しく扱っています(株式会社街中文学 制作実績)。
表示は増えるのにクリックが来ない時期
立ち上がりの途中で何が起きているのかを、当社の自社メディアの実測でお見せします。被リンクを獲りにいく施策をまったく行っていないドメインについて、Google Search Console で2026年7月5日から8月1日までの検索実績を集計しました。
表示があった検索語は378語、表示回数(検索結果に自社のページが出た回数)は1,979回、それに対してクリックは3回でした。この378語を平均掲載順位で分けると、21位から50位の帯に51.9%が滞留しており、10位以内に入れたのは14.6%にとどまります。
検索結果に出ること自体はそれほど難しくない一方で、クリックされる位置まで上がるのは別の勝負になります。この数字はその構造を示すものです。グラフが伸びているのに問い合わせが来ない時期は、失敗ではなく通過点として実在するのです。
今泉の視点:見積もりが「月2回の定例」のように回数だけで書かれていると、打ち合わせ1時間に金額が付いているように見えて高く感じられます。実際は数字を見る、原稿を読む、サイトを確認するといった作業が定例の外で起きていて、時間はそちらのほうが長いのです。
ですから当社は、定例と定例の間に何をするかまで見積もりに書きます。配分を検討されるときは「定例と定例の間は、どなたが何をされていますか」と一言お尋ねください。金額の内訳が見えてきます。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
広告とオウンドメディアの予算配分の決め方
ここからが本題です。予算配分は、年間の総額をどう割るか、1年目と2年目で費目がどう変わるか、自社側の時間をどう数えるか、削るときにどこから削るかの4点で決まります。

年間の総額を12等分しない
中小企業庁の白書は、デジタル化の取組を進めるうえでの問題点を調べています。どの取組段階の事業者でも「費用の負担が大きい」または「DXを推進する人材が足りない」と回答する割合が高い、という結果でした(中小企業庁「2025年版 中小企業白書」)。業務のデジタル化についての調査ではありますが、限られた費用と人員で選ぶという前提は集客の投資でも同じでしょう。
その限られた予算を組むとき、年間の総額を決めてから12で割る進め方をよく見かけます。この組み方だと、たいてい前半が足りなくなるのです。
仕事の中身が時期によって変わるからでしょう。着手した直後は、現状を調べる仕事とサイトの構造を直す仕事に負荷が集中します。そこを越えると、記事を書く仕事と数字を見る仕事へ移っていきます。負荷の山が前にある施策を、平らな月額で並べると入りきりません。
そこで当社は、立ち上げの期間と続ける期間を分けて組んでいただいています。同じ総額でも、割り振り直すだけで社内での通しやすさが変わります。
1年目と2年目で費目が入れ替わる
もうひとつお願いしているのが、1年目と2年目の予算を別々に作っていただくことです。同じ金額を横に置くと2年目に問題が起きます。
1年目の費用は記事を増やすことが中心ですが、2年目には古くなった記事の手入れが加わるからです。情報の更新、順位が下がった記事の直し、リンクの点検が積み上がります。いずれも記事が増えるほど量が増えていくものです。1年目と同額の枠しかなければ、新しく書く分と手入れする分が同じ枠を取り合うでしょう。
当社の実感として、止まったメディアの多くは、記事が足りなかったのではなく、手入れの費目が最初から予算に無かったのです。提案を受けるときは「記事が50本になった時点で、月に何本を新しく書いて、何本に手を入れる想定ですか」と尋ねてみてください。
自社側にかかる時間も費用に数える
請求書に載らない費用があります。原稿の確認、修正の指示、社内の承認にかかる時間です。ここを数えずに配分を決めると、あとで計画が狂います。
効いてくるのは時間の量より返すまでの日数でした。月に何時間使えるかを積算するより、何営業日以内に返せるかを先に決めるほうが実務に合います。返せなかった月が2回続いたら、期限そのものを見直す合図だと考えてください。
広告の側も同じで、運用を任せていても訴求内容の確認は自社の仕事です。自社が出せる時間の総量が、どちらに寄せるとしても上限になります。
予算が足りないときどこから削るか
予算そのものが縮むこともあります。このとき総額を一律に下げると、いちばん効く初期の設計から削れてしまうのです。
当社がお勧めしているやり方は2つあります。1つ目は、立ち上げの部分を残したまま、続ける期間の本数を減らすやり方です。2つ目は、期間そのものを延ばして月額を下げるやり方です。どちらも元に戻せますが、初期の調査を削ると戻すときにやり直しが発生します。
- いま広告を止めたら、翌月の問い合わせは何件になりますか
- 自社は原稿の確認を何営業日以内に返せますか
- 2年目に新しく書く本数と手を入れる本数を何本と置きますか
- 削るとしたら初期の設計と継続の本数のどちらからですか
この4つに数字で答えられれば、配分の方針はおおむね決まるはずです。1つ目の答えが大きいほど広告を急には減らせず、2つ目が遅いほどオウンドメディアの立ち上がりは後ろへずれます。運用を外部に任せる場合の費用相場もあわせてご覧ください。
広告のデータをオウンドメディアに活かす
2つを並行して動かす最大の利点は、広告で先に集まったデータをそのまま記事の設計に使えることです。「連携させましょう」で終わらせず、何をどう受け渡すのかを見ていきます。

登録キーワードではなく検索語句を見る
「広告で成果が出ている言葉を、検索でも取りたい」というご相談をよくいただきます。このとき当社がお願いするのは、登録キーワードではなく検索語句の一覧をそのままお見せいただくことです。
両者は別のものです。登録キーワードは広告主が指定した言葉であって、実際に人が入力した言葉ではありません。記事の材料になるのは後者だけで、そこには社内では出てこない語順や補足語が含まれています。登録キーワードから読み取れるのは、テーマの当たりをつけるところまででしょう。
対象外にする言葉の一覧も同時に作る
狙う言葉を一覧にするとき、当社は同じ場所に対象外にする言葉の一覧も作ります。事業に関係はあるが問い合わせにはつながらないと判断した言葉を、理由を1行添えて残すのです。
あとから外す判断は鈍ります。すでに順位がついていたり記事があったりすると、外す決断そのものが惜しくなるからでしょう。余裕があるうちに書くほうが、迷いは少なくて済みます。
この作業は、広告の除外キーワードと同じ構造です。配信してから削るより、始める前に「見せない相手」を決めるほうが早く決まります。広告で作った除外リストは、記事のキーワード設計にそのまま転用できる資産です。
読まれても問い合わせに届かない構造
ここで、当社の自社メディアで起きていることをお話しします。Google Search Console で2026年7月6日から8月2日までの検索実績を取得し、検索意図の4分類に振り分けました。全470語のうちわけは次のとおりです。
| 検索意図 | 語数 | 表示回数の割合 | クリック | 平均掲載順位 |
|---|---|---|---|---|
| 知りたい | 346語 | 74.3% | 5 | 34.3位 |
| やり方を知りたい | 68語 | 14.9% | 0 | 37.0位 |
| 買いたい | 55語 | 10.8% | 0 | 35.0位 |
| 特定の場所へ行きたい | 1語 | 0.1%未満 | 0 | 1.0位 |
この集計は前章とは別に取り出したものです。前章は8月4日、本章は8月5日の取得で、対象期間も1日ずれています。検索実績は日を追って確定するため、語の総数も一致しません。
いちばん重いのは3行目です。問い合わせにもっとも近い買いたい意図が、表示回数の1割ほどしかなくクリックはゼロでした。いっぽう平均掲載順位は、上の3つの分類でほとんど差がありません。
順位に差がないということは、「買いたい意図の言葉は競合が強くて上がらない」では説明がつかないのです。差がついているのは順位ではなく、そもそも表示される機会の数そのものでした。解説記事を積み上げると、露出の形まで解説寄りになります。
この振り分けは語による機械的な集計なので、概算として受け止めてください。それでも「読まれているのに問い合わせが来ない」原因が、記事の説得力ではなく露出の構成にある場合は確かにあります。広告が刈り取りを担っているあいだに、買いたい意図の入口をオウンドメディア側で作れているかどうかが、並行運用の勘所になります。
3つのメディアについてよくあるご質問
まとめ
- 広告はいま買える枠、オウンドメディアはあとから効く在庫です
- 2か月分の数字だけで費用対効果を判断しないようにします
- 予算は1年目と2年目を別々に組みましょう
3つの整理を日本へ持ち込んだ横山隆治氏は、この枠組みが担当を切り分けるための表として使われた状況に触れ、次のように述べています。
「企業のマーケティングメディアが従来より多岐に渡って複雑に増えていくからこそ、それらが有機的に結びつくため、企業の組織のなかでこれらをうまくハンドリングするために、別々のものと区別して、分掌化してはいけないのです。」(横山隆治「『トリプルメディア』を検証する」)
3つに分ける整理を日本へ紹介したのは、この方自身です。戒めているのは分類ではなく、3つを社内で別々の担当に切り分けてしまうことでした。どちらが優れているかを決める必要はありません。決めるのは配分です。
次の一歩として、4つの問いに自社の数字を入れてみてください。とくに1つ目がわかると、動かせる予算の幅が見えてきます。配分の組み立てや社内での説明のしかたは、街中文学へご相談ください。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
