「オウンドメディアを立ち上げるので、CMSを決めておいて」と言われたものの、比較記事を3本読んでも決まりません。どの記事にも同じ名前が10個ほど並んでいて、選び方の章はどれも機能とサポートとカスタマイズ性の話で終わっています。そんな手詰まりの状態ではないでしょうか。
オウンドメディアのCMSは、入口の機能ではなく出口から決めると外れません。やめるときに記事を持ち出せるか、ドメインを自社の名義で持てるか。この2つは最初に決めた形が何年も続きます。
この記事では、上位記事に並ぶ16のサービスについて公式サイトを全数で確かめた結果と、Googleの公式資料をお見せします。読み終えるころには候補を2つまで絞る軸が手に入り、その理由を上司に説明できるはずです。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
先に結論|CMSは出口から決めると外れない
まず最初に、結論からお伝えします。オウンドメディアのCMSは、入口の機能ではなく「出口」から決めると外れません。ここでいう出口とは、そこをやめるときに何を持ち出せるか、ということです。
機能の数で選ぶと、選んだ理由は数年後には残りません。一方で、記事のデータを自分で書き出せるか、ドメインを自社の名義で持てるか。この2つは最初に決めた形がそのまま何年も続きます。
そこで当社は、この記事のために自分たちで数えました。「オウンドメディア CMS」で検索したときの上位10記事を集め、そのうち2記事以上で個別に紹介されていた16のサービスについて、各サービスの公式サイトと公式ヘルプだけを見て回っています。調査日は2026年8月10日です。
いちばん驚いたのは書き出しの項目でした。管理画面から自分で記事データを取り出せると確認できたのは、16のうち7サービスでした。詳しい内訳は記事の中ほどでお見せします。ほかの2項目は次のとおりでした。
| 公式サイトで確かめたこと | 16サービスのうち |
|---|---|
| 料金の金額が公式サイトに載っている | 13サービス(うち2件はオープンソースの無料表記) |
| 独自ドメインを使えると公式に明記している | 14サービス(うち3件は有料プラン限定) |
あとで引っ越せるかどうかは、比較記事の一覧表を眺めていても分かりません。公式ヘルプまで降りて、ようやく確かめられる種類の情報です。言い換えると、そこさえ先に押さえておけば、選定を多少間違えても取り返しがつく範囲に収まりやすくなります。
そのうえで、この記事がお伝えしたいことは次の3つです。
- CMSは「機能の多さ」ではなく「必要な制御ができるか」で選ぶ
- 無料や低価格で始められるかは、好みではなく契約条件で決まる
- 乗り換えの負担は、公式ドキュメントを読めば事前に見積もれる
1つ目は、CMSを機能の多さで比べないということです。Googleが公表しているのは技術要件とスパムポリシーとベストプラクティスの3つであって、CMSの商品名ではありません。必要な操作が自分の手でできるかどうかのほうが、機能の総数よりはるかに効いてきます。
2つ目は、無料や低価格で始められるかどうかが好みの問題ではないということです。法人が個人向けの安いプランを使うことを、公式ガイドラインで禁じているサービスが実在しました。月額数百円という数字だけを見て社内を通すと、あとから計画を組み直すことになります。
3つ目は、乗り換えの負担が事前に見積もれるということです。Googleは恒久的な転送であれば評価は失われないと明記する一方、移転中に一時的な変動が起きるのは正常だとも書いています。何が起きるか分かっていれば、慌てて元に戻す判断を避けられます。
最後に、読み進める順番の目安を置いておきましょう。頭から全部読む必要はありません。
| あなたの状況 | 先に読むとよい章 |
|---|---|
| 選択肢の全体像から知りたい | 次の「4つの型で整理する」 |
| 「SEOに強いCMS」という言葉が気になっている | 「公式資料と実測で確かめる」 |
| 候補を絞りたい。見積もりを取る前の準備をしたい | 「16サービスの公式情報を調べた」(この記事の中心です) |
| 無料で始められないかと社内で言われている | 同じく「16サービスの公式情報を調べた」 |
| すでに使っているCMSを替えるか迷っている | 「乗り換える負担を先に見積もる」 |
なお、この記事はCMSを選ぶところまでを扱います。WordPressに決めたあとで何を先に決めるべきかはオウンドメディアWordPress|テーマより先に決める3つにまとめました。立ち上げ全体の流れはオウンドメディアの立ち上げ方に分けて書いています。
オウンドメディアのCMSは4つの型で整理する
CMSとは、記事や画像を管理画面から登録すると、Webページとして自動で組み立ててくれる仕組みのことです。比較記事を開くと10個も16個も商品名が並びますが、選ぶときに効いてくる違いは商品名ではありません。サーバーを誰が持つのか、ドメインを誰の名義で持てるのか、そして読者に見える画面を誰が作るのか。この3点で整理すると、選択肢は実質4つの型に分かれます。

この章では、その4つの型を順に見ていきます。なお、この分類は各サービスの公式仕様を突き合わせて当社が整理したもので、どこかの公式定義ではありません。
| 型 | サーバーを持つのは | この型を選ぶと自社の仕事になること |
|---|---|---|
| 自分で建てる | 自社(レンタルサーバー含む) | ソフトの更新、セキュリティ対応、バックアップ |
| 借りる | 提供会社 | 用意された機能の範囲での運用。基盤の保守は不要 |
| 間借りする | 提供会社 | 同じく運用のみ。ただしドメインの扱いに条件が付く |
| 表示を自作する | 提供会社(管理画面だけ) | 読者に見えるWebサイト本体の開発と公開 |
どれを選ぶかは、社内に技術を見られる人がいるかどうかでおおよそ決まります。いない場合は真ん中の2つ、つまり借りる型と間借りする型が現実的でしょう。両端の2つは、サーバーか表示側のどちらかを自社で抱えるため、見られる人がいて初めて選べます。
自分で建てる型は更新まで自社の仕事
ソフトウェアを自社で借りたサーバーに設置して使う型です。世界でいちばん使われているのがWordPressで、W3Techsの集計では、CMSが判別できたサイトのうち59.1%、全ウェブサイトのうち41.1%を占めていました。2026年8月10日に取得した数字です。
ただし、この集計は同社が「relevant web」と呼ぶ数百万規模のサイト群が対象になっています。世の中のすべてのサイトを数えたものではない点にはご注意ください。
この型の良さは、動かし方をこちらで決められることにあります。同時に、その責任もこちらに来るということです。
WordPress公式が示す動作要件は、PHP 8.3以上、データベースはMariaDB 10.11以上またはMySQL 8.0以上となっています。暗号化通信については「すべてのインストールに必須。」と書かれていました。サーバー側のこうしたバージョン管理も、自社が面倒を見る対象になるわけです。
更新の重さは、実際の出来事で見るとよく分かります。情報処理推進機構(IPA)は2026年7月22日に注意喚起を出しました。WordPress 6.9以降で2件の脆弱性の組み合わせにより遠隔でのコード実行が生じる可能性があるとして、影響を受けるサイトは直ちに更新するよう呼びかけたものです。
これはWordPressが危ないという話ではありません。自分で建てる型を選ぶと、こうした知らせを受け取って動く担当を社内に置くことになる、という話です。
借りる型は基盤の保守から解放される
管理画面も配信の仕組みも提供会社が用意し、自社は独自ドメインを当てて使う型です。オウンドメディア向けに作られた国産のサービスが多く、この型を選ぶとサーバーの保守やソフトの更新から解放されます。
その代わり、できることは用意された機能の範囲に収まります。細かい表示の制御をしたくなったときに手が届かない、という場面はどうしても出てくるものです。ここは自由と引き換えに手放す部分だと考えてください。
この型でつまずきやすいのが、予算の見立てです。月額を公表しているサービスと、問い合わせないと金額が分からないサービスが混在しています。後者の場合、社内で概算を出す段階でいったん手が止まってしまうでしょう。何件がどちらだったかは、あとの独自調査の章で数えてお見せします。
間借りする型は契約条件が住所を決める
すでに読者が集まっている場所に、自社のページを持たせてもらう型です。オウンドメディアプラットフォームと呼ばれることもあります。サーバーの契約もデザインの設計も要らないため、書き始めるまでがいちばん速く、読者の回遊が最初からある点も他の型にはない強みでしょう。
ただし、住所が自分のものかどうかは契約条件で決まります。ここで見落とされやすい点が2つあります。
1つ目は、法人が安いプランを使えるとは限らないことです。調べた範囲では、法人が個人向けのプランを使うことを公式ガイドラインではっきり禁じ、すでに個人向けプランで運用している場合も法人向けへ移るよう求めているサービスがありました。月額数百円という金額だけを見て検討を進めると、この段階で計画が崩れます。
2つ目は、集客力と資産化が引き換えになりやすいことです。あるサービスは、自社のドメイン全体としては検索にもAIにも強いと説明しながら、独自ドメインを当てた場合については同様の流入の優位性は現時点では確認できていない、と自ら注記していました。読者が集まっている場所の力を借りるほど、その力は借り物のままだということです。
表示を自作する型は責任の範囲が広い
記事を書きためる管理画面だけを借りて、読者に見えるWebサイトは自社で作る型です。ヘッドレスCMSと呼ばれます。ヘッドレスとは「頭がない」という意味で、この場合の頭は読者に見える画面を指します。
ここで見落としやすいのは費用の数え方です。公表されている月額はあくまで管理画面の利用料であり、読者が見るWebサイト本体の開発費と公開先の費用は別にかかります。比較表の金額だけを並べると安く見えて、実際の総額は逆転することが珍しくありません。
表示を自分で作れるので、速度もデザインも思いどおりにできます。裏を返せば、正しく動いているかを確かめる仕事まで自社に来るということです。この点は最後の乗り換えの章で、当社が実際に踏んだ失敗とあわせてお話ししましょう。
SEOに強いCMSを公式資料と実測で確かめる
比較記事には「SEOに強いCMS」という言葉がよく出てきます。その言葉が何を指しているのかを、この章ではGoogleが公開している文章と、当社が自社メディアを運用して実際にぶつかった出来事の両方から確かめていきましょう。結論を先に言うと、強いCMSがあるのではなく、必要な制御ができるCMSがあるだけです。

順に、公式が何を求めているのか、公式が何を言っていないのか、そして機能一覧では見えない部分を見ていきます。
Googleが求めているのは3つの要件だけ
Googleは検索に載るための決まりをGoogle検索の基本事項という文書にまとめています。中身は3つに分かれていました。
1つ目はページを検索結果に出すために必要な技術要件、2つ目は順位を下げたり掲載から外したりする行為をまとめたスパムポリシー、3つ目は見え方を良くするためのベストプラクティスです。
この文書に商品名は出てきません。当社が2026年8月に確認した時点での話です。このうち技術要件はさらに3つの項目でできていて、クローラーがページにたどり着けること、ページが正しく動くこと、インデックスできる中身があること、の3点です。裏を返せば、この3点を満たせないCMSを選ばないことが、SEOの観点でのCMS選定のほぼすべてになります。
ただし公式は、この3点を満たせばインデックスされる、とまでは書いていません。書かれているのは、満たして初めて検索結果に載る候補になる、ということです。
同じくGoogleのSEOスターターガイドには、「You usually don’t need to do anything except publish your site on the web.」という一文があります。ただしこれは検索の仕組みを説明した節にある文で、クローラーに見つけてもらうために特別な手続きは要らない、という限定された意味です。同じガイドはこのあとに多くの推奨事項を並べています。少なくとも、見つけてもらう段階で特別な仕掛けが要る、という前提は公式の説明とずれています。
CMSと順位の関係に公式の記述はない
ここは正確に書いておきましょう。当社が調べた範囲では、Googleの公式ドキュメントに「CMSの種類が順位を左右する」という記述も、「左右しない」という記述も見つかりませんでした。近いのは、多くのCMSは書いたタイトルを自動でtitle要素にしてくれる、という説明などです。
つまり当社が確認した範囲では、公式はこの点に触れていません。「Googleが認めたSEOに強いCMS」という説明を見かけたら、その根拠がどこにあるのかを確かめたほうがよいでしょう。
関連して、GoogleはSEO業者の選び方についての文書で「No one can guarantee a #1 ranking on Google.」と書いています。1位を保証できる者はいない、という意味です。順位を保証する売り文句への注意喚起は、CMSの売り文句を読むときにもそのまま当てはまります。
AI検索に追加の要件はないと公式は書く
最近は「AI検索に対応したCMS」という言い方も増えました。この点についてGoogleははっきり書いています。AI Overviews や AI Mode に出るための追加要件はなく、特別な最適化も必要ない、という説明です。なおこの文書もCMSという語には触れていません。
同じ文書には、AI向けの機械可読ファイルやマークアップを新しく作る必要はないこと、そのための特別な構造化データもないことが続けて書かれています。
参照リンクとして表示される前提に挙げられていたのは、3つだけでした。ページがインデックスされていること、スニペット付きで表示できる状態にあること、そして検索の技術要件を満たしていることです。
AI対応をうたう機能そのものを否定する必要はありません。ただ、それがないと載らないという話ではない、というのが公式の説明です。当社は、CMSを選ぶ決め手としては弱いと考えています。
機能の一覧では制御できる範囲が見えない
ここからは当社の実測です。機能一覧に載っているかどうかと、実際に自分たちの手で変えられるかどうかは、別の話でした。
当社の自社メディアは、WordPressに市販のテーマを組み合わせて運用しています。2026年7月16日にメディアのトップページを作り替えたときのことです。
テーマの管理画面から設定する項目である冒頭の大きな画像と記事スライダーが、外部から呼び出す仕組み経由では変更できませんでした。結局、そのページだけに効く表示指定で見えなくするという回避策を取っています。機能としては存在しているのに、自動化の対象にはできなかったわけです。
もう1つあります。記事の版の履歴を取得する呼び出しは公式に用意されているのですが、当社の環境では応答が404で返ってきて使えません。運用手順書には原因の推測を書き残していますが、断定はしていません。公式に用意されている機能でも、自社の環境の組み合わせによっては通らないことがあります。これは資料を読むだけでは分からず、実際に試して初めて見えてくるものです。
新しくサイトを立ち上げるとき、あとから変えるのが難しい土台がいくつかあります。ドメインの方針、URLの設計、そしてCMSの選定です。ここで当社が基準にしているのは次の考え方です。
- CMSは機能の豊富さではなく、SEOに必要な制御ができるかで選ぶ
- 「これなら何でもできる」という思い込みは、あとで技術的な制約に気づく形で返ってくる
- デザインに時間をかけるより先に、土台の設計を終わらせる
候補が2つに絞れたら、機能一覧を比べるのではなく、無料期間や試用環境で自社が本当にやりたい操作を1つだけ試してみてください。
公式ドキュメントにも古い数字が残る
CMSを機能の数やテーマの数で比べたくなったときのために、当社の失敗も共有しておきます。
2026年8月の上旬、別の記事を書くためにあるCMSの公式ドキュメントを調べていました。同梱されているテーマの数を説明した箇所に、2021年当時のバージョン番号が添えられたまま残っていたのです。
同じページに書かれていたテーマの総数も、同じ時期の数字である可能性が高いと判断しました。結果として記事への採用そのものを取り下げています。
公式サイトに載っている数字だから正しい、とは限りません。いつ時点の情報なのかが書かれていない数字は、比較の材料としては使えないと考えたほうが安全です。この考え方は、あなたが今読んでいる比較記事の数字にもそのまま当てはまるはずです。
独自調査|CMS16サービスの公式情報を調べた
結論から先にお伝えします。3つの項目を公式サイトで確かめたところ、いずれも全数には届きませんでした。とくに記事の書き出しは、自分の操作で取り出せると確認できたのが16のうち7です。

比較記事の一覧表を見ると、料金も機能も整然と並んでいます。ところがその表のとおりに社内へ説明しようとすると、金額の根拠が出てこなかったり、書き出しの可否が誰にも分からなかったりするのです。そこで当社は、比較表の元になっている情報が公式サイトにどこまで書かれているのかを、自分たちで数えました。
この章では、調査のやり方を先にお見せしたうえで、3つの項目の結果を順に並べていきましょう。最後に、見積もりを取る前に使える質問リストを置きます。
母数は上位10記事で2記事以上に出た16件
まずは、数える対象の決め方からお話しします。恣意的に選ぶと結果が動いてしまうため、機械的な手順を先に決めました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象の決め方 | 「オウンドメディア CMS」で検索した上位10記事を集めた。そのうち2記事以上で個別に紹介されていたサービスをすべて対象にした |
| 母数 | 16サービス |
| 情報源 | 各サービスの公式サイト・公式ヘルプ・公式ドキュメントのみ。比較記事やまとめ記事は使っていない |
| 調査日 | 2026年8月10日 |
| 調べた項目 | 料金の金額が公式に載っているか、独自ドメインを使えると公式に書かれているか、記事データの書き出し方が公式に説明されているか |
この記事では、編集方針により個別のサービス名は書きません。読者にとって意味があるのは、どの1社がどうだったかではなく、公式サイトを見に行ったときに情報が手に入る確率がどのくらいなのかだと考えているためです。
もう1つ、先にお断りしておきたいことがあります。「公式サイトで確認できなかった」は「その機能がない」とは違います。探して見つからなかった、という意味に限って使いました。
料金を金額で公表していたのは13件
まず料金です。公式サイトに月額や初期費用の具体的な金額が書かれていたのは、16サービスのうち13でした。残りの3つは、料金ページや製品ページに金額がなく、問い合わせや相談への導線だけが置かれています。うち1つの料金ページには、金額の代わりに「ご要望に応じてご案内いたします。」と書かれていました。
| 料金の公表状況 | サービス数 |
|---|---|
| 公式サイトに金額が載っている | 13 / 16 |
| うち、オープンソースで「無料」と明記されているもの | 2 |
| 有料サービスで具体的な金額を公表しているもの | 11 / 16 |
| 金額は非公開で、問い合わせが必要 | 3 / 16 |
ここで注意したいのは、無料と書かれている2つの扱いです。無料なのはソフトウェアのライセンス費用であって、サーバー代とドメイン代は別にかかります。この2つを「0円」として比較表に並べると、実際の総額を大きく読み違えます。
金額が非公開のサービスが3つあったこと自体は、悪いことではありません。要件によって構成が変わる製品では、定価を置くほうが不誠実になる場合もあるからです。ただ、予算の概算を先に作りたい担当者にとっては、この3つは検討の順番を後ろに回さざるを得ません。ここは選定の進め方に直結します。
「まず無料で始められないか」と社内で言われている場合は、次の3つがそろっているかで判断してください。
- 途中でやめても困らない
- そのドメインに評価を貯めなくてよい
- 期間を決めた検証が目的である
1つ目は、途中でやめても困らないかどうかです。無料で始めた場所は、有料プランに上げないと独自ドメインを使えないことがあり、今回も3件がその条件でした。
2つ目は、そのドメインに評価を貯めなくてよいかどうかです。他社のドメインの上で書いた記事は、読者が集まっている力を借りられる代わりに、その力が自社に残るとは限りません。
3つ目は、期間を決めた検証が目的かどうかです。3か月試して社内の反応を見る、といった使い方であれば無料でも成立します。逆に、この3つのどれかが欠けるなら、最初から独自ドメインを当てられる選択肢に絞ったほうが安全です。
独自ドメインは使えても条件が付く
次に、自社が持っているドメインを使えるかどうかです。ここで数えたのは「使えるか」であって、「やめたあとも自分の名義で扱えるか」ではありません。
16のうち14が「使える」と公式に明記していました。使えないと明記していたサービスは0です。残る2つは、公式サイトを探した範囲では記載を見つけられていません。
数字だけを見ると、独自ドメインはほとんどのサービスで使えることになります。ただし実際には条件が付いているケースがあり、そこを読み落とすと計画が狂います。今回の調査で見つかった条件は次のとおりです。
| 付いていた条件 | 該当 |
|---|---|
| 有料プランでのみ独自ドメインを使える | 3サービス |
| サイトを作る最初の段階では独自ドメインを設定できず、あとから当てる形になる | あり |
| 使えるのはサブドメイン形式だけで、www などを付けない形は設定できない | あり |
| ルートドメインとサブドメインは設定できるが、サブディレクトリでは設定できない | あり |
もう1つ、契約が終わるときのことも確かめておくべきです。あるサービスの公式ヘルプには、解約後は運営会社側にドメインの権限がないため、転送が必要なら自分で設定してほしい、という趣旨の説明がありました。独自ドメインを当てられることと、やめたあとも自分で扱えることは、別々に確認する必要があります。
自分で書き出せると確認できたのは7件
この記事でいちばんお伝えしたいのが、この項目です。書き出しやバックアップについて何らかの説明が公式にあったのは16のうち10でした。ただしその10を中身で分けると、管理画面から自分でファイルを取り出せると確認できたのは7にとどまります。
| 記事データの書き出しについて公式に確認できたこと | サービス数 |
|---|---|
| 管理画面から自分でファイルを書き出せる | 7 / 16 |
| 書き出し以外の形で説明がある(解約時に運営会社から受け取る、システム内のバックアップと復元、本体機能ではなく外部の拡張の紹介) | 3 / 16 |
| 公式ヘルプに提供していないと明記されている | 2 / 16 |
| 公式サイトを探した範囲では説明が見つからなかった | 4 / 16 |
ここで大事なのは、真ん中の3つです。「エクスポート対応」という4文字が指している中身は、サービスごとにかなり違います。
解約のときに運営会社から渡してもらう形であれば、こちらの好きなタイミングでは取り出せません。システム内部のバックアップ機能は、外へ持ち出す話とは別のものです。
提供していないと書かれていた2つは、隠しているわけではありません。むしろ公式ヘルプに明記してくれているぶん、検討の段階で正しく判断できます。困るのはその次の4つで、あるとも無いとも書かれていないため、契約前に問い合わせないと分からないという状態でした。
さらに細かい点をもう1つお伝えします。自分で書き出せる場合でも、記事本文と画像は取り出せるが、そのサービス独自の付加情報は出ないと明記しているケースがありました。特集のまとめ方や、目次、タグのような部分です。引っ越し先で作り直す手間がここに残ります。
見積もりを取る前に確認する5つの質問
ここまでの調査で「公式サイトを見ても分からなかった」項目を、そのまま質問に変えました。候補を2つまで絞ったら、この5つを問い合わせフォームか商談の場で聞いてください。社内会議にそのまま持ち込める形にしてあります。
| 質問 | この質問で何が分かるか |
|---|---|
| 初期費用と月額を、想定するページ数と担当者数の前提つきで教えてください | 公表価格がない場合の予算感。前提を添えると概算が返ってきやすい |
| 記事の本文と画像を、こちらの操作で書き出せますか。形式は何になりますか | やめるときに持ち出せるか。形式が分かると移行先の見当も付く |
| 書き出しに含まれないデータはありますか | 目次やタグなど、作り直しになる範囲 |
| 独自ドメインはどのプランから使えますか。契約終了後の転送設定はどちらが行いますか | 資産化の条件と、やめたあとの扱い |
| 公開したページの表示を、管理画面以外の方法から変更できますか | 将来の自動化や外部連携の余地。ここが狭いと運用が人手に固定される |
この5つに即答が返ってくるかどうかも、それ自体が判断の材料です。答えが揃わないまま契約を進めた場合、その不明点はそのまま数年後の自分に引き継がれます。
費用の全体像を組み立てる段階なら、CMS以外の費目も含めた数え方をオウンドメディアの費用にまとめました。あわせてご覧ください。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
CMSを乗り換える負担を先に見積もる
「CMSを替えたら検索の評価がゼロになる」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは正確ではありませんが、まったくの誤りでもありません。この章では、Googleが公式に何と書いているかを確かめたうえで、当社が実際にリダイレクトの設定でつまずいた話までお伝えします。

乗り換えを考えている方も、これから選ぶ方も、ここを読んでおくと判断の精度が上がります。
デザインの刷新、ドメインの変更、そしてCMSの移行は、まとめてサイトリニューアルの一形態です。過去に積み上げた評価を引き継げないと、公開直後に流入が大きく減り、戻るまでに数か月から1年以上かかることもあります。当社が事前に確認する領域は全部で7つありますが、そのうちCMSの乗り換えで特に効くのは次の4つです。
- URLがどう変わるか、変わるならどこからどこへ転送するか
- 記事とその中身が、抜けなく移せるか
- これまでの技術的な設定を引き継げるか
- 検索エンジンへの指示が引き継がれるか
301で評価は失われないと公式は明記する
まず、安心してよい部分からお話しします。GoogleはURLが変わるサイト移転の公式ガイドで「Don’t worry about link credit. 301 and other permanent redirects don’t cause a loss in PageRank.」と書いています。恒久的な転送を正しく設定していれば、リンクの評価が失われる心配はいらない、という意味です。
301とは、このページは新しい場所へ恒久的に移りました、とサーバーが返す合図を指します。CMSの乗り換えは、この合図を旧アドレスから新アドレスへ一つずつ引くことでもあるわけです。なお、同じサイトの中でURLの形だけを変える場合の考え方はオウンドメディアWordPressで扱っているので、そちらもあわせてご覧ください。
ここまで読むと、乗り換えは怖くないように思えるかもしれません。実際、正しく設定できていれば怖くありません。問題は「正しく設定できているか」を誰がどう確かめるかという一点に集まります。
乗り換えの負担は1年間の維持で決まる
乗り換えの見積もりで抜け落ちやすいのが、移行日のあとに続く時間です。公式ガイドには、移転の最中に検索での見え方が一時的に変動することがあり、それは正常だ、と書かれています。あわせて、転送をどれだけ維持すべきかの目安も示されました。
この目安を知らないまま移行すると、公開直後に数字が落ちた瞬間に「失敗した」と判断して、慌てて元へ戻すという最悪の手を打ちかねません。公式に書かれている期間を整理すると、次のようになります。
| 項目 | 公式に示されている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 転送を維持する期間 | できるだけ長く。一般的には少なくとも1年 | サイト移転ガイド |
| 移転中の順位変動 | 一時的に変動するのは正常 | サイト移転ガイド |
| 転送の連鎖 | いくつも経由させない。段数は抑えることが推奨されている | サイト移転ガイド |
| アドレス変更ツール | 180日を過ぎると、Googleは旧サイトと新サイトの関係を認識しなくなる | Search Consoleヘルプ |
ただし最後の1行だけは、使える場面が限られている点にご注意ください。アドレス変更ツールは、ドメインまたはサブドメインが変わる移転のときに使うものです。同じドメインの中でパスだけを変える場合や、URLが変わらないサーバーの引っ越しは対象外だと公式ヘルプに明記されています。
CMSの乗り換えは、ドメインが変わらないまま行うことも少なくありません。自社の移行がどちらにあたるのかを先に確かめてください。
つまり乗り換えの負担とは、作業そのものよりも「1年間その状態を維持し、見守る体制を持てるか」です。ここを社内で握れないまま移行日を決めると、途中で誰も面倒を見なくなります。
設定した転送が実際には返っていなかった
ここからは当社の失敗です。転送を設定したつもりでも、実際にはその応答が返っていないことがありました。
当社が運営している比較サイトで、正しくない並び順のURLを正しい形へ転送する処理を入れていました。ところが実際に応答を測ってみると、恒久的な転送として返っておらず、ページを読み込んでから移動する形のHTMLとして書き出されていたのです。
原因は、ページを事前に作っておく仕組みの途中で転送処理が動いていたことでした。配信の手前で応答を返す構成に変えて、ようやく解決しています。
同じ点検で、業種ごとのページのURLを揃えたときに、それまで壊れたままだったフッターと検索結果からのリンク先も直りました。設定ファイルを見ているだけでは、どちらの問題にも気づけません。
切り分けの手順には「設定を見る」ではなく「応答を測る」を入れてください。その代わりに、ブラウザで開いて正しいページが表示されることと、検索エンジンに正しい合図が返っていることは、別々に確かめる必要があります。
今泉の視点:CMSを替えたいというご相談をいただいたとき、私が最初に聞くのは「今のCMSが原因だと、どうやって確かめましたか」です。替えること自体に反対したいのではありません。ただ、道具を替えれば直ると思っていた問題が、実際には中身の話だったという経験を何度もしています。替える判断そのものより、替えなくても直る部分を先に潰しておくほうが、結果として乗り換えも成功しやすくなります。
乗り換える前に原因がCMSかを数える
最後に、乗り換えを決める前にやってほしいことをお伝えしましょう。道具を替える判断の前に、その症状が本当に道具のせいなのかを数える、という一手間です。
当社にも実例があります。運営している比較サイトで一部のページが検索結果に載らない設定になっていたとき、当初立てた仮説は実測で外れました。
該当したのは209社のうち10社だけで、当初考えていた原因に当てはまったのは2社、用意しようとした対策で救える会社は0社でした。結局コードは1行も変えず、対処はCMSに中身を入力することです。その後の入力で、載らない設定のページは10社から9社、さらに4社まで減っています。
もし当時「このCMSでは制御しきれない」と結論づけていたら、乗り換えても同じ状態が続いたはずです。入れ物を替えても、中身が薄いという事実は移動するだけだからです。この経験があってから、当社は次の順番を守るようにしました。
| 順番 | やること |
|---|---|
| 1 | 困っている症状が、何ページのうち何ページで起きているのかを数える |
| 2 | 原因の仮説を立て、その仮説で説明できる件数を実データで確かめる |
| 3 | 説明できない差が残るなら、仮説を捨てて数え直す |
| 4 | そのうえで、CMSを替えないと解決しないかを判断する |
この4段を踏むと、乗り換えなくても解決する部分が先に見つかることがあります。当社の場合はコードを1行も変えずに済みました。仮に乗り換えることになっても、何が問題だったのかを把握したうえで移れるため、移行先で同じことを繰り返さずに済みます。オウンドメディアの目的を先に1つに絞っておけば、この判断はさらに速くなるはずです。
オウンドメディアのCMSについてよくある質問
まとめ
- CMSは入口の機能ではなく、出口から決めると外れにくくなる
- 自分で記事を書き出せると確認できたのは16のうち7だった
- 公式サイトに説明がない4つは、契約前に聞くしかない
オウンドメディアのCMSは、機能の多さではなく、必要な制御ができるかと、やめるときに何を持ち出せるかで決まります。当社が16サービスの公式サイトを数えたところ、管理画面から自分で記事を書き出せると確認できたのは7でした。4つは、あるとも無いとも書かれていません。
今日できることを1つ挙げるなら、候補を2つに絞って、記事の書き出しについて公式ヘルプを開いてみてください。そこに書かれていなければ、それ自体が確認すべき質問になります。自社の状況に当てはめた判断でお困りのときは、株式会社街中文学へお気軽にご相談ください。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
