オウンドメディア制作を社内で進めることが決まり、依頼先を探し始めた。けれど候補として挙がってくるのは十数社を並べた比較記事ばかりで、どこも同じように見えてしまう。そんな段階にいる方は少なくありません。
先にお伝えすると、比べるべきは会社の顔ぶれではありません。完成した日に、自社が何を受け取っているかです。当社は月間4,500万セッション級メディアの支援現場で、ここが曖昧なまま公開された例をいくつも見てきました。
この記事では、制作で頼める範囲を3つに分け、依頼先のタイプごとに届くものの違いを整理します。そのうえでパッケージ型の提案の読み方と、引き渡しで受け取るべきものをお伝えします。読み終えたときには、提案書のどこを見ればよいかが分かるはずです。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
先に結論:制作は引き渡されるもので決まります
まず最初に、結論からお伝えします。オウンドメディアの制作を頼むときは、次の3点で整理できます。
- 「制作」で頼めることは3つに分かれます
- 依頼先のタイプによって、届くものが変わります
- 比べる基準は、完成日に自社が受け取るものです
1つ目は、発注する単位の話です。オウンドメディア制作という言葉は、器を作ること、中身を作ること、何を作るかを決めることの3つをまとめて指しています。読者の多くはこれを1つの塊として捉えているため、見積もりを比べられなくなります。
2つ目は、依頼先の違いです。サイトを作る会社と、記事を書く会社と、方針から一緒に決める会社では、得意な領域が異なります。同じ「オウンドメディア制作」という看板でも、実際に届くものは同じではありません。
3つ目が、この記事でいちばんお伝えしたい点になります。公開日に自社が何を持っている状態になるのかを、発注する前に決めておいてください。サイトはできたのに記事が出ない、という状態はここから生まれます。
作ってもらうものではなく、引き渡されるもので選ぶ。この順番だけ覚えて読み進めてください。
オウンドメディア制作で頼める範囲は3つに分かれる
見積もりを比べられないのは、金額の問題ではありません。「制作」という言葉が3つの別々の仕事を指しているためです。「構築代行」「業務委託」など呼び方は各社で違いますが、頼んでいる中身はこの3つのどれかに収まります。

器を作る:サイトの構築とデザイン
1つ目は、入れ物を用意する仕事です。サイトを構築し、デザインを整え、記事を書き込める管理画面を設定するところまでが含まれます。構築サービスとして一式で売られている形も見かけるでしょう。
費用は一度きりで発生することが多く、金額も見えやすい部分になります。見積もりの中でいちばん項目が細かく並ぶのも、たいていここです。
気をつけたいのは、器ができても中身がなければ何も起こらないという点になります。公開日にサイトだけがある状態は、店舗でいえば内装が終わって商品が入っていない状態と同じです。オウンドメディアそのものの全体像は目的から運用までをまとめた記事で扱いました。
中身を作る:記事の企画と執筆
2つ目は、読まれるものを用意する仕事です。どのテーマで書くかを決め、構成を作り、原稿を書いて入稿するところまでが含まれます。
費用は本数と期間で変わるので、器とは金額の出方が違うのです。「初期費用に記事10本を含む」という形の提案もあれば、月ごとの本数で契約する形もあります。
ここで確かめておきたいのは、含まれる本数が尽きたあとどうなるかです。この点はパッケージ型の提案を読む章で詳しく扱います。
何を作るかを決める:目的と読者の設計
3つ目は、そもそも何のために作るのかを決める仕事です。目的を定め、読者を絞り、どのテーマ領域で戦うかを設計します。
この工程は人が考える時間そのものなので、見積もりでは見えにくくなります。それでいて、ここが決まっていないと器も中身も方向が定まりません。GoogleはSEO 業者に依頼する時期について、新しいサイトの開設を計画している段階が最適だと次のように書いています。
「たとえば、サイトの再構築を検討しているとき(早ければ早いほどよい)、または新しいサイトの開設を計画しているときが、SEO 業者の利用を開始するのに最適なタイミングです」。SEO 業者の利用を検討する(Google検索セントラル)
当社が制作のご相談をいただくときも、最初に確認するのはこの3つのどこまでを任せたいかです。ここが決まると、各社の見積もりのうち比べるべき項目がそろいます。器だけを頼むと決めたなら、記事の本数が入っている提案とは金額を並べても意味がないと分かるからです。自社で設計まで進める場合の手順は立ち上げの7ステップをまとめた記事にあります。
| 発注の単位 | 見積書での書かれ方の例 | 任せないと自社に残る仕事 |
|---|---|---|
| 器を作る | サイト構築費・デザイン費・初期設定費 | 制作の手配と確認 |
| 中身を作る | 記事制作費(◯本)・ライティング費 | 毎月の記事づくり |
| 何を作るかを決める | ディレクション費・戦略設計費。項目がないこともある | 方針の判断そのもの |
依頼先のタイプで届くものが変わる
「制作会社」「運営会社」「業者」と呼び方はさまざまですが、どの工程を主戦場にしてきたかで得意な範囲が分かれるのです。前の章の3分解と重ねると、自社に必要な相手が見えてきます。

サイト制作を主戦場とする会社
ウェブサイトを作ってきた会社は、器を作る工程に強みを持っています。デザインの完成度や、表示の速さ、スマートフォンでの見やすさといった部分が持ち味でしょう。
すでに社内に書ける人がいて、入れ物だけが必要な場合には、この選択が合います。デザインにこだわりたい場合も同じです。
確かめておきたいのは、記事の企画や執筆をどこまで請け負えるかという点になります。器の完成が納品のゴールになっている場合、中身は自社で用意する前提です。見積もりに記事の項目がなければ、そう考えてください。
| 依頼先のタイプ | 得意でない工程の埋め方 | 契約の単位 |
|---|---|---|
| サイト制作が本業 | 記事は提携先か自社の持ち込み | 一括の請負が多い |
| 記事制作が本業 | サイトは既製のテンプレートを利用 | 月ごとの本数で契約 |
| 支援・コンサルが本業 | 器も中身も別の会社に手配 | 月額のディレクション |
記事制作を主戦場とする会社
記事を書いてきた会社は、中身を作る工程に強みを持っています。検索されている言葉を調べ、構成を組み、読まれる形に仕上げるところが本業です。
サイトの構築については、既存のテンプレートを使ったり、提携先に任せたりする形が多くなります。凝ったデザインより中身を優先したい場合には、この選択が噛み合います。
確かめておきたいのは、公開後にサイト側を直せるかどうかです。記事は増えるのにサイトの構造が変えられないという状態になると、後から手を入れにくくなります。URLの階層をどう設計するかは、ディレクトリ構造をまとめた記事で扱いました。
支援やコンサルティングを行う会社
3つ目は、何を作るかを決める工程から入る会社です。目的と読者を一緒に決め、テーマ領域を設計し、実行の体制まで組み立てます。
打ち手が見えていない場合や、社内に判断できる人がいない場合には、この形が合うはずです。器と中身は自社で用意することも、別の会社に頼むこともできます。
ただし、この形は自社側にも時間が必要です。方針を一緒に決めるということは、決める会議に出る人が要るということだからです。依頼先の選び方そのものについては、依頼前に決める3つと任せ方の違いをまとめた記事で整理しました。
なお、3つの工程すべてを1社で請け負う会社もあります。窓口が1つで済む利点がある一方、どの工程が本業なのかは見えにくくなるでしょう。実績を聞くときは「似た規模・似た業種で、どの工程から入った案件か」まで尋ねると、得意な領域が分かります。
パッケージ型の提案はここを読む
「オウンドメディア構築パッケージ」のように、一式をまとめた形の提案があります。分かりやすい反面、含まれるものと含まれないものの境目が読み取りにくいのが難点です。確かめる場所を3つに絞ってお伝えします。

記事の本数と期間を確かめる
まず見るのは、記事が何本、いつまでに納品されるかです。ここが書かれていない提案は、器だけのパッケージだと考えてください。
本数が書かれている場合も、その内訳を聞いておきましょう。誰がテーマを決めるのか、原稿の確認は何回までか、公開まで入れてくれるのか。同じ「10本」でも、テーマ選定から入るのか渡したテーマで書くだけなのかで、自社の手間はまったく違います。
あわせて本数を使い切ったあとを聞いてください。追加の単価が決まっているのか、自社で書く前提なのか。ここが空白のまま契約すると、公開から数か月で更新が止まりやすくなります。
デザインをどこまで変えられるか
次に、用意されたデザインをどこまで動かせるかを確かめます。パッケージが安く提供できるのは、多くの場合すでにある型を使い回しているためです。
型を使うこと自体は悪くありません。むしろ早く安く公開できる利点があります。問題は、あとから変えたくなったときにどうなるかです。
聞き方はシンプルで、「公開後にトップページの構成を変えたい場合、どこまで自社でできますか」と尋ねてください。管理画面から動かせるのか、そのつど開発が必要なのかで、その後の自由度が変わります。
資料請求で分かることと分からないこと
資料請求で手に入るのは、提供範囲と実績の概要までです。ここから分かるのは、その会社が3つの工程のどれを主戦場にしてきたかという点になります。
一方で、資料から分からないことのほうが多くあります。誰が担当するのか、自社の業種で成果が出た理由は何か、公開後に何を引き渡してもらえるのか。これらは商談で聞くしかありません。
- この案件は誰が担当し、何人体制になりますか
- 記事の本数を使い切ったあとはどうなりますか
- 公開日に当社へ引き渡されるものを教えてください
複数社の資料を並べると似て見えるのは、書かれている項目がどこも同じだからです。Googleも「聞いた主張や推奨事項について批判的に考え、独自の情報を基に判断を下すようにしてください」と書いています。SEO 業者の利用を検討する(Google検索セントラル)資料は候補を絞る道具として使い、決める材料は商談で集めてください。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
引き渡しで受け取るものを決めておく
公開日に自社が何を持っている状態になるのかを、契約の前に一覧にしてください。当社がサイト制作を伴う支援に入るときも、この一覧を先に握るようにしています。

サイトを自社で直せる状態か
1つ目は、公開後に自社の手で記事を出せるかです。管理画面から記事を追加し、写真を差し替え、誤字を直せる。この当たり前に見えることが、意外と確認されていません。
確かめ方は簡単で、引き渡しの場で実際に1本入稿させてもらってください。操作してみると、どこまで自社でできてどこから依頼が必要かが体感で分かります。
あわせて、直せる範囲の境目を聞いておきましょう。記事の追加はできるがトップページは触れない、という設計はよくあります。それ自体は問題ではありませんが、知らないまま公開すると「頼まないと何も変えられない」と後で気づくことになります。
権限とアカウントを自社名義にする
2つ目は、当社の経験上もっとも見落とされやすい項目です。サイトを見るための各種の権限が、自社の名義になっているかを確かめてください。
とくに Search Console は注意が要ります。Search Console は、自社サイトが検索でどう扱われているかを見るGoogleの無料ツールです。ここで「所有者」という立場について、Googleは次のように説明しています。
「所有者は、Search Console でプロパティを完全にコントロールできます。他のユーザーの追加と削除、設定、すべてのデータの表示、すべてのツールの利用が可能です」。所有者、ユーザー、権限の管理(Search Console ヘルプ)
所有者には2種類あり、「どちらも同じ権限を持ちます」とされています。まず確認済み所有者は「所有権を証明するトークン(ウェブサイトにアップロードされた HTML ファイルなど)を使用してプロパティの所有権を確認した人」です。一方、委任された所有者は「確認済み所有者が、確認トークン(HTML ファイルや HTML タグなど)を使用せずに所有権ステータスを付与した人」を指します。
権限が同じなら、どちらでもよさそうに思えるかもしれません。ただし同ヘルプの所有者の説明には、見落としたくない一文があります。「プロパティには 1 人以上の確認済み所有者が必要です。ユーザーは確認済み所有者のいないプロパティにはアクセスできません」という記述です。
制作会社がトークンを設置した場合、確認済み所有者はその会社になります。自社側に確認済み所有者が1人もいない状態でその所有権がなくなると、残った人はアクセスできなくなります。引き渡しのときは、自社の担当者が確認済み所有者として登録されているかを見てください。
| 受け取るもの | 確かめ方 | 渡されていないと起きること |
|---|---|---|
| サイトの管理画面 | 引き渡しの場で1本入稿してみる | 記事を出すたびに依頼が必要になる |
| Search Console の所有者 | 自社の担当者が確認済み所有者か | 検索の状況を自社で見られない |
| アクセス解析の管理権限 | 自社アカウントが管理者か | 数字を自社で確認できない |
| ドメインとサーバーの契約 | 契約名義と支払い元が自社か | 移転や更新が自社で決められない |
| 制作過程の資料 | キーワード一覧・設計メモ・デザインの元データ | 次の会社に頼むとき一からになる |
制作の過程で作られた資料を受け取る
3つ目は、作る過程で生まれた中間の成果物です。完成したサイトだけを受け取って終わりにしないでください。
調べたキーワードの一覧、記事ごとの設計メモ、デザインの元データがこれに当たります。いずれも制作会社の手元にあることが多いのですが、次に何をするかを決めるための材料でもあります。手元にあれば、社内で書くときも別の会社に頼むときも、同じ土台から始められるのです。
受け取り方は契約に一文入れておくだけで足ります。「制作の過程で作成した資料一式を、公開時に電子データで引き渡す」。この一文があるかないかで、1年後の自由度が変わります。
公開後に止まらないための引き継ぎ
当社がご相談を受けるなかで多いのは、公開した月から更新が止まってしまう状態です。サイトも記事もできているのに、次の1本が出ない。誰がやるかを決めていないという一点が原因になります。

最初の3か月を誰がやるか
当社がご相談を受ける範囲では、公開直後の3か月にいちばん人手がかかります。記事を出し続けながら、うまくいかない部分を直していくことになるからです。
ところが多くの場合、この期間の担当が決まっていません。制作の契約は公開で終わり、社内の担当者は通常業務に戻る。結果として、誰も次の記事に着手しないまま時間が過ぎていきます。
防ぎ方は、制作の契約を結ぶ時点で、公開後3か月分の予定まで一緒に決めておくことです。何本出すか、誰が書くか、誰が確認するか。この3つが埋まっていれば、公開日が終わりの日になりません。
記事の供給が止まる理由
納品された10本を出し終えた時点で、次のテーマの一覧が手元にないと、担当者は一から考えることになります。他の業務に押されて後回しになり、そのまま止まってしまうのです。
公開後に更新が止まる原因は、これ以外にもいくつかあります。原因の分類はオウンドメディアの全体像をまとめた記事で扱いました。ここでは制作の発注で防げる部分だけをお伝えします。
だからこそ、前の章でお伝えしたキーワードの一覧を受け取っておくことが効いてくるのです。書くテーマの候補が並んでいれば、次の1本に取りかかるまでの距離が短くなります。公開したのに伸びないときの診断は、集客の原因を切り分ける記事にまとめました。
運用に切り替えるタイミング
制作と運用は、契約としては分けて考えられます。作るところまでを1社に頼み、続けるところは別の形にするという選び方もできるのです。
切り替えを考える目安は、公開から3か月ほど経って、自社で回せるかどうかが見えてきた頃になります。記事が予定どおり出ているなら内製を続け、止まっているなら外部の手を借りる。実際に動かしてみないと、どちらが向いているかは分かりません。
運用を任せる場合の見方は運用代行の選び方をまとめた記事で扱いました。制作の段階で「その後は別途ご相談」となっている場合ほど、早めに次の体制を考えておいてください。
今泉の視点:制作のご相談を受けるとき、私が最初にお聞きするのは「公開日の翌週、誰が何をしますか」です。ここに答えがある会社は、その後も記事が出続けます。
以前、立派なサイトができあがったのに半年間まったく更新されていないメディアを引き継いだことがありました。担当の方は書きたい気持ちをお持ちでしたが、次に何を書けばよいのかが分からなかったのです。制作時に作ったはずのキーワードの一覧が、手元に残っていませんでした。
作ってもらうものを増やすより、渡してもらうものを1つ増やすほうが、その後の1年が変わります。
オウンドメディア制作についてよくあるご質問
まとめ
オウンドメディア制作で頼めることは、器を作る・中身を作る・何を作るかを決めるの3つです。依頼先のタイプによって得意な工程が違うため、自社に必要なのがどれかを先に決めておくと、提案を同じ土俵で比べられます。
そして比べる基準は、完成日に自社が受け取るものです。サイトを直せる状態か、権限が自社名義か、制作の過程で作られた資料が手元に残るか。ここが揃っていれば、その後の1年を自社で動かせます。
- 頼める範囲は器・中身・設計の3つに分かれます
- 依頼先はどの工程が本業かで届くものが変わります
- 比べる基準は完成日に自社が受け取るものです
まずは検討中の提案について、引き渡される項目を書き出してみてください。書き出せない部分があれば、それが商談で聞くべきことになります。範囲の決め方から迷われている場合は、そこからご一緒します。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
