「オウンドメディアの費用を調べたら、無料から数百万円まで出てきて、結局いくら見ておけばいいのか分からない」。予算を組もうとして、この壁に当たる方は少なくありません。相場の幅が広すぎて、自社がどこに当てはまるのか判断できないのです。
街中文学は、月間4,500万セッション級メディアの支援実績を持つ立場から、オウンドメディアの立ち上げと予算づくりに立ち会ってきました。金額の目安より先に決めるべきことがある、と毎回お伝えしています。
それは費用が3か所で発生していて、提案書に載るのはそのうち2か所だけだということです。この記事を読めば、載らない費用の数え方が分かり、自社の予算を決めて社内で説明できるようになります。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
先に結論:費用は3か所で発生します
調べても金額の幅が広すぎて決められない、という状態が続いているなら、先に押さえてほしいことが3つあります。
1つ目は、費用が発生する場所が3か所あることです。提案書に書かれるのは立ち上げの費用と続けるための費用の2つですが、実際にはもう1か所、自社の中でも費用が発生しています。打ち合わせに出る時間、原稿を確かめる時間、社内で承認をもらう時間がこれにあたります。
2つ目は、2年目から費用の中身が変わることです。1年目は記事を増やす費用が中心ですが、記事が増えるほど古くなった記事の手入れが積み上がっていきます。1年目と同じ金額を2年目に置くと、新しく書く分と手を入れる分のどちらかが削られやすくなります。この手入れの費用も、提案書には書かれていません。
3つ目は、回収を総額ではなく1件あたりで見ることです。「総額をかけて元が取れるか」は判断しづらいものですが、「問い合わせ1件を得るのにいくらかかったか」なら他の方法と並べて比べられるでしょう。
| 押さえること | 見落とすとどうなるか | この記事のどこ |
|---|---|---|
| 費用は3か所で発生する | 提案書の合計額を総額だと思い込む | 1章・2章 |
| 2年目から中身が変わる | 2年目に新規と手入れが枠を取り合う | 3章 |
| 回収は1件あたりで見る | 続けるか変えるかを判断できない | 4章 |
この記事では、この3つをそれぞれ数える手順までお伝えします。金額の目安そのものは、すでにお持ちの提案書や後半でご紹介する記事に譲り、ここでは自社の予算を1つ決めて社内で説明できる状態を目指しましょう。
オウンドメディアの費用が発生する3か所
オウンドメディアの費用は、立ち上げ・運用・社内の3か所で発生します。提案書に載るのは前の2つだけなので、3つ目を自分で足さないと総額を見誤ってしまうのです。順に見ていきましょう。

立ち上げのときにかかるもの
立ち上げの費用は、最初の一度だけ発生するものです。設計・構築・最初の記事という3つの仕事に対して支払います。
ここで金額を大きく動かすのは、3つのうちどこまでを頼むかです。設計から任せるのか、設計は自社で決めて構築だけ頼むのかによって、同じ「オウンドメディア制作」という言葉でも中身がまるで違うものになります。
頼める範囲の分かれ方と、公開日に自社へ何が引き渡されるべきかはオウンドメディア制作の依頼先をまとめた記事で詳しく整理しました。範囲の決め方はそちらに譲り、本記事は費用の数え方に絞ってお伝えします。
続けるあいだかかり続けるもの
続けるための費用は運用費用とも呼ばれ、毎月または毎年、止めるまで発生し続けるものです。こちらが総額に効いてきます。
運営費として毎月出ていくのは、サーバーやドメインといった維持費、記事を作る費用、数字を見て直す費用の3つです。このうち金額が大きいのは記事を作る費用で、月に何本作るかがそのまま月額に反映されます。
ここで気をつけたいのが、同じ価格が並んでいても、含まれる仕事の幅はまったく違うことです。記事を作って納品するだけの契約と、公開後の数字を見て直すところまで含む契約では、同じ金額でも受け取るものが変わります。
月額の目安と、契約に何が含まれているかを確かめる項目はオウンドメディア運用代行の費用相場をまとめた記事にまとめてあります。料金体系そのものの違いはSEO対策費用の相場と内訳をまとめた記事をご覧ください。
見積書に載らない社内の費用
3つ目が、自社の中で発生する費用です。請求書は届きませんが、それでも発生しています。
具体的には、打ち合わせに出る時間、届いた原稿を読んで確かめる時間、修正の指示を書く時間、社内で承認をもらう時間、写真や資料を用意する時間などです。どれも短く見えますが、月に何度も繰り返されます。
この3か所を並べると、次のようになります。
| 発生する場所 | いつ発生するか | 見積書に載るか |
|---|---|---|
| 立ち上げ(設計・構築・最初の記事) | 最初の一度だけ | 載る |
| 運用(維持・記事制作・改善) | 止めるまで毎月 | 載る |
| 社内(確認・指示・承認・素材) | 止めるまで毎月 | 載らない |
予算を組むときは、この表の3行目を自分で足してください。提案書を何社分集めても、3行目は誰も書いてくれません。次の章で、この3行目をどう数えるかをお伝えします。
社内で発生する費用を数える
見積書に載らない社内の費用は、数え方さえ決まれば金額にできます。ここを数えておくと、自社でやる場合と任せる場合を同じ土俵で比べられるようになるでしょう。3つの角度から見ていきましょう。

数えるのは回数と1回あたりの時間
社内の費用は、月に発生する回数と、1回あたりの所要時間をかけ合わせて求めます。時給をかければ金額になります。
数える対象は、定例の打ち合わせ・原稿の確認・修正の指示・社内の承認・素材の用意の5つです。この表をそのまま埋めてみてください。
| 項目 | 月の回数 | 1回の分数 | 月の合計(分) |
|---|---|---|---|
| 定例の打ち合わせ | |||
| 原稿の確認 | |||
| 修正の指示 | |||
| 社内の承認 | |||
| 写真や資料の用意 |
埋め方の例をお見せします。月4本の記事を作る契約なら、原稿の確認は月4回です。1本を読んで直すところまでで40分かかるとすれば、この行は月160分になります。
全部の行が埋まったら、合計の分数を60で割って時間に直し、そこに時給をかけてください。月160分なら約2.7時間です。年額にするなら、出た金額を12倍します。
時給は、担当者の月給を月の稼働時間で割れば十分です。正確な原価計算をしたいわけではなく、桁を知りたいだけだからです。
この金額が出ると、自社でやる場合と任せる場合をはじめて同じ土俵に並べられます。数えないまま「自社でやれば安い」と決めてしまうと、比べる相手のいない判断になってしまうのです。
自社で作った分も金額に数えます
自社の人が動いた分を金額に数える考え方は、税務のルールのなかにもあります。「大げさではないか」と感じる方もいるかもしれませんが、公のルールがそう定めているのです。
国税庁がソフトウエアの取得価額について示している説明では、自社で製作した場合の金額を次のように定めています。「製作に要した原材料費、労務費および経費の額」に、事業に使うために直接かかった費用を加えたもの、という計算です。No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数(国税庁)
ここで目を留めてほしいのが労務費という言葉です。外に払ったお金がゼロでも、自社の人が動いた分は金額に含めて数える、という考え方がここに表れています。
ただし、この説明はソフトウエアについてのものです。オウンドメディアの制作費がこれにそのまま当てはまるわけではありません。サイトの制作費をその年の経費にできるのか、資産として何年かに分けるのかは中身によって分かれるので、実際の処理は顧問税理士や税務署に確かめてください。
本記事でお伝えしたいのは処理の仕方ではなく、自社の人が動いた分を金額として数える考え方が、公のルールのなかにもあるということです。社内で予算を説明するとき、この考え方は使えます。
効いてくるのは時間より返す速さ
当社がオウンドメディアのご支援に入るとき、社内の負担についてお伝えしているのは時間の量より、返すまでの日数のほうが効いてくるということです。ここは意外に思われることの多い点です。
原稿の確認そのものは、先ほどの例なら1本40分でした。ところが、その40分を取るのが5日後になると、その月の公開はまるごと後ろにずれます。作業時間は40分でも、止まっていたのは5日間です。
公開が後ろにずれれば、検索で見つけてもらえるようになる時期も、問い合わせが増え始める時期も同じだけ後ろにずれていきます。止まった日数は、そのまま成果の遅れとして返ってくるのです。
ですから当社は、時間の量を尋ねるより先に返す日数の上限を数字で決めていただくようお願いしています。「原稿を受け取ってから3営業日以内に返す」といった形で、契約前に決めておく取り決めです。
- 月に何時間使えるかではなく、何日以内に返せるかで考えます
- その日数を「◯営業日以内」と数字で決めて、契約前に相手と共有します
- 返せなかった月が2回続いたら、期限そのものを見直します
日数を決めておくと、守れなかったときにすぐ気づけます。気づけば、窓口を替えるのか任せる範囲を広げるのかを、その時点で選べるのです。
任せる範囲の広げ方についてはSEO対策費用の相場と内訳をまとめた記事で扱いました。社内で人が動かず取り組みが止まってしまう理由はオウンドメディアが続かない理由をまとめた記事をご覧ください。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
2年目から費用の中身が変わる
予算を組むときに見落とされやすいのが、2年目から費用の中身が変わるという点です。金額は同じでも、その中で何をするかが入れ替わっていきます。3つに分けて見ていきましょう。

1年目は記事を増やす費用が中心
立ち上げから1年ほどのあいだは、記事を増やすことに費用のほとんどが向きます。この時期はそれで正しいのです。
記事がまだ少ない段階では、検索から入ってくる入口そのものが足りていません。まずは狙った言葉ごとに記事を用意して、入口の数を確保する必要があります。
ですから1年目の予算は、月に何本作るかで組み立てられます。本数と単価がわかれば月額が決まるので、見積もりも比較的シンプルになるでしょう。
この段階で意識しておきたいのは、この組み立て方が続くのは1年目までだということです。それを知らずに2年目の予算を立てると、次の項目で説明する問題が起きてしまうのです。
2年目は手入れの費用が積み上がる
2年目に入ると、すでに公開した記事に手を入れる仕事が積み上がってきます。記事が増えれば増えるほど、この仕事も増えていくでしょう。
手を入れる理由は3つあります。書いた当時の情報が古くなること、公開後に順位が下がった記事が出てくること、他のページへのリンクが切れたり内容とずれたりすることです。どれも、記事を作った時点では発生していなかった仕事になります。
ここで起きるのが予算の押し合いです。1年目と同じ金額を2年目に置くと、新しく書く分と手を入れる分が同じ枠を取り合います。そうなると、どちらかが削られやすくなるのです。
当社がオウンドメディアの予算のご相談を受けるときは、1年目の予算と2年目の予算を別々に作っていただくようお伝えしています。同じ金額を横に並べるのではなく、2年目は中身の割り振りから作り直すという考え方です。
| 時期 | 決めておくこと | 決めないと削られるほう | 放置すると起きること |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 月に何本作るか | — | 入口の数が足りないまま伸び悩む |
| 2年目以降 | 新しく書く本数と手を入れる本数の割合 | 手入れのほう | 古い記事から順位が下がり、書いた分と相殺される |
割合に決まった正解はありません。大切なのは、2年目に入る前にこの割合を話し合っておくことです。話し合わないまま2年目を迎えると、作った本数は目に見えるのに対して、手を入れなかった記事が沈んでいくことには気づきにくくなります。
提案書で確かめる1つの質問
提案を受けている段階でこれを確かめるには、質問を1つ用意しておけば足ります。専門的な知識がなくても使える質問です。
「記事が50本になった時点で、月に何本を新しく書いて、何本に手を入れる想定ですか」
この質問に具体的な数字で答えられる提案は、公開後に何をするかまで考えられています。反対に、答えが出てこない提案は、記事を増やす費用しか見ていないと考えてよいでしょう。
あわせて「その手入れは今回の見積もりに含まれますか」も確かめてください。手入れが別料金になっている場合、2年目から想定していなかった費用が乗ってきます。
見積もりを取るときに自社から何を渡せば金額の精度が上がるかは、SEO見積もりの取り方をまとめた記事で整理しました。渡す情報が細かいほど、返ってくる金額の幅は縮んでいきます。
使った費用をどう回収するか
使った費用が見合っているかは、総額ではなく問い合わせ1件あたりに直すと判断できます。ここが決まっていないと、続けるか組み立てを変えるかをいつまでも選べません。回収の見方を3つに分けてお伝えします。

1件あたりいくらで見ると比べられる
費用対効果を見るときは、総額ではなく1件あたりに直してください。総額のままでは、高いのか安いのか判断する手がかりがありません。
計算は単純です。その期間に使った費用の合計を、その期間に得られた問い合わせの件数で割ります。ここで使う費用の合計には、前の章で数えた社内の時間も入れてください。
1年目の総額であれば、立ち上げの金額+月額×12か月+社内費用の年額で出せます。社内費用の年額は、前の章で出した月の金額を12倍したものです。稟議に書くのはこの数字になります。
1件あたりの金額が出ると、他の集め方と横に並べられるようになります。展示会に出たとき、広告を出したとき、紹介でいただいたときについても、同じように1件あたりを出してみてください。自社にとってどれが向いているかが見えてきます。
さらに一歩進めるなら、そのうち何件が受注につながったかまで見てください。問い合わせ1件あたりの金額が高くても、受注率が高ければ結果として安く済んでいることがあります。
広告費と性質が違うところ
ただし、1件あたりの金額だけで並べると見落とすものがあります。オウンドメディアの費用は、広告費と性質が違うという点です。
広告は、出稿を止めればその日から表示されなくなります。使った費用はその期間の集客に使われ、そこで終わりです。一方で記事は、公開したあとも残り続けます。
| 見る点 | 広告 | 記事 |
|---|---|---|
| 止めたとき | その日から表示されなくなる | そのまま残る |
| 効果の出方 | 出した期間に集中する | 時間をかけて積み上がる |
| 翌年への持ち越し | 持ち越さない | 入口として働き続ける |
| 放っておくと | 費用が発生しない | 情報が古くなり順位が下がる |
つまり1年目に作った記事は、2年目も3年目も入口として働き続けるということです。ですから2年目の1件あたりの金額を計算するときは、その成果に1年目の記事も効いていることを頭に入れておいてください。
もっとも、これは「作れば永久に効く」という話ではありません。前の章で見たとおり、情報が古くなれば手を入れる必要が出てきます。残り続けるからこそ、手入れの費用が要るという関係になっているのです。
いつ判断するかを先に決める
回収の見方が決まったら、最後にいつ判断するかを先に決めておきます。始める前に決めておくのが大切なところです。
始めたあとに決めようとすると、判断はまず動きません。数字が伸びていないときは「もう少し待てば」と思いますし、少し伸びているときは「この調子で」と思うためです。どちらに転んでも、決める理由が出てこないのです。
中小企業基盤整備機構が開業時の集客について示している案内にも、同じ考え方が出てきます。「1週間や1ヶ月毎などに定期的にその数を集計して、方法別に費用対効果を測定してください。費用対効果が良いものは継続をし、悪いものは改善するか場合によっては終了することが重要です。」開業前にやっておきたい集客販促(J-Net21・中小企業基盤整備機構)
ここで継続・改善・終了という3つの行き先が示されている点に注目してください。判断とは続けるか止めるかの二択ではなく、間に改善が入るという整理です。
ただし、いま引用した箇所が想定しているのは、チラシのクーポンのように反応をすぐ数えられる方法です。集計の周期をそのままオウンドメディアに当てはめることはできません。1か月ごとに数字を見るのはよいのですが、その周期で終了を判断すると、成果が出る前に打ち切ることになってしまいます。
ですから始める前に、次の3つを紙に書いておいてください。
- いつ見るか(公開から何か月後か)
- そのとき何の数字を見るか(検索からの訪問数か、問い合わせの件数か)
- どうなっていたら続けて、どうなっていたら組み立てを変えるか
3つ目は「止める」ではなく「組み立てを変える」と書いておくことをおすすめします。伸びていない原因が記事の本数ではなく、狙う言葉の選び方や公開後の手入れにあることも多いためです。組み立てを見直せば動き出す場合があります。
判断の材料をそろえる意味でも、始める前に計測の仕組みを入れておいてください。数字が残っていなければ、判断の時期が来ても見るものがありません。
今泉の視点:止まってしまったメディアを見せていただくと、記事が足りないのではなく、書いた記事に一度も手が入っていないことのほうが多いのです。1年目に一生懸命作った記事が、2年目に誰にも触られないまま置かれています。
その状態になった会社に理由を伺うと、たいてい「手を入れる予定がそもそも予算に入っていなかった」という答えが返ってきます。担当の方が怠けたわけではなく、費目が最初から無かったのです。
ですので私は、予算のご相談では2年目の話を先にします。1年目の本数を決める前に、2年目に何本へ手を入れるかを先に置いていただくのです。順番を逆にするだけで、1年目に作る本数も現実的なところに落ち着きます。
オウンドメディアの費用についてよくあるご質問
まとめ
オウンドメディアの費用は、立ち上げ・運用・社内の3か所で発生します。提案書に載るのは前の2つだけなので、社内で発生する分は自分で数えて足す必要があります。数え方は、月に何回・1回何分かを書き出して時給をかけるだけです。
もうひとつ押さえておきたいのが、2年目から費用の中身が変わることです。記事が増えるほど手入れの仕事が積み上がるため、1年目と同じ配分では新しい記事か手入れのどちらかが削られてしまいます。
提案を受けている段階なら、まず1つだけ質問してみてください。「記事が50本になった時点で、月に何本を新しく書いて、何本に手を入れる想定ですか」。この一問の答えで、その提案がどこまで先を見ているかが分かります。
コンテンツ監査からトピッククラスター設計、KPI・CVR設計まで、検索流入と問い合わせにつながるメディア戦略を整えます。記事は増えたのに成果が伸びない、という企業向けのコンサルティングです。
