「ブランディングになります」と説明したあとで、「それはいつ、どうやって分かるの」と返されて言葉に詰まった経験はないでしょうか。オウンドメディアマーケティングの一番の難所は、記事の書き方ではなく、この一問に答えられるかどうかにあります。
株式会社街中文学は月間4,500万セッション級のメディアの支援を担当してきました。当社のライティングチームは2023年の創業以来、顧客向け記事を累計1,000本以上納品しています(2026年7月時点)。そこで見えた答えは、成果の測り方を役割と一緒に決めておくことでした。
この記事を読めば、社内で「なぜこれをやるのか」「何をもって効いていると言うのか」「いつ判断するのか」の3つを、自分の言葉で説明できるようになります。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
先に結論:まず担当と測り方を決める
まず最初に、結論からお伝えします。
- 最初に決めるのは記事の書き方ではなくこの施策に任せる範囲です
- ブランディングを任せるなら成果の測り方も一緒に変えます
- 測り方を変えたらいつ判断するかを着手前に決めます
1つ目は、担当の切り分けについてです。オウンドメディアマーケティングという言葉は「メディアを使って集客すること」と受け取られがちですが、実際に最初に決まっていないと後で行き詰まるのは、この施策に何を任せ、何を任せないかという線引きのほうでした。任せる範囲が決まっていないと、広告と同じ物差しで比べられたときに分が悪くなります。広告との具体的な使い分けと予算の配り方はオウンドメディアとペイドメディアの記事にまとめました。
2つ目は、測り方の置き換えです。任せる範囲を「ブランディング」に寄せた瞬間、問い合わせ件数という物差しは使えなくなります。それなのに測り方だけ以前のまま残っていると、「読まれているのに問い合わせが来ない」という報告を毎月続けることになるでしょう。役割を変えたら、指標も同時に差し替える必要があります。
3つ目は、判断の時期をあらかじめ決めておくという話です。ブランディングのように遅れて効くものは、途中経過を見ると「効いていない」ように見えがちです。何週間後に、どの数字が、どれだけたまったら結論を出すのかを着手前に紙に書いておくと、途中で打ち切る判断を避けられます。
なお、オウンドメディアそのものの意味や立ち上げ方はオウンドメディアとは?完全ガイドにまとめました。この記事は、その先にある「で、この施策に何を任せるのか」に絞ってお話しします。
| いまの状況 | 先に読む章 |
|---|---|
| これから始めるので社内に説明したい | 何を担当させるか |
| すでに走っているが成果を説明できない | ブランディングを数字にする |
| 数か月やって続けるか迷っている | いつ判断するかを決める |
| 何から手をつけるか決まらない | 器と中身のどちらが先か |
オウンドメディアに何を担当させるか
役割分担というと、どの施策にどれだけ予算を配るかという話になりがちです。けれども実務で先に効いてくるのは配分ではなく、この施策に何を任せないかを決めることのほうでした。任せないと決めた領域があってはじめて、任せた領域の成果を落ち着いて待てるようになります。

この分類は連携のために作られた
自社で持つメディア、費用を払って枠を借りる広告、第三者からの評判。この3つに分ける整理は、どれが優れているかを競わせるためではなく、担当を割り振るために作られたものでした。
そもそも何のために作られたのか、出自をたどってみます。
概念を日本に持ち込んだ横山隆治氏は、宣伝会議のメディアでこう述べています。「もっと言えば、別に必ず3つを使わないといけない訳ではないのです。なにか無理やり3つ使わないといけないように思っている向きがありますが、そんなことはありません。」
ただしこの発言は、3つのうち好きなものだけ選べばよいという意味ではありません。同氏は直後に、この整理は企業のマーケティングメディアを「漏れなく、ダブりなく」全体像として捉えた上で、何が使えるか、何が効果的かを考えるためのものだと述べています。全体を並べて見たうえで選ぶ、という順番が要点です。
さらに同氏は、自分が提唱したのは3つに整理することだけではないとも語りました。それらを「有機的に連携、連動するようにしましょう」ということだったからです(宣伝会議『AdverTimes.』2024年3月27日、当該記事)。
つまりこの分類は、どれが優れているかを競わせる道具ではありません。担当を割り振るための地図として作られたものでした。
ここから実務的な出発点が決まります。オウンドメディアマーケティングを設計するとき、最初にやることは記事の企画ではなく、手元にある施策を全部並べて、それぞれに何を任せるかを書き出す作業です。
当社は自社サイトの数を数えていない
当社は自社の営業活動について、6つの経路それぞれに役割を割り当てた表を持っています。この表でいちばん説明に使いやすいのは、実は数字が入っている欄ではありません。
| 経路 | 割り当てた役割 | 月次で数える量 |
|---|---|---|
| 個別の接触 | 質。決裁者本人に直接 | 月80〜100人 |
| フォームからの連絡 | 量。見込み客の収集 | 月30〜50社 |
| メールでの継続連絡 | 関心の維持 | — |
| 自社サイト | 信頼の担保 | — |
| 紹介 | 過去の関係先からの引き合い | 月1〜2件 |
| SNS発信 | 指名で探されるようにする | — |
自社サイトの行にある「—」は、記入漏れではありません。この経路には月次で数える量を置かないと決めたという意味です。役割は「相手が当社を調べたときの裏づけになること」であって、そこから何件の問い合わせが来たかは追いかけていません。
この置き方には理由があります。当社は2026年6月に自社メディアの位置づけを見直し、それまで担わせていた「無料ツールの登録を集める入口」という役割を外して、信頼資産と営業の受け皿へ置き換えました。
このとき同時に、無料ツールの登録数を目標から外しています。役割を変えるなら、数える指標も一緒に変えます。
ご自身の会社でこの表を作るときは、まず手元の施策を全部書き出して、月次で数を数えている施策とそうでない施策に分けてみてください。数えていない施策に何を期待しているのかを1行で書けたら、それがその施策の役割です。
検索で取らないと決めた商品がある
当社には、検索で取りにいかないと決めた主力商品があります。任せない範囲を決めるとは、こういう判断のことです。
2026年6月、当社はキーワードの調査をしていて手が止まりました。主力商品にあたるAI最適化まわりの言葉が、検索需要をツールで測定できない水準だったのです。月にどれくらい検索されているのかが分からない以上、その商品を検索経由で取りにいく計画は立てられません。
そこで当社は、この商品については検索集客の対象から外すと決めました。代わりに、AIに引用されること、こちらから直接連絡すること、専門性を示すことの3つで取りにいく形へ変えています。一方で受注に直結する検索は、記事制作の外注まわりのように競合が少なく需要のはっきりした言葉へ寄せました。
ここで補足しておくと、検索需要の推定値も競合性の指標も外部ツールが出した数字であって、実測ではありません。2026年6月時点でそのツールを使ったらそう出た、という限定つきの判断です。ですから「この分野に検索需要がない」と一般化するつもりはありません。
大事なのは判断そのものではなく、判断した記録を残したことのほうだと考えています。後から「やっぱりこの商品も記事で取ろう」と揺り戻しが来たとき、なぜ外したのかを読み返せるからです。
取りにいける需要は認知に偏る
もう1つ、任せる範囲を決めるときに知っておくと役に立つ性質があります。検索という手段で触れられる需要は、購買に近い層ではなく、その手前に大きく偏っているのです。
当社が2026年7月に自社向けのキーワード設計を552件つくり、それぞれを検討の段階で振り分けました。件数では認知が429件で、全体の77.7%を占めています。
さらに推定される検索需要の合計で見ると、偏りはもっと際立ちました。認知の段階が全体の94.5%を占めるのに対し、購入直前にあたる今すぐ客の段階は2.6%しかありません。入口は出口の35倍以上あった計算です。
この偏りは、そのまま担当の割り振りに効いてきます。検索で触れられるのが主に認知段階の人だとすれば、比較検討や購入直前の人に働きかける仕事は、広告やメール、営業活動といった別の経路に任せたほうが早いでしょう。
オウンドメディアに購買直前の刈り取りまで期待すると、いちばん不得意な場所で勝負させることになりかねません。認知の段階から流入を積む具体的な設計はオウンドメディアの集客方法で扱っています。
なお、検討の段階ごとに何を用意するかという設計そのものはカスタマージャーニーの記事で扱っています。数値は自社の設計を機械的に集計した概算で、需要の推定値もツールが出した数字です。
ブランディングの効果を数字にする方法
オウンドメディアの目的を聞かれて「ブランディングです」と答えたあと、「それはいつ、どうやって分かるのか」と重ねて聞かれると、途端に答えに詰まります。この章では、その先を数字で説明するための道具をお渡しします。

上位20サイトが書いていないこと
ブランディングの効果を何で測るかは、検索上位の記事にほとんど書かれていませんでした。実際に数えて確かめています。
2026年8月8日、当社は3つの検索語で上位に出たページを集めました。「オウンドメディアマーケティング」「オウンドメディア ブランディング」「オウンドメディア コンテンツマーケティング 違い」の3つです。
集まった20サイト・見出し455本を、機械的に走査しました。測定・計測・指標・効果検証といった語が見出しに含まれるかを数えるためです。
結果はこうでした。「オウンドメディア ブランディング」で上位に出た6サイトの見出し157本のうち、ブランディングの効果を何で測るかを示した見出しは実質ゼロだったのです。該当したのは2本ありましたが、片方はチェックリストの区分名、もう片方は「成功させるポイント」の4つ目に置かれた一般的な改善の話で、どちらも指標を示すものではありませんでした。
6サイトの構成はいずれも「とは→メリット→ポイント→成功事例」の同じ形で、ブランド認知度が上がる、信頼が蓄積される、といった効果は列挙されます。けれどもそれが起きたことをどう確かめるのかは書かれていません。20サイト全体に広げても測定に触れた見出しは12本しかなく、そのすべてが「KPIを設定する」「効果測定してPDCAを回す」という手順の一項目でした。
あくまで見出しの語を機械的に数えた調査なので、本文で触れているページはあるかもしれません。それでも、読者が目次を見て探せる場所には置かれていなかったことになります。
1位でクリック0が意味すること
では何を見ればよいのでしょうか。当社がまず数えているのは、自社の名前で検索された回数です。
2026年5月6日から8月3日までの90日間について、自社メディアの検索データを取り出し、社名や代表者名を含む検索語だけを機械的に抜き出しました。記事は241本まで積み上がっていた時期です。
| 項目 | 実測値(90日間) |
|---|---|
| 検索結果に出た語の数 | 641語 |
| 表示された回数の合計 | 4,496回 |
| 一覧に現れた指名の検索語 | 1語のみ |
| その語の表示回数 | 25回 |
| その語のクリック | 0回 |
| その語の平均掲載順位 | 1.0位 |
この表でいちばん重要なのは最後の2行です。会社名で検索されたとき、当社のページはすでに1位に出ています。それでもクリックはゼロでした。
順位はもう上げようがありません。足りていないのは順位ではなく、そもそも名前で検索してもらう回数のほうだと数字の形で分かります。ブランディングの課題を「知名度が低い」という感覚のまま置いておくと打ち手が決まりませんが、「90日で25回しか検索されていない」まで下りると、次にやることが見えてきます。
とはいえ、この数字をそのまま受け取るのは危険です。検索データの提供元は、実行回数が極端に少ない検索語を一覧に返しません。ですから正確には「指名検索がゼロだった」ではなく、一覧に現れた指名の検索語が1語だけだったという意味になります。
抜き出しに使ったのも、社名や代表者名を含むかどうかという機械的な文字列の一致で、概算にすぎません。1社を90日測っただけの数字でもあるので、そのまま一般化はできないとお考えください。
名前で探した人はほぼクリックする
名前を知っている人が名前で探しに来たとき、その人はほぼ迷わずページを開きます。同じ90日間について、メディアだけでなくドメイン全体でも測ると、その差がはっきり出ました。
ドメイン全体では指名の検索語が7語現れています。
注目していただきたいのは、社名そのもので検索された場合の反応です。表示56回に対してクリックは35回で、クリック率は62.5%でした。同じ期間のドメイン全体の平均は1.40%ですから、40倍以上の開きがあります。
逆に言えば、名前を知らない人に何回表示されても、この率にはなりません。ブランディングという言葉が指しているのは、この差そのものだと考えると扱いやすくなります。
ただし母数の性格には注意が必要です。このドメイン全体の数字には、当社が別テーマで運営してきた中国語学習の記事群が大きく含まれています。
59万回という表示の大半はそちら由来なので、メディアの成果としてお読みいただくものではありません。ここで比べたいのは絶対数ではなく、指名の検索語とそれ以外の反応の違いです。
今泉の視点:ご相談で「ブランディングを目的にしたい」とうかがったとき、私が最初にお願いするのは、自社名の検索回数を数えて持ってきていただくことです。多くの場合、想像よりずっと小さい数字が出てきます。
それを見ていただくと、話が具体になります。月に数十回しか名前を検索されていないなら、まず取り組むべきは記事の本数ではなく、名前を知る人を増やす経路のほうかもしれません。手元にある数字で現在地を確かめてから方針を決めると、途中でぶれなくなります。
態度変容は6つの指標に分解できる
指名検索は現在地を測るのに向いていますが、それだけでは読者の気持ちの変化までは追えません。もう一段細かく分けたいときの参考になるのが、Googleが広告の効果を測るときに使っている指標の分け方です。
Googleは、クリック数や表示回数といった従来の指標ではなく、広告想起や認知度といった軸で効果を測る仕組みを用意しています。調査を設定する画面にあらかじめ並んでいるのが、次の6つの指標です(Google 広告ヘルプ)。
| 指標 | 何を尋ねているか |
|---|---|
| 広告想起率 | その発信を見た覚えがあるか |
| 認知度 | その会社や商品を知っているか |
| 関連付け | あるテーマでその会社を思い浮かべるか |
| 比較検討 | 候補の1つとして考えるか |
| 好意度 | 良い印象を持っているか |
| 購入意向 | 買いたいと思うか |
この一覧にはほかに自由に作れるカスタム指標があり、実際に1回の調査で選べるのは最大3つまでという制約もありました。とはいえこの6つは、そのまま自社の簡易アンケートの設問名として使えます。
既存のお客様や商談で会った方に「このテーマで思い浮かぶ会社はどこですか」と尋ねれば、関連付けの手応えが分かります。展示会やセミナーの場でも同じ質問が使えるでしょう。
ここでの要点は、ブランディングという一語を6つに割ってみると、どれを狙っているのかが自分でもはっきりするという点です。認知度を上げたいのか、関連付けを取りたいのかで、書くべき記事は変わります。
指名検索を指標にする3つの限界
指名検索は使いやすい指標ですが、万能ではありません。Googleの公式資料に書かれている限界を3つ紹介します。使う前に知っておくと、数字が動かないときに慌てずに済みます。
1つ目は、有名になるほど増分を検出しにくくなることです。Googleが広告キャンペーンの効果測定について書いた資料には「残念ながら、よく知られているブランドは、ブランド キーワードでリフトを検出するのが難しいのは通常のことです。」とあります(Google 広告ヘルプ)。これは有名だと指名検索が伸びないという意味ではありません。もともと検索されている量が多いために、広告による増分だけを取り出すのが難しくなるという話です。
2つ目は、複数の施策を同時に走らせると切り分けが難しくなることです。Googleの測定は、広告を見せるグループと見せないグループを分けて比べる仕組みになっています。同じ資料では、分析が始まる前に対象者がその広告に触れてしまうと比較用のグループが汚染され、差が出にくくなる可能性があると説明されました。
あくまで同じキャンペーンの広告についての注意ですが、考え方は自社の測定にも応用できます。展示会と記事とメールを同時に始めた月に指名検索が伸びても、どれが効いたのかは分かりません。
3つ目は、そもそも数字が拾えないことがある点です。Search Consoleのヘルプには「パフォーマンス レポートの表では、ユーザーのプライバシーを保護するために、まれなクエリは省略されます。」と明記されています(Search Console ヘルプ)。立ち上げたばかりで検索数が少ない時期ほど、指名検索の数字は取りこぼされやすくなります。
精度のハードルも現実的に見ておきましょう。Googleはアンケート方式のブランド効果測定について、回答数が4,100件を下回ると測定精度が低下する可能性が高くなると述べています。同じ方式について「リフトが 2% を下回ると、高い確実性を確保することは難しくなります。」とも記しました(Google 広告ヘルプ)。
いずれも広告の測定についての話です。それでも桁の感覚として、中小企業が自社で同じ精度の調査を組むのは現実的ではないとお分かりいただけます。
だからこそ、当社は厳密な因果の証明をあきらめて、現在地の定点観測に切り替えました。毎月同じ手順で自社名の検索回数を数え、増えているか減っているかだけを見ます。証明はできなくても、進んでいる方向は分かります。
いつ判断するかを始める前に決める
遅れて効くものを扱うときにいちばん多い失敗は、途中経過を見て打ち切ってしまうことです。これを避ける方法は「測らない」でも「無理やり売上に結びつける」でもなく、時期ごとに見る指標を差し替えておくことでした。

4週・8週・12週で指標を差し替える
当社が自社メディアのために作った目標表は、1つの指標を追いかける形になっていません。時期ごとに、見る指標そのものを入れ替える設計にしています。
| 時期 | その時点で見る指標 | 確かめていること |
|---|---|---|
| 4週後 | 検索結果に一度も出ていない記事の本数/週あたりの表示回数 | そもそも見つけてもらえているか |
| 8週後 | 週あたりのクリック数/10位以内に入った語の数 | 読まれ始めたか |
| 12週後 | 検索からの訪問数/相談・資料請求の件数 | 事業の成果につながったか |
この表の肝は、問い合わせ件数を見るのは12週後からだと最初に決めているところにあります。4週目に問い合わせがゼロでも、それは想定どおりであって失敗ではありません。見る指標が決まっていれば、経営層への報告も「4週目の確認事項はここで、達成しています」という形にできます。
ご自身の会社で作るときは、時期の区切りを3つ置いて、それぞれ1行ずつ埋めてみてください。順番としては、見つけてもらえているか、読まれているか、動いてもらえたか、という流れが自然です。細かい指標名より、この時期にはこれを見ないと約束しておくことのほうが効きます。
なお、12週後に見る成果の目標をどう置くかは、事業側から逆算すると根拠を示しやすくなります。考え方は目標記事数の決め方にまとめました。
社内で合意を取るときは、この3つを紙に書いてから始めます。
- 手元の施策を「数える指標がある」「ない」の2つに仕分ける
- 数えない施策に何を期待するのかを1行で書いておく
- 4週後・8週後・12週後に見る指標を1行ずつ決めておく
3つとも埋まっていれば、途中で成果を問われても答えに詰まりません。
見る前に見ない条件を決めておく
もう1つ、数字を見る前に済ませておくと迷いが減る準備があります。見ない条件をあらかじめ決めておくことです。
当社は隔週で自社メディアの数字を点検していますが、その処理には足切りの条件を組み込んであります。まず表示回数が一定回数に満たない検索語は最初から対象外にします。そのうえで、順位帯ごとに別々の合格ラインを当てる形にしました。
順位帯で線を分けているのには理由があります。1本の基準値をすべての順位に当てはめると、上位の記事は甘く、下位の記事は厳しく判定されてしまうためです。上位に出ている記事はもともとクリックされやすいので、同じ数値で測ると問題が隠れます。
数値そのものは自社のデータに合わせて決めたもので、業界の基準値ではありません。ですから真似していただきたいのは数字ではなく、数字を見る前に条件を書いて固定しておくという手順のほうです。見てから「これは母数が少ないから除こう」と考え始めると、都合のよい判断に寄っていきます。
判定できないと効果がないは違う
母数が足りないときは「効果がなかった」ではなく「まだ判定できない」と記録します。当社が実際にやってみて学んだことです。
2026年7月、自社メディアのある記事のタイトルに語を足しました。変更前の28日間で、その記事がいちばん高い順位で出ていた検索語は、表示38回・クリック0回・平均6.2位だったからです。上位に出ているのにクリックされないなら、タイトルの言葉が合っていないのだろうと考えました。
その後90日分をまとめて見ると、同じ検索語は表示49回・クリック0回・平均6.6位でした。ここで「効果がなかった」と結論づけたくなります。
けれども落ち着いて数えると、変更後に積み上がった表示は多くても11回しかありません。しかも90日という期間には、変更前の日数も含まれています。
11回の表示では、クリック率が動いたかどうかを区別できません。そこで当社はこれを失敗ではなく判断保留として記録し、母数がたまるまで結論を出さないことにしました。
ここで「変わらなかったから元に戻そう」と動いてしまうと、答えの出ていない施策を根拠なく打ち消すことになります。ブランディングのように数字が小さい領域では、この取り違えが特に起きやすいと感じました。「効果がなかった」と「まだ判定できない」は、報告書の上では似た顔をしていますが、次にやることがまるで違います。
器と中身のどちらから決めるのか
ここまでの話を実際に始めようとすると、多くの場合この問いにぶつかります。サイトという器を先に整えるのか、記事という中身から作るのか。結論を先にお伝えすると、どちらが先かではなく、器を決めるときに中身の作り方まで一度確かめておくのが実務的な答えでした。

器と中身は指す範囲が違う
社内で話が噛み合わなくなる原因の多くは、オウンドメディアとコンテンツマーケティングという2つの言葉を同じ意味で使っていることにあります。
コンテンツマーケティングの定義は、業界団体が文書で示しました。日本インタラクティブ広告協会によれば、「企業からインターネットユーザーに有益なコンテンツを提供することにより長期的に良い関係を構築することを目指す手法である。」とされています。出典はJIAA『ネイティブ広告ハンドブック 2017』の15ページです。2016年に公開された資料になります。
同協会はあわせて、この手法自体は新しいものではないという留保も添えました。調味料メーカーが自社の調味料を使ったレシピをサイトに載せるようなことは、以前から一般的だったからです。
つまりコンテンツマーケティングは手法や考え方を指す言葉で、オウンドメディアはそれを置く場所を指す言葉です。手法は自社サイトの外でも成立しますし、自社サイトを持っていても手法として成立していない場合があります。
この区別がつくと、社内の会話が整理されます。「オウンドメディアをやろう」という提案は場所の話で、「コンテンツマーケティングをやろう」という提案は進め方の話です。それぞれの詳しい始め方はコンテンツマーケティングの始め方にまとめました。
器の選択は中身の作り方を縛る
器を軽く決めてしまうと、あとから中身の作り方に制約が返ってきます。当社自身がそれを経験しました。
当社は自社メディアにセキュリティ用の追加機能を入れています。安全性を高める目的でしたが、導入後に確かめてみると、外部から記事を更新する経路に3つの制限がかかっていました。
| かかった制限 | 中身の作り方への影響 |
|---|---|
| 特定のタグを含む更新が拒否される | 検索エンジンに構造を伝える書き方を変更 |
| 削除の操作が通らない | 公開後のやり直しに手作業が必要 |
| 画像の送信形式が限られる | 画像の入稿手順を組み直し |
問題は右の列です。中身の設計として決めていたことが、器の都合であとから作り直しになりました。安全性のために入れた機能が、書き方の選択肢を削っていたわけです。
こうした制約は、入れてみるまで分かりません。
ですから当社は2つの備えを置いています。追加機能を一度に複数入れないことと、入れた日と目的を1行で残しておくことです。何かが動かなくなったとき、切り分けが一気に楽になります。
器を選ぶときに見るべきなのは、その器で何ができるかではなく、何ができなくなるかのほうだと考えています。
中身の設計図は1枚で持つ
では中身の側は、どう持っておけばよいのでしょうか。当社の答えは、これから書く計画と、すでに書いた実績を1枚のファイルにまとめておくという形です。
1つの行の左側には、狙う言葉・関連する言葉・その言葉で検索する人が何を知りたいかという設計の情報を並べます。右側に置くのは、公開したURL・公開日・記事の管理番号という結果の情報です。右側が空いている行は、まだ書いていない記事という意味になります。
この形にしている理由は、以前に失敗したからです。設計のファイルと実績のファイルを分けて持っていた時期があり、そのときは公開のたびに実績側だけを更新して、設計側が半年ほど止まりました。同じ1枚に置いておけば、書き終えるたびに設計を見返す流れが崩れません。
器を入れ替えても、この1枚だけは残りました。逆に言えば、器が決まっていなくても中身の計画は今日から作れます。何から手をつけるか決まらないときは、この1枚から始めるのが遠回りに見えて早い道です。
なお、器の側の作り込みについて1つ添えておきます。当社が自社メディア239本の記事内の装飾要素を数えたところ、本文の長さをそろえて比べた場合、上位に出ている記事と下位に沈んでいる記事で要素の個数はほとんど変わりませんでした。見た目を整える作業は読者のために必要ですが、順位を上げるための作業ではありません。詳しくはオウンドメディアデザインの判断基準で扱っています。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
オウンドメディア運用のよくあるご質問
ご相談の場で実際によくいただく質問を4つ選びました。
まとめ
- 最初に決めるのはこの施策に任せない範囲のほうです
- ブランディングを任せるなら指名検索を数えて現在地を測ります
- いつ何を見るかを着手前に決めておくと途中でぶれません
成果を説明できないのは、記事の質が低いからとは限りません。任せた役割と測っている指標がずれているだけ、という場合がよくあります。当社も自社の名前が90日で25回しか検索されていない事実を、数えてはじめて知りました。
次の一歩は決まっています。Search Consoleを開いて、自社名を含む検索語の表示回数を数えてみてください。その数字が出たら、何を任せるかの議論は一気に具体的になります。役割の置き方に迷いが残るときは、街中文学へお気軽にご相談ください。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
