オウンドメディアのマネタイズは式で決める|自社275本の実測

「PVは伸びています」と報告した直後に、「で、いくらになっているの」と聞かれて言葉に詰まる。オウンドメディアのマネタイズは、方法の一覧を手元に並べても、自社でいくらになるかまでは出てきません。記事は増えたのに、経営へ渡せる数字がPVとセッションのままという状態は珍しくありません。

足りないのは方法ではなく、式です。型ごとの計算式に自社の数字を入れれば、いまいくらで、あと何が足りないのかが見えてきます。

この記事では、収益モデル別の計算式と、単価の相場が存在しない理由、そして当社メディア275本の全数実測を示します。読み終えたときには、PVの報告を「月いくら」という一文に翻訳できるはずです。

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目次

先に結論|マネタイズは式に数字を入れて決める

オウンドメディアのマネタイズは、方法を選ぶ前に計算します。型の一覧をいくら眺めても、自社でいくらになるかは出てきません

必要なのは、型ごとの計算式と、式に入れる数字をどこから取るかです。そして計算する前に、決めておかなければならないことがもう1つあります。

この章では、収益の型の全体像、単価の相場が調べても出てこない理由、そして計算より先に決めるべきものを示します。

収益化の型は大きく2つに分かれる

収益の型は2つです。事業に貢献して間接的に回収する型と、メディア自体が直接お金を生む型。ここは多くの解説と同じなので、先に整理だけしておきます。

お金の入り方 主な手法
事業貢献型 記事 → 自社サービス → 受注 リード獲得、商品販売の後押し、営業の効率化
直接収益型 メディア自体が収入を生む 広告掲載、アフィリエイト、記事広告、有料コンテンツ

どちらか一方に決める必要はありません。当社は2026年8月12日時点で20サイトの台帳を持ち、運用中が15サイトあります。

その中で自社サービスへの送客型・アフィリエイト型・比較データベース型・SaaSの4つの収益モデルが並走しています。サイトの成り立ちが違えば、取れる型も変わってきました。

型を選ぶ前に目的が決まっていない場合は、オウンドメディアの目的は一覧では決まらない|絞る4つの軸を先に読んでください。目的が決まらないと、収益地点も決まりません。

単価の相場は公表されていない

「月何PVで月いくらになるのか」。これを調べても、確かな答えは出てきません。単価の水準が一次情報として公表されていないからです。

Google AdSense の公式ヘルプは、インプレッション収益(RPM)の定義と計算式を示しています。ただし金額の目安はどこにも書かれていません(2026年8月25日に表示を確認)。「AdSense の仕組み」のページにも金額の水準や目安は示されておらず、支払額については次のように説明されているだけでした。

広告の種類によって広告主が支払う金額が異なりますので、広告から得られる収益も異なります。

ほかも同じでした。日本インタラクティブ広告協会が公開している報告書・資料の一覧にも、取引単価の統計は見当たりません(同日確認)。電通の「日本の広告費」は総額と内訳を毎年公表していますが、単価そのものは出していません。

つまり「1PVあたり◯円」という数字を載せているページは、その運営者が自分の実績を書いたものです。事業規模もジャンルも違う別の事業者の実績を、そのまま自社の計画に入れることはできません。

相場が存在しない以上、渡せるのは式のほうです。自社の実測値を入れて、自分で計算するしかありません。

式より先に決めるのは出口の数

式に入れる数字より前に、決めることがあります。収益が発生する地点が何か所あるかです。

当社メディアの公開記事275本を2026年8月25日にWordPress REST APIで全数取得し、本文から収益地点へ向かうリンクを機械的に数えました。読み取りのみで、記事の書き換えはしていません。

結果は、リンク総数1,129本、1記事あたり平均4.11本。数だけ見れば十分に思えます。ところが行き先は14ページしかありませんでした

記事を275本書いても、たどり着く先は14ページ。ここを増やさない限り、記事を500本にしても収益の上限は動きません。測定の中身は「実測|自社メディアの収益導線を全数調査」で詳しく示します。

もう1つ、計算の分母も先に押さえてください。収益がいくらでも、かかった費用を超えなければ回収になりません。費用の数え方はオウンドメディアの費用|見積書に載らない2つの費用の数え方にまとめています。

収益モデル別の計算式と必要な前提

型ごとに式は違います。式が違うということは、集めるべき数字も違うということです。ここを混ぜたまま「PVを増やそう」と言い続けると、いつまでも金額が出てきません。

この章では5つの型それぞれについて、式と、式に入れる数字の取り方を示します。広告収入・アフィリエイト・記事広告の3つは、公的資料または提供元の公式ドキュメントに書かれた定義から式を組み立てました。有料コンテンツと事業貢献型は、当社が実務で使っている置き方です。

広告収入はPVとRPMの掛け算

広告を貼って得られる月間収益は、月間PV ÷ 1,000 × RPMで出ます。

RPMは広告表示1,000回あたりの見積もり収益額のことです。Google AdSense の公式ヘルプ「インプレッション収益(RPM)」は、計算方法を「インプレッション収益=(見積もり収益額÷ページビュー数)×1,000」と定義しています。

公式ヘルプは「広告表示1,000回ごと」と説明しつつ、式の分母にはページビュー数を採っていました。本記事の式も、分母はページビューに揃えています。

ここで気づいてほしいのは、RPMが後からしか分からない数字だという点です。式の形を見れば分かるとおり、RPMは収益をPVで割ったもの。つまり収益が出る前にRPMは決まりません。

だから「何PVあれば月◯円」は事前に計算できません。できるのは、1か月出してみて自分のRPMを実測し、そこから「あと何PV必要か」を逆に出すことです。

アフィリエイトは4つの掛け算

アフィリエイトは掛ける数が増えて、月間PV × クリック率 × 成約率 × 成果単価になります。

4つのうち1つでも決まっていなければ、必要なPVは逆算できません。順序としては、いちばん右の成果単価から決めるのが正しいことになります。

  • ①成果単価を提携先の管理画面で確定させる
  • ②目標額を単価で割り、必要な成果件数を出す
  • ③成約率で割り、必要なクリック数を出す
  • ④クリック率で割り、必要なPVを出す

当社もここで順序を間違えました。運営しているアフィリエイト型の別メディアは、12か月で月50万円という目標を先に置き、その内訳も決めています。ところが2026年7月の時点で、記事は135本を書き上げて予約投稿まで済ませた一方、提携先の実単価はまだ確認できていませんでした

単価が分からなければ、月50万円に何件必要かも、何PV必要かも出ません。本数だけが先に増えていく状態です。広告やアフィリエイトの手法そのものはAIブログの収益化|現実的な戦略と失敗しないための注意点で詳しく扱っています。

記事広告は本数と単価の相対交渉

記事広告やタイアップは項がぐっと減り、掲載本数 × 1本あたりの単価だけになります。

この型が他と違うのは、単価が入札で決まらないことです。「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」は、純広告やタイアップ広告が属する予約型広告を次のように定義しています。発表したのはCARTA HOLDINGS・電通・電通デジタル・セプテーニの4社で、2026年3月5日の公表です。

純広告やタイアップ広告として、代理店・メディアレップ経由、もしくは直接広告主に販売されたもの、およびデジタル・プラットフォーム(ツール)やアドネットワークを通じて非入札方式(固定価格)で取引されるもの

非入札方式の固定価格。つまり単価は相手との交渉で決まり、相場という概念になじみません。

裏を返せば、媒体としての価値を説明できれば単価を自分で提示できる型でもあります。ただしそのためには営業が必要で、記事を書く仕事とはまったく別の工数がかかります。

有料コンテンツは会員数と解約率

有料コンテンツやサブスクリプションは、積み上がる代わりに解約が効いてくる型です。式は有料会員数 × 月額単価 ×(1−解約率)になります。

この式で見落とされやすいのが、同じ契約数でも単価構成で金額が倍近く変わることです。当社のSaaSを例にすると、月額4,980円からの3プラン制で、月次経常収益100万円超を目標に置いています。必要な契約数の想定は80〜100名。

ところが、いちばん安いプランだけで100名を集めても、月次経常収益は約50万円にしかなりません。目標に届くのは、上位プランの比率を上げた構成のときだけです。これは2026年6月4日時点で置いた目標であり、達成した実績ではありません。

月額単価は、プランごとの実額を会員数で加重平均して出します。解約率とあわせて出せれば、来月の見込みが今月のうちに計算できます。

市場規模で見ても、有料コンテンツは決して小さくありません。経済産業省が2025年8月26日に公表した令和6年度 電子商取引に関する市場調査によれば、2024年の消費者向け電子商取引のうちデジタル系分野は2兆6,776億円。うち電子出版が6,722億円を占めます。

事業貢献型は受注単価から逆算する

事業貢献型は段がいちばん多く、式は訪問数 × 問い合わせ率 × 商談化率 × 受注率 × 受注単価という形をとります。

段が多いほど、どこか1段がボトルネックになりやすいのです。当社の場合、獲得までを4階建てで並べました。

  • 1階:検索から人を呼ぶ記事
  • 2階:無料のLLMO診断
  • 3階:5万円から10万円の入口診断
  • 4階:月20万円・25万円・45〜50万円の運用代行

逆算の前提として、アプローチ100人あたり診断1件、紹介経由はその10倍、診断から運用代行へのアップセルは3割から5割と置いています。いずれも2026年6月17日時点で逆算のために置いた前提値であって、達成した実績ではありません。

読者が自分の数字を入れるときは、各段の分母をそろえてください。分母がずれると、途中の段で数字が二重に効いてしまいます。

もう1つ、正直に添えておきます。自社サイトは6つの営業チャネルのうちの1本にすぎません。オウンドメディアだけで受注が積み上がる構造にはなっていないのです。

5つの型をまとめます。この表をそのままコピーして、右端の空欄に自社の数字を入れてみてください。

数字の取得元 自社の値
広告収入 月間PV ÷ 1,000 × RPM RPMは1か月出して実測する  
アフィリエイト 月間PV × クリック率 × 成約率 × 成果単価 成果単価は提携先の管理画面で先に確定させる  
記事広告 掲載本数 × 1本あたりの単価 単価は相対交渉。読者層データと掲載実績が前提  
有料コンテンツ 会員数 × 月額単価 ×(1−解約率) 解約率=当月解約数÷月初会員数  
事業貢献型 訪問数 × 問い合わせ率 × 商談化率 × 受注率 × 受注単価 問い合わせ率=フォーム到達数÷セッション数  

埋まらない欄が、いま測っていない数字です。そこが分かれば、次に何を測ればよいかも決まります。

必要な売上から逆算して記事本数まで落とす手順はオウンドメディアの目標記事数|事業成果から逆算する決め方にまとめています。

BtoBで高単価商材を扱う場合の設計はBtoBオウンドメディアの成功法則|受注につながる設計図が近いはずです。

市場の実額で見るオウンドメディア広告

単価は公表されていませんが、市場の規模は公表されています。自社が狙おうとしている型が、どれくらいの大きさの市場に属しているのか。これは確かめられます。

この章では2つの資料を使います。取引手法別の内訳は、CARTA HOLDINGS・電通・電通デジタル・セプテーニの4社が2026年3月5日に発表した「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」から。マスコミ四媒体由来のデジタル広告費は、同じ日に電通が発表した「2025年 日本の広告費」からです。

前者は2025年12月から2026年2月にかけて、広告媒体社へのアンケートとヒアリングで集計されました。

ネット広告費の88.7%は運用型

2025年のインターネット広告媒体費は3兆3,093億円でした。取引手法別に分けると、内訳は次のようになります。

取引手法 2025年 構成比 前年比
運用型広告 2兆9,352億円 88.7% 112.5%
予約型広告(純広告・タイアップ) 3,042億円 約9.2% 109.1%
成果報酬型広告(アフィリエイト) 699億円 約2.1% 96.1%

出典は2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析(CARTA HOLDINGS/電通/電通デジタル/セプテーニ)です。

まず押さえたいのは、市場の9割近くが運用型だという点です。検索連動型広告や、アドネットワークを通じて入札方式で取引されるものがここに入ります。

入札で単価が決まる以上、個別のメディアが交渉で単価を上げられる余地はほとんどありません。自社サイトに広告枠を置くという判断は、この9割の市場に単価の決定権なしで参加することを意味します。

純広告とタイアップは3,042億円

一方、純広告やタイアップ広告が属する予約型広告は、媒体費全体の1割弱にとどまります。規模は運用型の10分の1ほどしかありません。

それでも前年を上回って伸びました。そして前の章で見たとおり、この領域は非入札の固定価格。媒体側が単価を提示できる、数少ない型です。

ただし条件があります。広告主に「この媒体に出す価値がある」と説明できなければ、価格の提示以前に商談が始まりません。この型が向くのは、次の3つがそろっている場合です。

  • 読者層を数字で説明できる(属性・流入経路・検索クエリ)
  • 掲載実績や反響を資料にまとめられる
  • 営業に回せる人が社内にいる

営業に持っていく材料を用意する工数は、記事を書く工数とは別に必要です。

なお、タイアップ広告の市場規模そのものは公表されていません。電通の分類では「その他のインターネット広告」に含まれており、単独の金額を示した一次情報は見つかりませんでした。

成果報酬型だけが前年を割った

アフィリエイトが属する成果報酬型広告は、取引手法別で唯一、前年を下回った領域でした。

媒体費全体に占める割合も小さく、運用型の40分の1ほどにとどまります。「アフィリエイトで稼ぐ」という選択肢を検討するなら、縮んでいる市場に後から入ることになる、という前提は持っておいてください。

次のどれかに当てはまるなら、この型は後回しにすることをおすすめします。

  • 成果地点の単価がまだ決まっていない
  • 検索結果の1ページ目に入っている記事が少ない
  • 市場の縮小を打ち返すだけの本数を投じる余力がない

もちろん市場全体が縮んでも、個別の媒体が伸びることはあります。ただし追い風は吹いていません。

大手の媒体でも単価は下がっている

もう1つ、示唆的な数字があります。マスコミ四媒体に由来するデジタル広告費の内訳です。伸びた媒体と落ちた媒体が、きれいに分かれました。

媒体 2025年 前年比
新聞デジタル 191億円 97.9%
雑誌デジタル 615億円 96.5%
テレビメディアデジタル 807億円 123.4%
ラジオデジタル 38億円 111.8%

テレビとラジオが伸び、新聞と雑誌が前年を下回りました。出典は2025年 日本の広告費(電通・2026年3月5日発表)です。電通は新聞と雑誌が落ちた理由をこう書きました。

運用型広告は、PV(ページビュー)数の減少や単価低下の影響を大きく受けた。

タイアップやオウンドメディア支援などのコンテンツ制作力を生かした領域は、引き続き底堅く推移したものの、運用型広告の単価下落やプラットフォーム側のアルゴリズム変更や、ユーザーのAI検索行動によるPV数の伸び悩みなどが影響し、前年を下回った。

2つの記述から読み取れることは、はっきりしています。PVを広告に換金するモデルは単価が下がっている。一方で、制作力を売るモデルは底堅い。

これは、新聞社や出版社という規模の事業者でさえそうだという話です。記事数十本から百数十本のオウンドメディアが同じ土俵で広告収入を狙うのは、私は分が悪いと判断しています。

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実測|自社メディアの収益導線を全数調査

ここからは当社の数字を出します。2026年8月25日にWordPress REST API(認証あり・読み取りのみ)で公開記事275本を全数取得し、機械的に数えました。1回の観測なので「常にこうなる」という話ではなく、1社のある時点の断面として読んでください。

先に立場を明らかにしておきます。このメディアの記事には広告タグもフォームも1つもありません。第三者の計測タグ8種は、トップページを含む274ページ全数で0件でした。記事本文のフォーム要素は、公開記事274本を対象に測って0件です。

つまりこのメディア単体は直接収益型を採っておらず、事業貢献型だけで回しています。第1章で触れたとおり、他サイトではアフィリエイト型やSaaSも並走中です。以下の数字は、このメディアに限った話として読んでください。

記事275本に対して出口は14ページ

まず「収益地点」を機械で判定できる形に定義しました。①コーポレートサイト側の、メディア配下ではない全URL ②メディア側の固定ページ全体 ③自社ドメインのPDF ④自社SaaSのドメイン、の4種類です。このいずれかへ向かう本文中のリンクを、公開記事275本すべてで数えました。

サービス紹介ページに限定しなかったのは、機械で漏れなく拾うためです。その結果、実績紹介ページや著者プロフィールも集計に入っています。

項目 実測値
収益地点へのリンク総数 1,129本
1記事あたり 平均4.11本/中央値4本/最小2本/最大9本
1本も持たない記事 0本(275本すべてが最低2本を持つ)
CTA由来 943本(83.5%)
本文中の素のリンク 186本(16.5%)
行き先のページ数 14ページ(URL文字列では16件)

本数だけを見れば、導線は足りているように見えます。ここまでは悪くありません。

問題は最後の行です。1,129本のリンクが向かう先は、14ページしかありません

集計上のURL文字列は、これよりもう少し多く出ました。同じページが計測用パラメータの違いで2件に分かれていたものと、末尾スラッシュだけが違うものがあったためです。

寄せると14ページになりました。内訳を並べます。

  • コーポレートのサービス紹介ページ:7枚
  • コーポレートの実績紹介ページ:1枚
  • メディアの固定ページ:4枚(サービス・診断3枚+著者プロフィール1枚)
  • 自社の資料PDF:1本
  • 自社SaaSのドメイン:1件

実績紹介と著者プロフィールを収益地点と呼ぶには無理があるので、実質の受け皿は12ページと見るのが正直なところでしょう。

別の角度からも同じことが言えます。2026年8月25日に、公開記事274本を基準として2サイトのURLを数えました。記事以外のページは合計37枚で、記事が全311URLの88.1%を占めています。

こちらはリンクされているかどうかに関係なく、存在するページ自体を数えた結果です。サービス紹介にあたるのは、コーポレート8枚とメディアのサービス・診断ページ3枚の計11枚だけでした。

先ほどの「サービス紹介7枚」は記事から実際にリンクされている行き先の数、こちらの8枚はサイトに存在するページの数です。数え方が違っても、受け皿は十数枚に収まりました。

記事が275本あろうと500本あろうと、この十数ページが受け皿の全部でした。「セッションが13倍になった」という報告が金額に変わらないとき、原因は記事側ではなく受け皿側にあることが多いと考えています。事例の見方はオウンドメディアの成功事例|セッション13倍の共通点を解剖で扱いました。

本文に導線がない記事が36.7%

誘導ブロックを除いて数え直すと、景色が変わります。本文中に素のリンクが1本もない記事は101本、全体の36.7%でした。

CTA(記事内の誘導ブロック)は運用ルールで全記事に3箇所置いているので、そこを差し引くと、3本に1本以上は「本文の文脈から自然に出口へ送る導線」を持っていないことになります。

行き先の種類ごとに、1本以上持つ記事の数も出しました。

  • コーポレートのサービスページ宛:275本中274本(99.6%)/リンク総数825本
  • メディアのサービス・診断ページ宛:167本(60.7%)/178本
  • 自社の資料PDF:40本(14.5%)/120本
  • 自社SaaSのドメイン宛:6本(2.2%)/総数わずか6本

最後の行が当社の弱点です。自社プロダクトを持っているのに、SaaSのドメインへ直接送っている記事が6本しかありません。

ただし公平に書くと、コーポレート側のSaaS紹介ページ宛のCTAは20記事に入っています。導線が皆無というわけではなく、本文の文脈から自然に触れている記事がほとんどないという話です。

今泉の視点:この6本という数字は、測るまで気づいていませんでした。CTAは全記事に入っているので、感覚では「導線はある」と思っていたのです。マネタイズの議論をする前に、まず自分のサイトを数えるべきだと痛感しています。

逆に集中しているところもあります。最も多くの記事から本文リンクを受けているのは、メディア側の「オウンドメディア運用代行」のサービスページで、162本(58.9%)でした。ただしこれはリンクが集まっているという事実であって、そこから受注できているという意味ではありません。自社で回すか外に出すかの比較はオウンドメディア運用代行の費用相場|立て直しまで任せる選び方にまとめています。

表示42,789回でクリックは23回

「PVがあれば収益になる」という前提も、実測すると怪しくなってきました。当社が運営する別のメディア2本の数字を出します。サイト名と業種は伏せますが、数字はそのままです。

メディア 取得時点と期間 表示回数 クリック クリック率
データベース型(記事28本+約4,100ページ) 2026年7月10日取得・直近90日 42,789回 23回 0.05%
比較型(掲載企業約209社) 2026年7月時点・直近3か月 約5,590回 37回 0.7%

取得時点も期間も違うので、そのまま横に比べないでください。それでも共通しているのは、表示は出ているのにクリックが立っていないことです。

原因は媒体ごとに分析済みです。データベース型は8位から30位あたりに順位が滞留していることが最大の課題、比較型は平均掲載順位が30.8位でした。どちらも1ページ目に届いていません。

参考までに、母集団を変えるとまったく違う数字になります。比較型のサイトで、1ページ目に入った会社詳細ページだけを見ると、クリック率は15%から25%でした。サイト全体を見た上の表とは母集団が違うので、並べて比べる数字ではありません。

ここから言えるのは、収益の計算式に入れるべきなのが表示回数ではなく「1ページ目に入っている本数」だということです。流入が伸びない原因の切り分けはオウンドメディアの集客方法|伸びない原因の診断と設計手順で扱っています。

クリックが立っても登録は0だった

では、クリックが立てば収益になるのか。ここにもう1段の壁があります。

当社のSaaSで実施したメール施策の実測です。見込み客リストは6,674件ありますが、条件を満たす次の送信対象は95件しか残っておらず、リストは弾切れ寸前になっています。

これまでに送信できた分が、その後どう落ちたかを見てください。

段階 件数 率(送信436件に対して)
送信 436件
開封 154件 35.3%
クリック 25件 5.7%
登録 0件 0%

2026年6月4日時点の数字です。開封率も反応も、悪い数字ではありません。それでも着地したページで誰も登録しませんでした。

断っておくと、これはメールの直販ファネルであって、オウンドメディア経由のファネルではありません。記事から来た読者が登録しなかった、という話ではないのです。

それでも同じ構造が見えます。表示からクリックで桁が落ち、クリックから成果地点でもう一度落ちる。式の右端にある単価が大きくても、途中の段が1つでも0なら、掛け算の答えは0になります。

記事広告で収益を得る前に押さえる規制

直接収益型のうち記事広告・タイアップに進むなら、景品表示法の規制を先に押さえてください。ここを知らずに始めると、収益より先に取引が止まります。

この章の内容は、消費者庁が公開している運用基準Q&A、管理上の措置についての指針、および措置命令の公表資料から取りました。条文の読み方には自信のない部分もあるため、実際の判断は必ず専門家に確認してください。

ステマ規制の対象は広告主だけ

いわゆるステマ規制は、令和5年3月28日の内閣府告示第19号として指定され、2023年10月1日に施行されました。正式名称は「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」です。

まず、誰が規制されるのか。消費者庁のステルスマーケティング特設ページにはこう書かれています(2026年8月25日に表示を確認)。

規制の対象となるのは、商品・サービスを供給する事業者(広告主)です。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。

つまり名宛人は広告主だけ。媒体社もアフィリエイターも、原則として法律上の規制対象ではありません。

ただし例外もあります。消費者庁のQ&A(2026年8月25日に表示を確認)にはこうありました。「インフルエンサー等が、広告主と共同して商品等を供給しているという例外的な場合には、当該インフルエンサー等も規制の対象となります」。

媒体社についても同様です。事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針(2024年4月18日改正)は、他の事業者と共同して商品・役務を供給していると認められる場合、景品表示法の適用を受けるとしています。

ただし「うちは媒体だから関係ない」で終わる話でもありません。運用基準の第1には、次の注記があります。

事業者が第三者の表示において、事業者の表示であることを明瞭にしなければならないことの結果として、第三者の表示に対しても一定の制約が事実上課せられることとなるが、かかる制約は、一般消費者の商品選択における自主的かつ合理的な選択を確保するという景品表示法の目的達成の観点から行われるものであり、第三者の自由な表現活動を不当に制約しようとするものではない。

広告主が義務を果たすために、媒体側にも表記が求められる。この構造を理解しておかないと、広告主にリスクを負わせる媒体として取引を打ち切られることがあります

法的に罰されないことと、商売が続くことは別の話です。

自社商品を売る記事は対象外

ここで安心してよい部分もあります。自社のオウンドメディアで自社の商品を紹介する記事は、そもそも告示の対象外です。

運用基準の第3の2⑵は、告示の対象とならない例をアからキの7つ挙げています。オウンドメディアに関係する5つを抜き出します。

  • 放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示
  • 新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示
  • 商品・役務の紹介自体が目的である雑誌その他の出版物における表示
  • 事業者自身のウェブサイトにおける表示
  • 事業者自身のSNSアカウントを通じた表示

理由は単純で、読者から見て誰の発信か分かるからです。規制がかかるのは「第三者の表示に見えるもの」だけ。「オウンドメディアだから全部ステマ規制の対象になる」という理解は、少なくとも運用基準の記述とは合いません。

ただし、自社サイトなら何を載せてもよいわけではありません。同じ項目には、次のただし書きが付いています。

ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。

第三者の客観的な意見に見える表示は、自社サイトでも明瞭な表示が必要です。具体的には、次のような要素が該当します。

  • 導入事例・お客様の声
  • 専門家コメント・監修者コメント
  • 依頼して書いてもらった寄稿記事
  • 謝礼を渡して掲載した第三者の評価

オウンドメディアでよく置かれる要素ばかりです。ここは確認してください。

当社の場合、記事の中身も出口も自社の表示に統一しています。CTAはテーマ別に9種類を用意し、記事のテーマに応じて1記事1種類だけを出し分けるという運用ルールを、2026年8月時点で明文化しました。これは効果測定の結果ではなく、あくまで運用の決め事です。

タイアップが広告になる分かれ目

問題は、他社からお金を受け取って記事を出す場合です。ここに明確な分かれ目があります。

運用基準の第2の2⑵は、まず原則を示します。

新聞・雑誌発行、放送等を業とする媒体事業者(インターネット上で営む者も含む。)が自主的な意思で企画、編集、制作した表示については、通常、事業者が表示内容の決定に関与したといえないことから、事業者の表示とはならない。

取材に基づく記事や書評は、こちらに入ります。ところが続けて、こう書かれています。

ただし、媒体事業者の表示であっても、事業者が表示内容の決定に関与したとされる場合は、事業者の表示となる。この判断の際には、正常な商慣習を超えた取材活動等である実態(対価の多寡に限らず、これまでの取引実態と比較して、事業者が媒体事業者に対して通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭等の提供、通常考えられる範囲を超えた謝礼の支払等が行われる場合)にあるかどうかが考慮要素となる。

「通常考えられる範囲の取材協力費を大きく超えるような金銭等の提供」。これが分かれ目です。

記事広告として掲載料を受け取ることは、この考慮要素に正面から当たると考えられます。つまりタイアップ記事は広告主の表示とみなされる可能性が高く、明瞭な広告表記なしに出せば、広告主が措置命令を受けるおそれがあります。

ここでいう対価は現金に限りません。運用基準は第2の1⑵イの注で、対価を「金銭又は物品に限らず、その他の経済上の利益(例えば、イベント招待等のきょう応)など、対価性を有する一切のものが含まれる」と定義しています。媒体事業者との取引を考えるときも、この幅で見ておくのが安全です。

明瞭な表記と認められない例

広告表記は、置けばよいというものではありません。運用基準の第3の1⑵は、明瞭でない例を具体的に列挙しています。

  • 事業者の表示である旨を、部分的にしか表示していない
  • 冒頭に「広告」と書きながら、文中で「第三者として感想を記載しています」と分かりにくくする
  • 読者が視認しにくい、表示の末尾の位置に置く
  • 周囲の文字より小さく、または薄い色で表示する
  • 大量のハッシュタグの中に埋もれさせる
  • 一般消費者が事業者の表示であることを認識できない文言を使う

使う言葉は「広告」等に限定されません。消費者庁のQ&Aは、「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」以外の用語を記載する方法が禁止されているものではない、としています。

ただし前提として、読者が広告だと認識できる語である必要があります。大事なのは表示内容全体から、事業者の表示であることが明瞭に伝わるかです。

違反した場合は措置命令の対象です。ステマ告示の違反自体は課徴金の対象になりませんが、優良誤認や有利誤認を含む場合は課徴金の対象になり得ます。

実際に処分が出た例もあります。消費者庁は2024年6月6日、ある医療法人に対し、ステルスマーケティング告示に該当する行為が認められたとして措置命令を行いました。

項目 内容
認定された行為 インフルエンザワクチン接種で来院した人に対し、Googleマップの口コミ欄へ星4つまたは星5つを投稿することを条件に、接種費用を割り引くと伝えていた
違反とされた点 その結果として投稿された口コミが、事業者の表示であると明瞭になっていなかった
命令の内容 当該表示行為の取りやめ、景品表示法違反である旨の一般消費者への周知徹底、再発防止策の実施、今後同様の表示を行わないこと

公表資料は消費者庁のサイトで確認できます。

オウンドメディアのマネタイズについてよくあるご質問

収益化を検討するときに、あわせて聞かれることの多い4つに答えます。

オウンドメディアは何PVから広告収入が見込めますか?

広告収入が見込めるPVの目安は、一次情報として公表されていません。収益はPVを1,000で割ってRPMを掛けた額ですが、そのRPMは収益をPVで割って出す数字なので、事前には決まらないためです。1か月出して自分のRPMを実測し、そこから必要なPVを逆算してください。

自社メディアの広告枠はどうやって営業しますか?

自社メディアの広告営業とは、純広告やタイアップの掲載枠を広告主へ直接、または代理店経由で売る活動です。この領域は非入札の固定価格で取引されるため、単価を自分で提示できます。その代わり、読者層のデータと掲載実績を資料にまとめる工数が、記事制作とは別に必要になります。

オウンドメディアを事業と呼べるのはどんな状態ですか?

オウンドメディアが事業と呼べるのは、収益地点と単価が決まっていて、月次で金額を報告できる状態です。PVとセッションしか報告できないうちは、まだ費用の側にしか数字がありません。当社も収益地点を数えるまで、出口が14ページしかないことに気づいていませんでした。

マネタイズはいつから始めればよいですか?

マネタイズの設計は、記事を書き始める前に着手するのが基本です。成果単価が決まらないと必要なPVも本数も逆算できず、当社も単価が未確定のまま記事だけを積み上げてしまいました。回収できたかどうかの判定はSEO対策の費用対効果の考え方が使えます。

まとめ

オウンドメディアのマネタイズは、型を選ぶ前に式へ数字を入れて決めます。広告収入はPVとRPM、アフィリエイトは4つの掛け算、記事広告は本数と単価、事業貢献型は受注単価からの逆算。単価の相場は一次情報として公表されていないので、入れる数字は自社の実測から取るしかありません。

まずは自社サイトの収益地点が何か所あるかを数えてみてください。式に入れる数字が1つでも空欄なら、それが次に測るものです。

逆に、成果地点の単価が半年たっても決まらない型、1ページ目に入った記事が増えない型は、続けても掛け算の答えが変わりません。そこが型を替える線になります。どの型を選ぶかは事業の段階や体制によって変わるので、迷うときはオウンドメディアの組み立てからご一緒に整理します。

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この記事を書いた人

株式会社街中文学 代表。DBSEO(データベース型SEO)・LLMO(AI検索最適化)・コンテンツマーケティングを専門に、東証上場企業や月間4,500万セッション級メディアのSEO支援を行ってきました。AIライティングSaaS「buncraft」を開発・運営。本メディアの全記事を執筆・監修しています。

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