コンテンツとは?意味と種類を法律と公的統計の定義から整理

コンテンツとは何かを調べる場面。開いた辞書のページ

「コンテンツを強化しよう」と言われたものの、何を作ればいいのか決まらないまま手が止まる。会議で相手が言うコンテンツと、自分が思い浮かべているものが違う気がする。こうした引っかかりは、コンテンツとは何を指すのかという範囲が、人によってばらばらなまま話が進むために起きます。

結論からお伝えすると、コンテンツとは受け手に向けて表現された中身のことです。ただし実務で効いてくるのは意味の暗記ではなく、何がそれに当たり、何が当たらないかを自分で線引きできることでした。

この記事では、法律の条文と公的な統計が実際に引いている線を手がかりに、その判断の仕方をお伝えします。読み終えるころには、社内で「うちの言うコンテンツはここまで」と範囲を区切って説明できるはずです。

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目次

先に結論:コンテンツとは表現された中身のこと

まず最初に、結論からお伝えします。コンテンツとは、受け手に向けて表現された中身そのものを指す言葉です。

英語のcontentは、もともと「入れ物に収められているもの」を意味します。本・テレビ・スマートフォンといった入れ物があり、その中に入っている文章や映像や音声が中身にあたる、という関係です。

日本には、この言葉を定義した法律もあります。2004年に施行された「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」です。

この法律は、映画・音楽・漫画・ゲームなどを挙げたうえで、人間の創造的活動によって生み出され、教養または娯楽の範囲に属するものをコンテンツと定めました。

もっとも、仕事の場で困るのは意味そのものではなく、範囲のほうでしょう。「コンテンツを強化しよう」と言われたとき、記事なのか、動画なのか、営業資料まで含むのかで、やることがまるで変わってしまいます。

この記事は、その範囲を自分で線引きできるようになることを目指して書きました。知りたいことに応じて、次の順にお読みください。

知りたいこと 読む章
言葉の意味と成り立ちを知りたい コンテンツの意味を3つの層で理解する
どんな種類があるのか具体例がほしい コンテンツの種類は分ける目的で変わる
自社の何がコンテンツか線引きしたい/記事・情報・作品との違いを説明したい コンテンツの範囲を決める5つの物差し
仕事でどう扱えばよいか知りたい ビジネスでコンテンツを扱うときの3つの視点

コンテンツの意味を3つの層で理解する

コンテンツという言葉は、3つの層に分けて見ると輪郭がはっきりします。英語としての原義、日本語に入ってきてからの変化、そして日本の法律が与えた定義の3つです。

順番に見ていくと、「なぜこの言葉はこんなに広い意味で使われるのか」という疑問にも答えが出ます。もともと広い言葉が、時代ごとに指す対象を増やしてきた結果だからです。

英語のcontentは中身を指す言葉

英語のcontentは、ラテン語のcontinereにさかのぼります。com-(一緒に)とtenere(保つ)が組み合わさった語で、「一緒に保つ、囲む」という意味です。そこから生まれたcontentusは「含まれた」を表します。

この流れを受けて、英語では15世紀初頭から、複数形のcontentsが「中に含まれているもの」を指す名詞として使われてきました。語源をたどると、コンテンツという言葉には最初から入れ物とその中身という対の関係が組み込まれていることが分かります。

この対の関係は、いまも生きています。マーケティングの世界で使うメディアという言葉は、もともと「媒体」つまり情報を運ぶ入れ物のことでした。テレビ、雑誌、Webサイトはいずれも入れ物であり、そこに載っている番組・記事・動画が中身、すなわちコンテンツにあたります。

器と中身は切り離せませんが、同じものではありません。自社のオウンドメディアという器を用意しても、中に入れる記事がなければ何も起きない、という当たり前の話が、語源の段階ですでに示されているわけです。

なお「コンテンツという言葉はインターネットの普及とともに生まれた」という説明を見かけることがあります。しかし語源辞典をたどるかぎり、その裏付けは取れません。新しいのは言葉ではなく、その言葉が指す対象のほうでした。

日本語の辞書には1919年から載っている

日本語としてのコンテンツも、意外なほど古くから記録されています。精選版 日本国語大辞典は、この語をこう説明しています。

内容。中身。特に、書籍の内容の目次。

そして最も古い用例の出典として挙げられているのが、1919年(大正8年)に出た『現代新語辞典』です。100年以上前の日本の辞書に、すでにこの言葉が載っていたことになります。

語釈の中心は「内容。中身。」であり、そこに「特に、書籍の内容の目次」という補足が付く形です。当時から、中身という広い意味と、本の目次という具体的な用法の両方で記録されていたわけです。

現代の辞書と比べると、意味がどう広がったかがはっきり見えます。デジタル大辞泉がこの語に与えている語釈は4つです。

語釈 指しているもの
内容物。容器や郵便物などの中身。 物理的な中身
書籍の目次。 本の目次
教育や娯楽などのためにつくられる、さまざまな表現活動の内容。 作品・表現物
インターネットなどの情報サービスにおいて、提供される文書・音声・映像などの個々の情報。 デジタルの情報単位

前半2つと後半2つのあいだには、明らかな断絶があります。前半は入れ物の中身という素朴な意味であり、後半は人が作り出した表現物そのものを指しています。

会話がかみ合わなくなるのは、この4つのどれを指しているかが人によって違うためでした。「コンテンツが足りない」と言う上司は3番目を、企画書を書く担当者は4番目を思い浮かべている、といったずれが日常的に起きています。

法律が定めるコンテンツの3つの要件

コンテンツという言葉には、日本の法律による定義もあります。2004年に公布・施行された「コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律」です。コンテンツ基本法、コンテンツ振興法など複数の呼び名で紹介されており、e-Gov法令検索が登録している略称はコンテンツ促進法です。

その第2条第1項が、コンテンツをこう定義しました。

この法律において「コンテンツ」とは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームその他の文字、図形、色彩、音声、動作若しくは映像若しくはこれらを組み合わせたもの又はこれらに係る情報を電子計算機を介して提供するためのプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わせたものをいう。)であって、人間の創造的活動により生み出されるもののうち、教養又は娯楽の範囲に属するものをいう。

一読して長い条文ですが、分解すると3つの要件でできています。

要件 条文が求めていること
形式 文字・図形・色彩・音声・動作・映像、またはその組み合わせ。それらを提供するプログラムも含む
創作 人間の創造的活動により生み出されたものであること
範囲 教養または娯楽の範囲に属すること

この3つを満たすものが、法律上のコンテンツです。逆に言えば、人が創造的に作ったものでなければ、また教養や娯楽の範囲に入らなければ、この法律の言うコンテンツには当たりません

「教養又は娯楽の範囲」という一言は、実務でも効いてきます。純粋な学術論文や、社内の業務マニュアルのようなものは、この定義からは外れやすいわけです。

出典はe-Gov法令検索に掲載されている条文です。

定義は2004年から変わっていない

もう1つ、押さえておきたい事実があります。この第2条の定義は、2004年の制定から一度も改正されていません。

衆議院が公開している公布時の原文と、現行の条文を突き合わせると、第2条は完全に一致します。一方で第3条第3項は改正されており、引用されている他の法律の名前が入れ替わりました。

第3条第3項が挙げる法律
2004年の制定時 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法、文化芸術振興基本法、消費者基本法
現行 デジタル社会形成基本法、文化芸術基本法、消費者基本法

周辺の法律は時代に合わせて作り替えられたのに、コンテンツの定義そのものは動いていません。スマートフォンも動画配信サービスも生成AIも無かった時代の言葉が、そのまま使われ続けているわけです。

この事実は、いま議論になっている論点にもつながります。条文には「人間の創造的活動により生み出されるもの」という文言があり、生成AIが作ったものをどう扱うのかが気になるところでしょう。

ただし、この条文は生成AIを想定して書かれたものではありません。2004年当時の文言が残っているだけであり、法律がAI生成物について答えを出しているわけではない点には注意してください。

制定時の条文は衆議院の制定法律情報で確認できます。

コンテンツの種類は分ける目的で変わる

コンテンツの種類を調べると、「デジタルコンテンツ」「Webコンテンツ」「モバイルコンテンツ」といった言葉が並んだ一覧に行き当たります。しかし、それらを覚えても実務ではあまり役に立ちません。

大事なのは分類の名前ではなく、何のために分けているのかという軸のほうです。同じ総務省の資料でも、市場規模を測るときと利用実態を測るときで分け方が変わります。軸を意識すると、自社に必要な分け方を自分で選べるようになります。

コンテンツの種類を分類するイメージ。木製のテーブルに重ねて置かれたカードの束

デジタルコンテンツ、Webコンテンツ……名前は聞くけれど、結局どう使い分ければいいのだろう。

市場統計は映像・音声・テキストの3分類

日本のコンテンツ市場を測る公的な統計は、総務省情報通信政策研究所の調査です。この調査はコンテンツを映像系ソフト・音声系ソフト・テキスト系ソフトの3つに分けています。

2026年7月に公表された令和8年版の情報通信白書によれば、2024年の日本のコンテンツ市場規模は12兆9,958億円でした。内訳は次のとおりです。

ソフト形態 市場規模 構成比
映像系ソフト 7兆5,186億円 57.9%
テキスト系ソフト 4兆5,302億円 34.9%
音声系ソフト 9,470億円 7.3%
合計 12兆9,958億円 100%

映像系が6割近くを占めますが、テキスト系も3割以上あります。文字で作るものが時代遅れになっているわけではない、という数字です。

なお、この市場規模は前年から増えており、報告書が推移を示している2020年以降では最も大きい数字です。1つ前の白書に載っている2023年の12兆5,833億円と混同しやすいので、比べるときは年をそろえてください。

出典は総務省『令和8年版 情報通信白書』第Ⅱ部第1章第3節です。

ゲームが映像系に分類される理由

この3分類を見ると、直感に反する点に気づきます。ゲームソフトは映像系、コミックはテキスト系に入っているのです。ゲームは操作するものですし、漫画は絵が中心ではないか、と思われるかもしれません。

種明かしをすると、この調査の分類は2段階でできています。報告書はこう説明しています。

本調査では、まず、メディア・ソフトを、ソフトが一次流通するメディアによって分類する。例えば、テレビ放送が一次流通であるソフトは「テレビ番組」、劇場上映が一次流通であるソフトは「映画ソフト」、新聞が一次流通であるソフトは「新聞記事」として分類する。

これが1段階目です。どの経路で最初に世に出るかで、ソフトの名前が決まります。報告書は続けて、2段階目をこう書いていました。

次に、こうして分類したメディア・ソフトを、情報の性質に従って、「映像系ソフト」、「音声系ソフト」、「テキスト系ソフト」の三つに大きくグループ化する。

2段階目でようやく、情報の性質を見て3つにまとめる作業が入ります。

ゲームについては、報告書が理由をはっきり書いていました。

ゲームソフトについては、その情報ソフトとしての価値は、主としてその映像に由来すると考えられることから、映像系ソフトに区分する。

操作して遊ぶものであっても、価値がどこから来ているかで見れば映像だという判断です。納得できるかどうかは別として、基準は明示されています。

ここから引き出せる教訓は1つです。分類には必ず基準があり、基準を確かめずに名前だけ覚えても実務では使えないということでした。自社でコンテンツを整理するときも、まず「何を基準に分けるのか」を先に決めてください。

利用時間の統計では分け方が違う

実際、同じ総務省でも別の調査では別の分け方をしています。人々がメディアにどれだけ時間を使ったかを測る調査では、インターネット利用の各項目を動画系・テキスト系・コミュニケーション系の3つに分類しているのです。

市場規模の調査には無かった「コミュニケーション系」が登場します。個人同士のやりとりそのものは売買される商品ではありませんが、人の時間は確実に使っています。測りたいものが変われば、必要な区分も変わるという実例です。

この調査の数字も見ておきましょう。令和7年度の調査では、動画系メディアの平日の平均利用時間は、テレビ系動画が170.5分、ネット系動画が77.1分でした。全年代を平均すると、テレビ系が2倍以上を保っています。

ところが年代別に見ると、様子が変わります。10代から30代では、平日・休日ともにネット系動画の利用時間がテレビ系動画を超えていました。同じ動画でも、届く経路が世代で入れ替わっているわけです。

「若い層にはネット動画を」という判断は、この種のデータを見てから決めると根拠のある話になります。

出典は総務省情報通信政策研究所『令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査』で、2025年12月に13歳から79歳の1,800人を対象に実施されたものです。

法律の世界には、また別の分け方があります。著作権法第10条が挙げているのは、著作物の例としての9種類でした。

著作物の種類
小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
音楽の著作物
舞踊又は無言劇の著作物
絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
建築の著作物
地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
映画の著作物
写真の著作物
プログラムの著作物

市場統計の3分類とはまったく違う切り方になっています。理由は目的の違いです。統計は産業の規模を測るために分け、著作権法は誰にどんな権利が発生するかを決めるために分けています

建築が入っているのは、建物のデザインにも権利が生じるからです。一方の産業統計は、メディアを通じて流通するソフトを数える調査ですから、建築はそもそも集計する品目に入っていません。

条文はe-Gov法令検索の著作権法で読めます。

検索結果には作り手の違うものが並ぶ

もう1つ、実務で見落とされがちな軸があります。誰が作ったかという軸です。

当社は2026年8月5日、「ホームページ作成 詐欺」という検索語で、結果に並んだページの構造を調べました。検索順位を取得する外部サービスを使い、1件ずつ何であるかを確認しています。

取得できた自然検索は、自社のページを含めて9件でした。自社を除く8件の内訳が、次のとおりです。

並んでいたもの 件数
制作会社や比較メディアの解説記事 4件
法律相談のQ&Aサイトへの投稿 2件
個人ブログの体験談 1件
匿名で投稿できるQ&Aサイト 1件

8件のうち4件、ちょうど半分が、企業ではなく当事者本人の相談や体験でした。作り手で見れば、個人が書いたものと企業が書いたものが同じ数だけ並んでいたことになります。

この検索語に特有の傾向である可能性は残ります。困りごとを相談したい人が集まるテーマですから、当事者の声が上位に来やすい面はあるでしょう。それでも、コンテンツという言葉が指す範囲は、企業が予算をかけて作るものだけではないという事実は動きません。

自社の記事を並べる場所には、個人の体験談も、Q&Aへの投稿も同時に並びます。分類を考えるときは、この「作り手の違い」も一度は視野に入れておいてください。

記事1本の中にも複数の形式が同居する

ここまでは、コンテンツを外側から分類してきました。最後に、1本のコンテンツの内側も見ておきます。

当社は2026年8月5日、自社メディアで公開している239本すべての本文を機械的に解析し、中に入っている要素を数えました。表・装飾された囲み・吹き出し・手順のブロック・質問と回答・装飾リストが対象です。

数えたもの 1記事あたりの数
視覚的な要素の合計 中央値17個(最小5個・最大35個)
装飾リスト 平均5.10個
質問と回答 平均5.05個
装飾された囲み 平均4.35個
平均2.64個
吹き出し 平均1.69個
画像(合計とは別に集計) 平均4.89枚

記事1本は、文章がひとかたまりで入っているわけではありませんでした。1本の中に、文章・表・画像・質問と回答という性格の違うものが同居しています。

この解析には、はっきりした限界もあります。数えたのは個数だけで、1つ1つの出来栄えは測っていません。同じ編集方針で作った自社サイト内での比較であり、他社のサイトと比べたものでもないのです。

それでも、種類の分類表を眺めるときの見方は変わるはずです。テキスト・画像・動画・音声という区分は、コンテンツ1本ごとに割り振られるラベルというより、1本の中で組み合わせて使う材料の名前だと考えるほうが実態に合っています。

「うちは記事だけです」と考えている企業でも、実際には画像も表も作っているわけです。分類の軸を選ぶときは、1本の内側にも複数の形式があることを思い出してください。

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コンテンツの範囲を決める5つの物差し

言葉の意味をつかむには、当てはまるものを並べるより、当てはまらないものを見るほうが早いことがあります。コンテンツはまさにその典型でした。何でもコンテンツと呼べてしまう状況では、範囲が決まらないからです。

ありがたいことに、公的な調査や法律は「これは対象にしない」という線をはっきり引いてくれています。似た言葉との違いも、それぞれの定義を並べるだけで見えてきました。実務で使える物差しを5つ、順に見ていきましょう。

コンテンツの範囲を線引きする場面。白い紙に手書きで書き込んでいる手元

表計算ソフトがコンテンツでない理由

総務省のメディア・ソフト調査は、調査の対象外とするものを明記しています。そのうちの1つがこれです。

乗換案内、宿泊予約といった検索サービスや表計算ソフトなど動作や機能に価値が認められるものであって、ソフトそのものの表現内容に価値が認められないもの

ここに、非常に使いやすい判断軸が示されました。価値が「表現された中身」にあるのか、「動作や機能」にあるのかという軸です。

表計算ソフトの価値は、計算してくれること、集計してくれることにあります。画面のデザインが美しいから買うわけではありません。だから、この調査では対象から外されています。コンテンツというより、ツールと呼んだほうがしっくりくるものです。

ただし、この線には但し書きも付いていました。原典の脚注には、検索の目的がコンテンツの検索に連動するもの、つまり検索エンジンのようなサービスは調査対象に含める、と書かれています。機能の側に見えるものが一律に外されるわけではありません。

一方で小説やアニメは、動作しません。読んだり見たりした内容そのものに価値があります。この違いが、コンテンツとツールを分ける線になっています。

身近な例で言えば、自社サイトに付けた料金シミュレーターは機能の側、その隣に置いた料金の考え方の解説記事は中身の側です。同じサイトの中でも、性格の違うものが同居しているわけです。

市場を形成しているかで線が引かれる

同じ調査は、もう1つ意外な線を引いています。市場を形成していないものも対象外とし、その例として企業のPR用ビデオと自費出版書籍を挙げているのです。

この線引きは、調査対象そのものの定義から来ています。報告書は調査の対象をこう定めました。

メディアを通じて広く人々に利用されることを目的として流通する情報ソフトであって、その流通が経済活動として行われ、市場を形成しているもの

条件は2つです。メディアを通じて流通していること、そして市場を形成していること。この2つを満たすものだけが、統計上のコンテンツとして数えられます。

ここから、情報とコンテンツの関係も整理できます。情報という大きな集合があり、その一部がコンテンツにあたる、という包含関係です。頭の中にある知識、社内サーバーに眠っている資料、誰にも見せていないメモは、情報ではあってもコンテンツではありません。

言い換えると、誰かが受け取れる形に整え、届ける経路に載せた時点で、はじめてコンテンツになるということでした。「うちにはコンテンツになるネタがない」と言われる企業でも、現場には情報が大量にあります。足りないのはネタではなく、それを外に出せる形にする工程のほうでした。

この工程を社外に任せる場合、どこからどこまでを頼むのかで話が変わります。依頼する範囲の決め方はコンテンツ制作代行とは?費用相場と依頼範囲の決め方ガイドで整理しています。

ここで注意したいのは、無料であること自体は対象外の理由にならない点です。報告書によれば、無料で配信されているWebサイトも、そこで生じた広告収入が市場規模に算入されています。

外されるのは、あくまで市場を形成していないものでした。企業が運営するメディアがどちらに当たるのかまでは、報告書に書かれていません。

それでも、実務的な示唆は取り出せます。値段が付いていないものは、市場規模という物差しでは測れません。売り物ではないものを作るなら、直接の売上以外の何かで価値を測る必要があるということです。

問い合わせにつながったか、営業の場で使えたか、採用の応募者が読んでくれたか。何をもって成果とするかは、自分たちで決めなければなりません。

出典は総務省情報通信政策研究所『メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査研究 報告書』令和8年6月です。

コンテンツと著作物も、よく同じものとして扱われます。しかし2つの法律の条文を並べると、範囲が重なりつつも一致していないことが分かりました。

コンテンツ 著作物
根拠 コンテンツ促進法 第2条第1項 著作権法 第2条第1項第1号
定義の要点 人間の創造的活動により生み出されるもの 思想又は感情を創作的に表現したもの
属する範囲 教養又は娯楽の範囲 文芸、学術、美術又は音楽の範囲
法律の目的 産業の振興 権利の保護

違いが最もはっきり出るのは、属する範囲の指定でしょう。著作権法には「学術」が入っている一方、コンテンツ促進法は「教養又は娯楽」と定めています。この差により、専門的な学術論文は著作物にはなる一方、コンテンツ促進法が想定する範囲からは外れやすいのです。

逆の方向にも、ずれが生じています。著作権法第10条第2項を見てください。

事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

人事異動のお知らせ、訃報、株価の速報のように、事実だけを短く伝えるものは著作物として保護されません。書き手の考えや工夫が入る余地がないためです。

ところが同じ「新聞記事」を、2024年の総務省の市場統計は1兆1,846億円のテキスト系コンテンツとして数えています。産業として見れば立派なコンテンツでありながら、権利の物差しでは保護対象から外れるものが混ざっている状態でした。

同じ対象でも、当てる物差しによって扱いが変わります。だから「これはコンテンツですか」という問いには、「何のための問いですか」と聞き返すのが正解でした。予算を通すための問いなのか、権利処理のための問いなのかで、答えが変わってくるからです。

実務では、こう使い分けると迷いません。予算や事業の話をするときは「コンテンツ」、権利や契約の話をするときは「著作物」。同じ動画を指していても、話している場面によって適切な呼び方が変わります。

作品やクリエイティブとの位置関係

作品という呼び方も、コンテンツと重なります。おもしろいことに、日本の法律はまったく同じ対象を、目的によって別の言葉で呼んでいました。

文化芸術基本法の第9条は、映画・漫画・アニメーション・コンピュータなどを利用した芸術を「メディア芸術」と名付け、その振興を国の役割と定めました。一方でコンテンツ促進法は、同じ映画や漫画を産業振興の対象としてのコンテンツと呼んでいます。

同じ映画が、文化政策の文脈では芸術になり、産業政策の文脈ではコンテンツになるわけです。どちらが正しいという話ではなく、見る角度が違うだけでした。

クリエイティブという言葉については、国の政策文書に手がかりがあります。経済産業省が2025年6月にまとめた戦略の名称は「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」で、対象の10分野にはゲーム・アニメ・漫画・映画・音楽に加えて、アート、ファッション、「みる」スポーツが含まれました。

政策上の運用としては、クリエイティブのほうがコンテンツより広い概念になっている、と読み取れます。同資料によれば、日本発のコンテンツの海外売上は2023年で約5.8兆円に達し、この10年で約3倍に伸びました。

ただし広告の現場で使う「クリエイティブ」は、バナーや広告表現そのものを指す別の用法です。会話の相手がどちらの意味で使っているかは、確かめておいたほうが安全でしょう。

出典は経済産業省『エンタメ・クリエイティブ産業戦略』2025年6月です。

社内では範囲が決まる言葉に置き換える

ここまで定義を整理してきましたが、社内の会話で本当に効くのは別の方法でした。正しい定義を覚えるより、指す範囲が自動的に決まる言葉に置き換えるほうが早いのです。

当社では、以前から似た問題に対処してきました。「文章」と「文書」という語は人によって指すものが違うため、社内では使いません。代わりに「本文」「体裁」「ファイル」の3語に置き換えています。どれを使うかで、相手に伝わる範囲が確定するからです。

同じやり方は、コンテンツにもそのまま応用できました。

曖昧なまま伝わらない言い方 範囲が確定する言い方
コンテンツを増やそう 記事を月に2本足そう/導入事例を3社ぶん作ろう
コンテンツの質を上げよう 記事の本文を書き直そう/図版を作り直そう
コンテンツを作れる人がほしい 構成を作れる人/文章を書ける人/図を作れる人
コンテンツを管理したい 公開状況を管理したい/権利関係を管理したい

今泉の視点:社内で言葉の定義をそろえる会議は、あまり効果がないと考えています。定義を決めた翌週には、また元の言い方に戻っているからです。私は依頼文や議事録のほうを直します。書く場面で言い換えるほうが、確実に残ります。

それよりも、日々の依頼文や議事録で言い換えを実行するほうが確実でした。「コンテンツを見直してほしい」と書きかけたら、記事なのか資料なのか、本文なのか体裁なのかまで書き足す。これだけで、認識のずれによる作り直しがほとんど起きなくなります。

定義を覚えることがゴールではありません。相手と自分が同じものを思い浮かべている状態を作ることが目的ですから、そこに最短で届く方法を選んでください。

ここまでの5つを、自社のものを判定する4つの問いに整理しておきます。迷ったときはこの順に確かめてみてください。

問い コンテンツ側と言える答え
価値はどこにあるか 動作や機能ではなく、表現された中身にある
誰に向けたものか 社内の記録ではなく、受け手に届けるために作った
届ける経路はあるか 公開・配布・販売のいずれかの経路が用意されている
何のために判定するか 予算・権利・評価のどれを扱う場面かが決まっている

ビジネスでコンテンツを扱うときの3つの視点

最後は、実際に仕事でコンテンツを扱うときの話です。定義を理解しただけでは、社内の判断は前に進みません。

ここでは、当社が支援の現場で必ず確認している3つの視点をお伝えします。いつ価値が生まれるのか、その1本は何を含むのか、そして誰に読まれる形になっているのかの3つです。いずれも公的統計または当社の実測に基づいています。

コンテンツを仕事で扱う場面。印刷した資料を手に持って確認している様子

二次利用が大半を占める分野もある

コンテンツの価値がいつ生まれるのかは、分野によって大きく違います。総務省の統計は、その差をはっきり示していました。

統計はコンテンツの市場を、最初に世に出る一次流通市場と、内容の同一性を保ったまま別のメディアで流通するマルチユース市場に分けています。2024年の内訳は、一次流通が9兆7,843億円で全体の75.3%、マルチユースが3兆2,115億円で24.7%でした。

市場全体で見れば、4分の3は最初の流通で生まれています。ところが分野別に見ると、この比率が逆転するものがありました。

分野 一次流通 マルチユース 二次利用の割合
コミック 578億円 4,048億円 約87.5%
映画ソフト 2,070億円 6,720億円 約76%

コミックの市場4,626億円のうち、雑誌連載など最初の流通が生んでいるのは578億円です。残りは単行本や電子配信といった二次利用から生まれています。

ここで1つ補足しておくと、アニメ化や映画化はこの数字に入っていません。報告書はマルチユースを「内容の同一性を保ちつつ」流通する場合と定義しており、別の作品になるものは「素材利用」として区別しているためです。コミックの場合は、原作者に支払われる二次使用料が、素材利用の市場として別に集計されています。

映画も、劇場公開が入口にすぎない点は同じでした。配信やパッケージ販売、テレビ放映を通じて、公開後のほうが大きな市場を作っています。

自社の仕事に引き寄せると、示唆はこうなります。1本作って公開したら終わりという進め方は、生まれ得る価値の一部を取りこぼしているかもしれません。

調べたことを記事にしたなら、その内容は営業資料にも、セミナーの一部にも、よくある質問への回答にも作り替えられます。作る本数を増やす前に、すでにあるものを何回使ったかを数えてみてください。

同じ記事1本でも指す中身の範囲が違う

2つ目の視点は、この記事全体を貫くテーマの応用です。「コンテンツ1本」という単位が、人によってまったく違うものを指しています。

当社は2026年8月7日、コンテンツ制作の費用について検索したときに上位に並んだ10サイトを1件ずつ開き、書かれていた金額を項目別に集計しました。外部に委託する前提の金額だけを対象にしています。

結果として、記事1本の金額は1万円から30万円まで開いていました。実に30倍の幅です。理由は品質の差ではなく、「1本」に何を含めるかの違いにありました。10サイトのうち1サイトが、その内訳を4段階で示しています。

1本に含まれるもの 提示されていた金額
テキストの執筆のみ 1万円〜3万円
企画から執筆・投稿まで 5万円〜10万円
図やオリジナル画像も作る 8万円〜15万円
取材と専門家の監修まで行う 15万円〜30万円

発注する側が「記事1本いくらですか」と聞き、受注する側が別の段階を想定して答えれば、話がかみ合わないのは当然でしょう。

ここで1つ、重要な注意があります。この金額を相場として受け取らないでください。集計した10サイトのうち9サイトには、母数も調査方法も調査時点も書かれていませんでした。残る1サイトにも、調査時点と集計方法の記載はありません。

さらに、運営元はいずれも制作や運用を請け負う会社、発注先を紹介するサイト、本業が別にある事業会社のメディアでした。中立の調査機関がまとめた数字は1件もありません。つまりこれらは統計ではなく、各社が自社サイトに掲示した価格です。

だからこそ、金額を比べる前にやることがあります。自社が言う「1本」に何を含めるのかを、先に決めて言葉にすることです。これは費用の話に見えて、実際には言葉の範囲を決める作業でした。

金額の内訳や見積もりの読み方は、コンテンツマーケティング費用の相場を扱った記事で詳しく書いています。

機械が読み取れる形式まで含めて考える

3つ目は、近年になって重みを増した視点です。コンテンツは中身だけでできているわけではなく、読み取られる形式まで含めて機能します

当社は2026年8月4日、記事の書き方について検索したときの上位5サイトを1件ずつ取得し、ページの中身を解析しました。本文の分量は平均で約14,740字あり、最も短いサイトでも10,300字と、どこも力の入った記事です。

ところが形式の側を見ると、様子が違いました。

調べた項目 上位5サイトの状況
本文の文字数 平均 約14,740字(10,300〜17,100字)
質問と回答の構造化データ 実装は0件
手順の構造化データ 実装は0件
比較表に使う表タグ 5サイト中4サイトの状況(3サイトが0個・1サイトが2個)

構造化データとは、ページの内容が何を意味しているかを機械が読み取れる形で書き添える仕組みです。この検索結果にはAIによる要約が表示されるにもかかわらず、上位にいるページのどれもが、その形式を整えていませんでした。

誤解のないように補足すると、Googleは公式の説明で、AIによる要約に表示されるための追加の要件はなく、特別な最適化も必要ないと明言しています。構造化データを入れれば引用される、という話ではありません。

それでも、この観測から言えることはあります。文字数を積み上げる作業と、内容の意味を機械が読み取れる形に整える作業は別物であり、後者は上位のページでも手つかずだった、という事実です。

コンテンツを「中身」とだけ捉えていると、この差は視野に入りません。器と中身の関係で言えば、中身を良くする努力と、中身が正しく取り出される状態を作る努力は、それぞれ別に必要ということになります。

3つの視点を、判断に使える形にまとめておきましょう。

確認する場面 問い
企画を決めるとき この1本は、公開後に何回使い回す予定があるか
見積もりを見るとき この「1本」には、企画・図版・取材のどこまでが入っているか
公開の前後 中身の良さとは別に、意味が取り出せる形に整っているか

具体的にどの形式をどこまで整えるかは、サイトの規模や体制によって答えが変わります。判断の軸だけ持っておけば、外部に相談するときも話が早くなるはずです。

コンテンツを実際に事業へ組み込んでいく進め方は、コンテンツマーケティングの始め方でまとめています。

コンテンツについてよくある質問

ここまでの内容に関連して、相談の場でよく受ける質問をまとめました。

コンテンツとはどういう意味ですか?

コンテンツとは、受け手に向けて表現された中身のことです。英語のcontentが「入れ物に収められているもの」を意味するとおり、本やWebサイトといった器に対する中身にあたります。日本の法律では、映画・音楽・漫画・ゲームなど、人間の創造的活動により生み出され、教養または娯楽の範囲に属するものと定義されています。

コンテンツと著作物は同じものですか?

コンテンツと著作物は範囲が重なりますが、同じものではありません。コンテンツ促進法は「教養又は娯楽の範囲」、著作権法は「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」と定めており、指定が違います。予算や事業の話をするときはコンテンツ、権利や契約の話をするときは著作物と呼び分けると、社内の議論が混乱しにくくなります。

コンテンツにはどんな種類がありますか?

種類の分け方は、何のために分けるかによって変わるものです。総務省の市場統計は映像系・音声系・テキスト系の3つ、同じ総務省でも利用時間の調査は動画系・テキスト系・コミュニケーション系の3つ、著作権法は言語や音楽など9種類を例示しています。分類名を覚えるより、目的に合う軸を選ぶほうが実務では役に立つはずです。

コンテンツと情報の違いは何ですか?

情報のほうが広い言葉で、コンテンツはその一部です。総務省の調査は、メディアを通じて流通し、市場を形成しているものを調査の対象としています。社内にある知見や誰にも見せていないメモは、情報ではあってもコンテンツではありません。受け取れる形に整えて届ける経路に載せた時点で、コンテンツになります。

まとめ

コンテンツとは、受け手に向けて表現された中身のことでした。法律は人間の創造的活動により生み出され、教養または娯楽の範囲に属するものと定め、公的な調査は動作や機能に価値があるものを対象から外しています。分類の軸も、市場を測るのか人の行動を測るのかで変わりました。

まず取りかかっていただきたいのは、社内で使っている「コンテンツ」を、範囲が決まる言葉に置き換えてみることです。記事なのか資料なのか、本文なのか体裁なのか。そこまで書き分けるだけで、認識のずれによる作り直しは減っていきます。線引きに迷う場面があれば、当社にもお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社街中文学 代表。DBSEO(データベース型SEO)・LLMO(AI検索最適化)・コンテンツマーケティングを専門に、東証上場企業や月間4,500万セッション級メディアのSEO支援を行ってきました。AIライティングSaaS「buncraft」を開発・運営。本メディアの全記事を執筆・監修しています。

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