オウンドメディアの目的は一覧では決まらない|絞る4つの軸

オウンドメディアの目的を決める会議の場面。ホワイトボードに書き出しながら2人が議論している様子

「うちもオウンドメディアをやろう」と決まったものの、目的の欄で手が止まっていませんか。オウンドメディアの目的として挙がる候補は、認知拡大・リード獲得・ブランディング・採用あたりでしょう。どれも並べられるのに決め手がなく、社内の声も割れたまま日付だけが過ぎていきます。

オウンドメディアの目的は、言葉を選んだ時点では決まっていません。その目的が達成できたかどうかを、どの数字で判断するのか。そこまで決めて、はじめて決まったと言えるのです。

月間4,500万セッション級のメディア支援に携わってきましたが、ここが曖昧なまま走り出した体制ほど、早い段階で更新が止まりやすくなります。この記事を読み終えるころには、自社の商材と体制から目的を1つに絞り、追う数字と追わない数字まで決められているはずです。私たち自身が自社メディアで下した判断も、失敗を含めてそのまま公開します。

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目次

先に結論:オウンドメディアの目的は数え方で決まる

まず最初に、結論からお伝えします。目的を決めるとは、「認知拡大」「リード獲得」といった言葉を選ぶ作業ではありません。達成できたと判断する数字を1つ決め、それ以外は判断に使わないと決めるところまでが、目的を決めるという作業です。

目的の候補を並べた記事はたくさんあります。認知の獲得、問い合わせの創出、ブランドの構築、採用の強化と、並んでいる選択肢はどれも間違いではありません。

ただ、候補を眺めても自社の目的は決まらなかった、という状態で行き詰まる担当者を何度も見てきました。行き詰まる理由ははっきりしています。選択肢の一覧には、自社がどれを選ぶべきかの判断材料が入っていないからです。

そこでこの記事では、目的の型を整理したうえで、3つのことを順に扱います。いま自社がどこで止まっているかによって、先に読む場所を変えてください。

いまの状態 先に読む見出し
社内で意見が割れて決まらない オウンドメディアの目的5類型と立場による違い
候補は絞れたが、決め手がない 自社の目的を1つに絞る4つの判断材料
目的は決めたが、報告する数字が決まらない 目的をKPIに落とすときは引き算から始める
始めたが、続くか不安がある 目的が機能していないサインと置き直し方

最後の「数字に落とす」で多くの企業がつまずきます。目的はブランドの構築だと言いながら、報告書に並ぶ数字はページビューだけ、という状態です。

この記事では、追う数字を足すのではなく、追わない数字を先に決めるという順序を提案します。私たち自身が自社メディアの運用でその順序に切り替えたので、判断の中身は具体例として本文に出しました。

オウンドメディアの目的5類型と立場による違い

オウンドメディアの目的は、大きく5つの型に分けられます。ここで型を並べる狙いは、選択肢を網羅することではありません。型ごとに「誰に向けるか」と「達成された状態」が違うことを先に確認しておくためです。

オウンドメディアの目的を型に整理するイメージ。付箋が並べて貼られたホワイトボード
目的の型 主に向ける相手 達成された状態 この型を選ぶと諦めるもの
認知の獲得 まだ自社を知らない層 社名や商品名で検索されるようになる 短期の問い合わせ件数
リードの獲得 課題を自覚している層 問い合わせや資料請求が発生する 読者数の伸び
信頼・専門性の証明 比較検討中の層 提案の場で「読んでいます」と言われる 本数と、数字での証明のしやすさ
採用 求職者と、その周囲 応募者が事業や社風を理解して来る 売上への直接の貢献
社内・既存顧客 従業員と、すでに取引のある顧客 社内で共通の言葉が使われはじめる 検索からの新規流入

右端の列を入れたのには理由があります。どの型にも、選んだ時点で諦めるものがあるからです。メリットだけを並べた比較では、社内で目的を決めきれません。

この5つを型として扱う根拠は2つあります。1つ目は、日本の業界団体が2010年に示した定義です。

日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が出した宣言を見てみます。オウンドメディアは「“所有”するメディアのこと。自社コーポレイトサイトやブランドサイトなど、企業が直接所有するメディアを指す。」と説明されています。

集客用のブログに限った言葉ではありませんでした。

2つ目は、業界が実際に使っている分類です。コンテンツマーケティング・グランプリという表彰を見てみます。選考の対象は「マーケティング(集客・育成・成約)・ブランディング(広報)・人材採用・社内教育・社内報を目的とするオウンドメディア、または、SNSの企業ページ/アカウント/チャネル」と定義されています。

2026年3月に発表された2025年の受賞作には、社員の家族まで読者に想定した社内報や、毎週配信の音声コンテンツが並びました。オウンドメディアは検索対策のブログだけを指す言葉ではない、ということが受賞の顔ぶれからも読み取れます。

そして、型が整理できても社内の合意はすぐには取れません。立場によって、期待する目的の順位が入れ替わるからです。後半の3つでは、その差が調査データにどう表れているかを見ていきます。

認知の獲得とリード獲得は別の目的

最も混同されやすいのが、この2つです。どちらも「新しいお客様につながる」という点では同じ方向を向いているので、ひとまとめに語られがちになります。実際には、書くべき記事も、成果が出るまでの時間も別物です。

規模の大きな調査でも、この2つは別の成果として扱われています。Content Marketing InstituteとMarketingProfsは、北米を中心にB2B企業のマーケターへ年次調査を行いました。

2024年6月から8月に実施された2025年版の設問を見てみます。回答者980人に、過去12か月でコンテンツマーケティングが自社にもたらしたものを複数回答で尋ねたものです。

ブランド認知の創出が87%で最も多く、需要創出とリード獲得が74%、見込み客の育成が62%と続きます。売上・収益の創出は49%でした。

並び方に注目してください。上流の成果ほど挙げた人が多く、売上に近づくほど減っています。認知は記事が読まれれば積み上がりますが、リードは記事の内容と受け皿の設計がかみ合わないと生まれません。

同じメディアでも、目的をどちらに置くかで「うまくいっている」の基準が変わるということです。この調査は北米が中心なので、日本企業にそのまま当てはまる数字ではない点は補足しておきます。

採用を目的にすると測る対象が変わる

採用を目的に置いた場合、追いかける相手が求職者に変わります。人材採用サービスを提供するTalentXは、2024年1月に採用担当者への調査を実施しました。従業員30人以上の企業で採用に関わる人事・経営者640人のうち、57.9%が採用向けのオウンドメディアを運用していると回答しています。

この調査で興味深いのは、目的の順位です。1位は自社の認知度向上で59.5%、2位が競合との差別化で51.4%、そしてエントリー数の増加は48.3%で3位でした。応募者を増やすことよりも、知ってもらうことと違いを伝えることが上に来ています。

順位が示しているのは、採用メディアが応募ボタンを押させるための装置ではないという理解です。応募を検討している人は、選考中も内定後も同じメディアを読み返します。

入社後のミスマッチを減らす役割まで含めると、記事数やページビューではなく、対象となる母集団にどれだけ届いたかが見るべき対象になります。同じ調査では、運営の課題として「マーケティングノウハウがない」が51.9%で最も多く挙がりました。

社内向け・既存顧客向けという5つ目の型

見落とされがちなのが、社外の新規顧客ではなく、社内の従業員やすでに取引のある顧客に向ける型です。先ほどのContent Marketing Instituteの調査でも、既存顧客とのロイヤルティ向上を成果に挙げた人は52%いました。新規の獲得だけがオウンドメディアの成果ではありません。

先ほどのコンテンツマーケティング・グランプリが、選考対象に社内報を明記していることも、その裏づけの1つです。2025年のブランドコンテンツ部門でグランプリを獲得したのは、社員の家族までを読者に想定した社内報でした。

読者を社内に置いても、メディアとして評価される水準のものが作られているということになります。この型を選ぶときには、注意したい点が1つあります。

社内向けの成果は、検索やアクセス解析の数字にはほとんど出てきません。読まれたかどうかは、社内で記事の話題が出るか、営業が商談で使うか、といった観察でしか掴めない場面が多くなります。

数字で追えないから価値が低いわけではなく、追い方が違うだけです。目的をここに置くなら、報告のしかたも最初に設計しておいてください。

マーケティング視点の調査で上位に来る目的

運用担当者に目的を尋ねた調査では、上位を商品やサービスに紐づいた目的が占めます。数字で確認してみます。

全研本社が2022年12月に実施し、2023年4月に公表した調査です。オウンドメディアを運用している、または運用したことがある会社員300人に、運営目的を複数回答で尋ねました。

結果は、商品・サービス理解の促進が56.0%で最多、商品・サービスの認知向上が55.7%、問い合わせなどのリード獲得が45.3%と続きます。自社の認知向上が43.7%、商品・サービスのブランディングが42.7%でした。

公表資料も、認知や理解の促進、ブランディング、リード獲得など複数の目的で運営されているとまとめています。そのうえで上位2項目を見ると、どちらも商品やサービスに紐づいた目的でした。

この並びは、いわゆるマーケティング部門の関心の順序に近いものです。商品を知ってもらい、理解してもらい、問い合わせにつなげる。オウンドメディアを商談の導線の一部として捉えると、この順序になります。

ただし調査時点は2022年12月なので、いまから3年半以上前の状況である点は差し引いて読んでください。

広報視点の調査では企業イメージ向上が76.7%

ところが広報担当者に聞いた調査では、企業イメージの向上が突出して上位に来ます。『広報会議』編集部が2024年3月29日から4月11日にかけて実施した調査です。回答したのは、自社でオウンドメディアを運用している、または更新が止まっていると答えた広報・オウンドメディア担当者117人でした。

この調査で効果を感じているものとして挙がった上位3項目を見てみます。企業イメージ向上・ブランディングが76.7%、採用の強化が52.4%、社内コミュニケーションが51.5%でした。先ほどの調査で上位を占めた商品・サービス関連の項目は、ここでは前面に出てきません。

ここで1つ、注意しておきたいことがあります。2つの調査は設問が違います。前者は「運営目的」を、後者は「効果を感じているもの」を尋ねたものです。

数字を横に並べて優劣を論じられる関係ではありません。それでも、回答者の職種が変わると上位に来る項目がこれだけ入れ替わるという事実は、社内の合意形成を考えるうえで無視できないと考えています。なお後者は回答者117人と小規模な調査です。

社内で目的が割れるのは立場が違うから

2つの調査の差は、そのまま社内会議で起きることの縮図です。マーケティング部門は問い合わせの件数を期待し、広報部門は企業イメージの向上を期待します。人事は採用への貢献を、経営陣は売上への寄与を求めます。

全員が正しいことを言っているので、話し合いだけでは決着しません。この状態を、担当者個人の調整力で解こうとすると消耗します。

参考になるのが、日本広報学会が2023年6月に公表した広報の定義です。同学会は広報を「組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。」と定めました。

同学会が定義策定の特徴として挙げた点の1つが、広報の目的を関係の構築や維持そのものではなく、組織の目的達成や課題解決に置いたことです。この考え方をオウンドメディアに当てはめると、判断の順序が変わります。

各部署の要望を足し合わせるのではなく、いま会社が抱えている課題のうち、メディアで解けるものはどれかから逆算するという順序です。問い合わせが足りないのか、応募が集まらないのか、それとも商談で信頼を得るまでに時間がかかりすぎているのか。課題が1つに絞れれば、目的も自然に1つに寄ります。

自社の目的を1つに絞る4つの判断材料

ここからが本題です。目的を絞るために見るべきものは、社内の声の大きさではありません。自社の商売の形と、いま持っている手駒です。

これを4つの材料に分けて確認します。3つで選択肢が絞られ、4つ目で社内の合意を取る流れです。まず、判断の材料を1枚にまとめました。

目的を1つに絞る判断の場面。壁に貼った資料を指しながら検討している様子

自社に当てはまる行を探して、右の列を見てください。複数の行に当てはまる場合は、いま最も困っている課題の行を優先します。

自社の状況 目的が寄る先
商材が高単価で、検討に数か月かかる 信頼・専門性の証明
商材が低単価で、その場で判断される 認知の獲得
広告ですでに問い合わせは取れている 信頼・専門性の証明、または採用
記事を書ける人が社内にいない 本数を必要としない型に寄せる
応募が集まらない、内定辞退が多い 採用
既存顧客の離反や、社内の認識のずれが課題 社内・既存顧客

商材の単価と検討期間から逆算する

最初に確認するのは、自社の商材がどう買われているかです。数百万円の支援サービスと、数千円の消耗品では、読者が記事に求めるものがまったく違います。

検討に数か月かかる商材の場合、購入を決めるのは記事を読んだ直後ではありません。社内で稟議を通し、他社と比較し、担当者に会ってから決まります。

この流れで効くのは、読まれた回数よりも「この会社は分かっている」と思わせる密度のほうです。目的を信頼や専門性の証明に置くと、1本あたりの深さに投資する判断がしやすくなります。

反対に、その場で判断される商材なら、触れる人の数が効きます。目的を認知の獲得に置き、幅広いテーマで本数を積むほうが合理的です。

ここで押さえておきたいのは、どちらが優れているかという話ではない点になります。1本にどこまで投資するかは、そのテーマが自社の資産として残るかどうかで決まります。単価と検討期間は、その判断をいちばん早く教えてくれる情報です。

社内に書ける人がいるかで選択肢が変わる

次に見るのは、書き続けられる体制があるかどうかです。理想の目的を掲げても、書く人がいなければ更新は止まります。これは精神論ではなく、実際に最も多い停止理由です。

先ほどの全研本社の調査では、運営が止まっている81人にその理由を尋ねています。最も多かったのは、自社の運営担当者がいなくなり運用するリソースがなくなったという理由で54.3%でした。

次いでSEO対策がうまくいかなかったが35.8%、リード獲得数が少なかったが33.3%と続きます。成果が出なかったことよりも、人がいなくなったことのほうが多く挙がっているという結果でした。

この事実は、目的の選び方にそのまま跳ね返ります。認知の獲得を目的に置くと、幅広いテーマで一定の本数が必要です。月に1本しか書けない体制でこの目的を選ぶと、成果が出る前にリソースが尽きます。

書ける人が限られているなら、本数ではなく深さで戦える型を選ぶほうが現実的です。体制から目的を選ぶのは妥協ではなく、続けるための設計だと考えています。

既存チャネルの空白から目的を置く

3つ目の材料は、いま動いている集客手段との重なりです。すでに広告で問い合わせが安定して取れているなら、メディアの目的も問い合わせに置くと、成果がどちらの貢献か分からなくなります。

この場合は、広告では届かない部分に目的を置くほうが評価しやすくなります。たとえば、広告をクリックした人が最後に社名を検索したときに何を見るか。あるいは、営業が訪問する前に相手が会社を調べたときに何が出てくるか。

広告が触れられない場面を先に洗い出すと、メディアの役割が具体的になります。逆に、あえて取りにいかないと決めることも判断のうちです。私たちも主力商品の1つは、2026年6月時点で検索需要が測定できる水準になかったため、検索集客では取らないと決めました。

目的を1つに絞ると、絞られなかった商品の集客をどこに置き直すかまで決まります。

主目的と副次目的を分けて合意を取る

最後は、社内の合意の取り方です。目的は1つに絞るべきですが、他部署の期待を切り捨てる必要はありません。

判断に使う目的を1つに決め、それ以外は「達成されたら嬉しいが、続けるかどうかの判断には使わない」と明示するやり方が現実的です。この線引きをしておくと、半年後の会議で揉めなくなります。

応募が増えなかったからやめよう、という議論が出たときに、主目的が信頼の証明であれば判断材料が違うと言えるからです。逆に、線引きをしていないと、そのときに声の大きい人の指標で評価されます。

目的の解像度が上がると、着手する順番も変わります。私たちは2026年6月に自社メディアの役割を、高単価の顧客に向けた信頼資産と営業の受け皿という位置づけに定め直しました。

そのとき最初に作ったのは記事ではありません。無料診断のページ、サービス内容を説明するページ3種類、運営者のプロフィール、そこへ至る導線でした。記事から問い合わせ窓口までを2段構えにして、どの入口から来たのかを判別できるようにしています。

すでに記事が175本ある状態だったからこの順番になった面はありますが、目的が決まっていれば、最初に作るものは記事とは限らないという例です。

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目的をKPIに落とすときは引き算から始める

目的が決まったら、次はそれをどう数えるかです。達成できたかを判断するための数字、いわゆるKPIを決める工程になります。

ここで多くの企業がやるのは、追う指標を足していく作業でした。セッション数、ページビュー、検索順位、資料のダウンロード数、SNSのフォロワー数と、どれも取得できるのでレポートに並べたくなります。

私たちが勧めるのは、逆の順序です。取得できる数字のうち、目的に届かないものを先に外すところから始めてください。

この章では、その引き算をどう判断するかを、自社の意思決定をそのまま開示しながら説明します。

オウンドメディアのKPIを検討する場面。棒グラフと円グラフが印刷された資料

数えられる数字を全部KPIにしない

目的と指標がずれている状態は、実際によく起きています。宣伝会議が2021年4月から5月に実施した調査では、広報会議の購読者などマーケティング・広報に関わる80人が回答しました。

オウンドメディアに期待する役割として最も多く挙がったのは、企業イメージの向上・企業ブランディングです。ところが、同じ調査でKPIとして最も多く設定されていたのはページビューでした。

回答者80人と小規模な調査ですが、目的とものさしが噛み合っていない状態を示す結果になっています。ブランドが伝わったかどうかは、ページビューでは分かりません。

それでもページビューが選ばれるのは、取得が簡単で、増減が分かりやすいからです。目的から選んだ指標ではなく、取れるから並べただけの指標になっている状態は、数字を見るための数字が増えていくだけになります。

私たちも自社メディアで同じことをしていました。自社が提供している無料ツールの登録数は、管理画面ですぐに見られます。数えられるので、当然のように目標に入れていました。

2026年6月の方針転換で、この指標は目標から外しています。ただ、外すと決めた瞬間よりも、そのあとのほうが大事でした。翌月にまとめた戦略資料に「やらないこと」という欄をわざわざ作り、登録数を目標にしないと書き残しています。

口頭で外したつもりでも、次に数字を並べる場面で戻ってくるからです。外した指標は、外した理由ごと書いて残さないと復活します。

そのうえで、受注に直結する指標は診断・相談・資料ダウンロードの件数に絞りました。登録が増えても、私たちが受けたい相談が増えるとは限らなかったからです。

今泉の視点:私は提案の場でも、まず「外す指標」から相談するようにしています。追う指標を足す話は誰も反対しないので簡単に決まりますが、外す話は目的が曖昧なままだと決まりません。

逆に言えば、外す指標を1つ決められた時点で、その会社の目的は言葉ではなく運用のレベルで決まったと判断しています。ここが決まらないうちに記事の本数や公開スケジュールの話へ進むと、半年後に「で、これは何のためだったか」に戻ってきます。

目的に届かない指標は追わないと決める

引き算の対象になるのは、数字が小さい指標とは限りません。数字が大きくても、目的に届かないなら外します。ここが引き算のいちばん難しいところです。

自社メディアでの例を挙げます。私たちのメディアには、ホームページ制作に関するテーマの記事が39本あります。この39本は検索での表示回数を稼いでいる主力でした。

数字だけを見れば、いちばん手を入れる価値がありそうに見えます。それでも、全面的な書き直しはしないと決めました。表示は多くても、私たちが受けたい相談からは遠いテーマだったからです。

この判断をするには、目的が言葉で決まっているだけでは足りません。「誰からの、どんな相談を増やしたいのか」まで具体化されている必要があります。そこまで決まっていれば、表示回数という魅力的な数字を前にしても、手を出さない判断ができます。

実務の判断基準としては、最終的に見る成果を1つから3つまでに絞るのが目安です。それ以上に増えると、どの数字が動いたときに何を変えるべきかが決まらなくなるためです。

残りの数字は、成果に至る途中経過として見るぶんには構いません。ただし、途中経過は目標にはしないという線引きを最初に引いておいてください。

同じ月でも見る数字で評価が逆転する

どの数字を目的に置くかで、まったく同じ期間の評価が逆になることがあります。自社メディアの実測値で説明します。

直近28日という同じ条件で、約1か月の間隔をあけて2回集計しました。結果は、サイト全体の訪問が減っている一方で、検索からの訪問だけが増えている状態です。

集計日 全体セッション 検索経由のセッション 公開記事数
2026年7月10日 593 190 175本
2026年8月6日 494 252 241本

全体で見れば約17%減った月であり、検索で見れば約33%増えた月です。同じ月の同じサイトを、逆の言葉で報告できてしまいます。

この2時点のあいだに記事を66本追加しているので、増減の要因を切り分けられてはいません。1つのサイトの28日間を2回測っただけの数字にすぎません。

それでも、目的を「検索から見つけてもらうこと」に置いていれば、前進した月として報告できます。「サイト全体の訪問数」に置いていれば、後退した月になります。この構図は変わりません。

だからこそ、目的とセットで見る数字を先に決めておいてください。結果を見てから都合のよい数字を選ぶと、その時点で報告は説明にすぎなくなります。先に決めておけば、数字が悪かった月も判断材料として使えるはずです。

目的が機能していないサインと置き直し方

目的は、決めた瞬間が完成ではありません。運用に入ってから、目的が実際に機能しているかを確かめてください。機能していない状態には、はっきりしたサインが出ます。

ここでは、そのサインを3つの角度から見ていきます。更新が止まる時期、社内での担当の置き方、そしてAI検索の広がりによって表面化する問題です。

目的が機能しているかを振り返る場面。数字が印刷された資料のクローズアップ
サイン 出ている状態 最初の一手
更新が止まりはじめる 公開の間隔が空き、下書きが溜まる 止まった理由が体制か成果かを切り分ける
数字を見る会議が消える 記事は出ているが振り返りの場がない 見る人と周期を先に決めて固定する
報告する数字に困る 環境が変わるたび評価軸が揺れる 目的を経路ではなく読者の役に立て方で置き直す

更新が止まった65.5%は半年以内だった

最初のサインは、更新の停滞です。これは想像以上に早く訪れます。

先ほどの全研本社の調査には、運営状況を尋ねた設問もあります。運用経験者300人のうち、7.7%が過去に運営していたが現在はしていないと回答しました。メディアは持っているが更新されていないという人も19.3%います。

あわせて4人に1人以上が、動いていない状態です。

さらに、更新しなくなるまでの期間を、更新が止まっていると答えた58人に尋ねています。1か月以内が5.2%、3か月以内が31.0%、半年以内が29.3%でした。この58人のうち65.5%が、開始から半年のうちに止まっています。

検索から人が来るまでにどれくらいかかるかは、サイトの状況によって幅があるものです。Googleが公開しているガイドでも、変更が反映される時間は数時間の場合もあれば数か月かかる場合もあるとされています。そのうえで、効果の評価は数週間待つのが一般的だと説明されています。

同じ調査では、停止の理由として成果不足を挙げた人も一定数いました。それでも半年以内という短さを考えると、成果が出たかどうかを判断しきる前に止まったケースが相当数含まれるはずです。

ここで目的が曖昧だと、続ける根拠が社内に残りません。

数字を見る工程が誰の担当かを決める

2つ目のサインは、数字を見る会議が開かれなくなることです。記事を書く工程は担当が決まっているのに、数字を見て次を決める工程は誰の担当でもない、という状態が起こります。

これは私たち自身が陥っていた状態でもあります。2026年7月に、自社メディアの流入が伸びない原因を洗い出しました。4つ目の原因として挙がったのが、計測から改善へのループがそれまで動いていなかったという事実です。

記事は継続的に公開されていたのに、数字を見て次の打ち手を決める工程が、誰の仕事にもなっていませんでした。対処として、隔週での分析と月次でのAI引用状況の観測という周期を先に決め、仕組みとして固定しています。

担当と周期を決めるだけで、目的は運用に効くようになります。反対に、ここが空いていると、どれだけ立派な目的を掲げても半年後に振り返る人がいません。

時点ごとに見る指標を切り替える考え方については、オウンドメディアマーケティングの記事で4週・8週・12週の区切り方を具体的に紹介しています。

AI検索は目的設定の甘さを露わにする

3つ目は、検索環境の変化によって表面化するサインです。生成AIによる検索が広がったことで、目的をアクセス数に置いていた企業ほど、説明に困る場面が増えています。

Hakuhodo DY ONEは2026年3月に『AI検索白書2026』を公表しました。2025年11月時点で、AI検索の利用率はプライベート用途で27.6%、ビジネス用途で29.9%と報告されています。前回2025年3月の調査では、それぞれ8.4%と9.4%でした。

同じ調査では、生成AIの回答だけで解決した人と追加でAIに質問した人を合わせて23.9%という数字も出ています。ただしこの白書は、公表資料に回答者数の記載がありません。傾向として読む必要があります。

一方で、逆の材料もあります。同じ白書では、生成AIの回答では不十分で従来型の検索に戻った人が32.8%と最も多くなりました。Googleも2025年8月に、オーガニック検索からサイトへ送るクリックの総量は前年比でおおむね横ばいだと説明しています。

ただしこちらはGoogle自身の集計で、根拠となる数値や算出方法は公表資料に示されていません。同じ発表のなかでGoogleは、流入の大幅な減少を指摘する第三者の調査に対して、手法に問題があると反論しています。どちらの立場に立っても断定できないというのが、2026年8月時点の正直な状況です。

この不確実さこそが、目的設定の甘さを露わにします。目的をアクセス数に置いていると、環境が変わるたびに評価軸が揺れます。

目的を「必要とする人に見つけてもらい、判断の材料になること」に置いていれば、経路が検索でもAIの回答でも扱いは変わりません。Googleが2026年7月に更新した生成AI向けの最適化ガイドも、この方向を支持しています。

同ガイドは、AI向けの専用ファイルや独自のマークアップといった特別な仕込みは不要だとしたうえで、独自の視点を持つことを求めました。自分の体験にもとづくレビューと、すでにある情報を言い換えただけの要約とを対比しています。ネット上で他が言っていることの焼き直しはしないように、とも書かれています。

目的を置き直すなら、経路ではなく誰にどう役立つかを軸にするのが、いまのところ最も揺れにくい選び方です。

オウンドメディアの目的についてよくある質問

ここまでの内容に関連して、相談の場でよく受ける質問をまとめました。

オウンドメディアの目的は複数あってもよいですか?

判断に使う目的は1つに絞るのが基本です。ただし、他の目的を捨てる必要はありません。続けるかどうかの判断に使う主目的を1つ決め、それ以外は達成されたら望ましい副次目的として分けておくと、社内で評価の基準が揺れにくくなります。

目的を決めないまま始めてしまった場合はどうすればよいですか?

公開済みの記事を読み返すところから始めます。すでに書いたテーマの傾向が、社内が実際に向いていた方向を表しているためです。そのうえで、いま最も困っている事業課題と照らし合わせて目的を置き直し、あわせて追わない指標を1つ決めてください。

採用を目的にする場合、まず何から決めればよいですか?

最初に決めるのは応募者数ではなく、誰に何を理解したうえで応募してほしいかです。調査でも、採用向けメディアの目的として自社の認知度向上や競合との差別化が、エントリー数の増加より上位に挙がっています。伝えたい人物像が固まると、書くテーマも決まります。

オウンドメディアの目的は、どのタイミングで見直せばよいですか?

事業の課題が変わったときが基本です。時期の目安は公開から半年で、全研本社が2022年12月に実施した調査では、更新が止まっていると答えた58人のうち65.5%が半年以内に止まっていました。その手前で振り返りの周期を決めておくと、判断材料が残った状態で見直せます。

まとめ

オウンドメディアの目的は、社内の声を足し合わせても決まりません。見るのは4つです。商材の単価と検討期間、書ける人がいるか、既存の集客手段との重なりで選択肢が絞られ、4つ目に主目的と副次目的を切り分ければ社内の合意も取れます。

そして目的を決めたら、追う数字を足す前に、追わない数字を1つ決めてください。それができた時点で、目的は言葉ではなく運用のレベルで決まります。

  • 「自社は○○のためにやる」を1行で書き出す
  • 判断に使う数字を1つから3つまで決める
  • 目標にしない指標を1つ、理由ごと書き残す
  • 数字を見る担当者と周期をその場で決める

まずはこの4行を埋めるところから始めてみてください。全体像から確認したい場合はオウンドメディアの完全ガイドもあわせてご覧ください。目的の置き方や指標の絞り込みで迷われている場合は、私たちへの相談もお受けしています。

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この記事を書いた人

株式会社街中文学 代表。DBSEO(データベース型SEO)・LLMO(AI検索最適化)・コンテンツマーケティングを専門に、東証上場企業や月間4,500万セッション級メディアのSEO支援を行ってきました。AIライティングSaaS「buncraft」を開発・運営。本メディアの全記事を執筆・監修しています。

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