「その費用、社内でやれば浮くんじゃないの」。上司からそう言われて、返す言葉に詰まった経験はないでしょうか。インハウスSEOのメリットとデメリットの一覧なら、もう何度も目にしたはずです。それでも決められないのは、自社では誰が何を担当することになるのかが、どこにも書かれていないからだと思います。
当社は大手の転職エージェントで、サイトの構造や表示速度を整えるテクニカルSEOの業務設計と施策立案を担当してきました。この記事では、インハウスSEOで社内に残す工程の決め方と、体制に必要な4つの役割をお伝えします。
あわせて、検索結果に並んでいた11ページを1件ずつ数えて分かったことや、当社が自社メディアで実際に何回書き直しているかという記録もお出しします。読み終えたときには、来週の会議に出せる計画の形が見えているはずです。
「書く人がいない」「AIの品質が不安」という段階からご相談いただけます。調査・執筆・確認・納品までの進め方と品質基準を13ページの資料にまとめました。
先に結論:全部を社内に戻す必要はありません
まず最初に、結論からお伝えします。
- インハウスSEOは、全部の作業を社内でやることではありません
- 体制は人数からではなく、4つの役割から決めます
- 続くかどうかは、始めた日ではなく3か月後に決まります
1つ目は、インハウスSEOのゴールが「外注費をゼロにすること」ではないという点です。実際に自社サイトを運用している会社を調べると、一部を外に出しながら回している形がいちばん多く見つかります。大事なのは作業の場所ではなく、どの言葉で戦うかや、順位が下がったときに直すかどうかといった判断が社内にあるかです。
2つ目は、体制を人数で考えないほうが早いという点です。「何人必要ですか」と聞かれることが多いのですが、責任者、コンテンツ、技術、分析という4つの役割で見たほうが、いま何が足りないのかがはっきりします。役割で穴を見つけると、その穴は増員の稟議にもそのまま書けます。
3つ目は、内製化が続くかどうかは3か月後に判定されるという点です。仕組みを作った時点では何も分かりません。3か月たったときに、判断の記録や見直した跡が残っているかどうかで決まります。当社自身、作った仕組みが動いていたのかを後から確かめられなかった経験があり、この見方にたどり着きました。
| いまの状況 | 先に読むとよい章 |
|---|---|
| 外注中で、費用や体制を見直したい | 社内に残す工程の見分け方 |
| これから社内で始める | 体制を組む4つの役割 |
| 始めてみたが、動きが止まっている | 始める順番と続け方 |
インハウスSEOとは社内でSEOを回すこと

まず、インハウスSEOという言葉が何を指すのかを整理します。あわせて、実際にどれくらいの会社が社内でSEOを回しているのか、そしてなぜいま内製化の話が増えているのかまで見ていきましょう。
外注との違いは判断がどこにあるか
インハウスSEOとは、検索エンジンからの集客を増やす取り組みを、社外の会社に任せきりにせず自社の中で進めることです。インハウス(in-house)は「社内の」という意味で、SEO内製化と呼ばれることもあります。
外注との違いは、手を動かす人が社内にいるかどうかではありません。分かれ目になるのは、判断が社内にあるか社外にあるかです。どの言葉で記事を作るか、順位が下がったときに直すか様子を見るか、こうした判断を自社で下していれば、原稿の一部を外に出していてもインハウスSEOと呼べます。
逆に、月次のレポートを受け取って「ではそれでお願いします」と返すだけの状態は、社内に担当者がいても判断は社外にあります。ここを取り違えると、人を採用したのに何も変わらなかった、という結果になりかねません。
| 形 | 判断する人 | 手を動かす人 |
|---|---|---|
| インハウスSEO(内製) | 自社 | 自社 |
| セミインハウス(半内製) | 自社 | 自社と外部で分担 |
| 外注 | 外部の会社 | 外部の会社 |
真ん中のセミインハウスは、判断を自社に置いたまま、手が足りない工程だけを外に出す形です。この記事でおすすめしたいのも、実はこの形になります。理由は次の項目で見ていきましょう。
すべて内製の会社は多くありません
「インハウスSEOにする」と決めた人の多くは、外注をやめて全部を社内に引き取る姿を思い浮かべます。ところが実際に運用している会社を調べると、その形は主流ではありません。
BtoB企業のマーケティングの戦略設計に関わる担当者330名への調査では、自社サイトの運用体制について「最多は『一部を外注しながら運用(56.7%)』で『完全に内製(24.2%)』と合わせると8割を超える」という結果が出ています。株式会社ベーシックが2025年4月30日から5月1日にかけて実施し、同年12月に公開した調査です(調査概要)。
この数字の読み方には注意が必要です。回答したのはBtoBでマーケティングの戦略設計に関わる人たちなので、社内にマーケティングの機能がある会社に偏ります。日本企業全体の平均ではありません。それでも、実際に手を動かしている層の6割近くが「一部を外注しながら」という形を選んでいる事実は、目標設定の参考になります。
つまり、インハウスSEOのゴールは外注費をゼロにすることではないのです。主導権を自社に取り戻したうえで、どこを外に出したままにするかを自分で決められる状態が、多くの会社が実際にたどり着いている場所だと言えます。
内製化が進んでいる背景にあるもの
内製化への関心が高まっているのは、SEOに限った話ではありません。総務省の令和8年版情報通信白書は、システム開発について「システム開発を自社主導で実施している(中略)と回答したのは46.0%となっていた。一方で、海外では自社主導での開発を行っていると回答したのは約80%となっており、日本と大きな差があった」と報告しました。2026年1月から2月にかけて、日本の515社へ聞いた調査です。前年版の同じ設問では35.7%でしたので、1年で10ポイント以上動いた計算になります。
この46.0%には、開発の一部を外部に出しながら自社主導で進めている企業も含まれています。全部を自前でやっている会社だけを数えた数字ではありません。
ただし、これはシステム開発の数字であってSEOの数字ではないのです。調査の対象も、従業員10名以上ですでにデジタル化に着手している企業の管理職以上に限られており、日本企業全体の平均ではありません。それでも、外に出していた仕事を社内へ戻す動きが、少なくともシステム開発では起きていることは読み取れます。
生成AIが広まっても、SEOでやるべきことは大きく変わっていません。Googleは2026年7月に更新したガイドで「手短に言えば、有効です。Google 検索の生成 AI 機能は、コアとなる検索ランキングと品質システムに根差しているため、SEO のベスト プラクティスは引き続き有効です。」と述べています。やるべきことが根本から入れ替わったわけではないので、いま社内に知識を溜めておく判断は無駄になりません。
費用のほかに、外に出す相手を選ぶ段階では担当者が見えにくい、という事情もあります。当社が2026年8月9日に「SEOコンサルとは」の検索結果1ページ目にあった自然検索8件を1件ずつ開いたところ、担当するコンサルタントの氏名や経歴を公開ページから確かめられたのは1件でした。良し悪しの話ではなく、発注前に分かる情報がその程度だということです。
外部のコンサルタントが実際に何をしているのかを先に知りたい場合は、SEOコンサルティングとは何をする仕事かもあわせてご覧ください。任せている中身が見えると、社内に戻す範囲も決めやすくなります。
SEOを工程に割ると残すものが見えます

インハウスSEOでいちばん難しいのは、社内でやる範囲を決めることです。SEOをひとかたまりの仕事として見ているうちは、全部を引き取るか全部を任せるかの二択にしかなりません。ここでは工程に割ったうえで、社内に残すものを見分ける物差しをお渡しします。
11件が答えていない問い
この判断に使える材料は、そもそも世の中に多くありません。2026年8月9日に「インハウスSEO」の検索結果に並んでいた11ページを1件ずつ開き、書かれている内容を数えた結果が次のとおりです。
| 書かれていた内容 | 該当したページ数 |
|---|---|
| 社内で必要になる時間の目安 | 11件中3件 |
| 必要な人数を数字で明示 | 11件中4件 |
| 役割の分け方を職種の名前で提示 | 11件中7件 |
| 自分の会社がSEOをどう回しているかの開示 | 11件中0件 |
費用を金額で書いていたページは7件ありました。ただし、その金額が何社を調べた結果なのかを書いていたページはゼロ、いつ時点の話なのかを書いていたのは1件だけで、それも有料ツールの月額に付いた注記でした。金額の幅だけが並んでいる状態です。
なお、必要な人数を「明示」と数えたのは、推奨でも費用試算の前提でも、数字が書かれていれば該当としています。「複数名」「少人数」のように数字がないものは含めていません。
他社の記事の良し悪しを言いたいのではありません。お伝えしたいのは、「うちの会社にできるか」を判断する材料が、探しても出てこないのが普通だということです。だからこそ、判断は借りてくるものではなく、自社の工程を見て自分で下すことになります。
失敗がいつ現れるかで工程を分ける
では、どの工程を社内に残せばよいのでしょうか。判断の物差しとしておすすめしたいのは、難易度でも専門性でもなく、その工程で失敗したとき、いつ気づけるかです。
当社は自社メディアの記事制作を社内で回していますが、作業を効率化していくなかで「削ってよかったもの」と「削ってはいけなかったもの」がはっきり分かれました。削ってよかったのは、工程を2つの区切りに分ける、大きな資料を丸ごと開かず必要な部分だけ取り出す、といった段取りの工夫です。品質の基準はひとつも下げずに時間だけが減りました。
反対に、削らないと決めている工程が4つあります。公開前の品質評価、引用が原典と一致しているかの照合、公開済みの全記事に対する重複の確認、そして調査と一次情報の収集です。共通しているのは、手を抜いてもその場では何も起きず、公開後に問題が出てくるという性質でした。実際、重複の確認を数本に絞った回は、公開後に既存記事との重なりが見つかっています。
| SEOの工程 | 失敗が現れる時期 | 置き場所の目安 |
|---|---|---|
| 目的と目標を決める | 半年後 | 社内に残す |
| 狙う言葉を決める | 3か月後 | 社内に残す |
| 記事の構成を作る | 公開後 | 社内で確認する |
| 原稿を書く | 受け取った時点 | 外に出せる |
| 公開前の事実確認 | 公開後 | 社内に残す |
| CMSへの入稿作業 | その場 | 外に出せる |
| サイトの技術的な改修 | 数日から数週間 | 外に出せる |
| 数字を見て次を決める | 半年後 | 社内に残す |
この表をそのまま自社の工程に当てはめてみてください。埋めていくと、社内に残すべき工程が想像より少ないことに気づくはずです。
外に出す前に社内で決める3つ
外に出せると判断した工程にも、条件がひとつあります。渡す情報が社内で言葉になっていることです。
当社でこんな失敗をしました。ある記事で、着手前に社内の制作仕様書を読まないまま4つの章を書き進めたところ、見出しの体裁も表の形式も画像の入れ方もリンクの書き方もすべて外れており、全章を書き直すことになったのです。同じ記事では、1本あたりの分量を決めずに書いたために、短くする作業だけで4往復しました。
作業そのものが下手だったわけではありません。着手する前に決めていなかったことが、あとから全部戻ってきただけです。外注でもまったく同じことが起きます。むしろ相手は社内の事情を知らない分、手戻りは大きくなります。
そこで、原稿を外に出す前に次の3つを言葉にしておいてください。この3つが書けない工程は、まだ外に出す時期ではないと考えたほうが安全です。
- 誰に読ませたい記事なのか(部署名や役職まで)
- 自社の商品やサービスを何と呼ぶか
- 社内の事情で使えない表現はどれか
費用の考え方や依頼先の選び方まで含めた外注側の話は、SEO外注は何を任せるかで詳しく扱っています。
提案と実行を分けて回している例
工程で切り分ける形は、規模の大きい会社ほど普通に使われています。
当社が関わった案件では、東証プライム上場企業の金融系サイトで、既存記事のリライト提案書の作成を担当しました。月間4,500万セッション級のニュース系サイトでは、記事構成の作成とリライト提案書の作成を担当しています。どちらも当社が担ったのは提案書と構成までで、本文の修正と公開は当社の手を離れたところで行われていました。
提案や構成は、渡す条件さえ決まっていれば社外の人間でも作れます。一方、本文の内容が事業の説明として正しいか、公開してよい表現かという判断は、その会社の中にしかありません。工程を丸ごと渡すのではなく、判断の要る手前で線が引かれた結果として、この分担になっていました。
大きな会社だからできることではありません。丸ごと任せるか丸ごと抱えるかをやめて、工程ごとに置き場所を決めるという考え方そのものは、担当者が1人の会社でも同じように使えます。制作会社に頼める範囲と自社に残る仕事の線引きは、コンテンツSEO会社に頼める範囲でも整理しました。
「書く人がいない」「AIの品質が不安」という段階からご相談いただけます。調査・執筆・確認・納品までの進め方と品質基準を13ページの資料にまとめました。
インハウスSEOの体制は何人で組むか

ここからは体制の話に進みます。「何人必要ですか」と聞かれることが多いのですが、人数から決めると社内の説得も進みません。役割から考えると、何が足りないのかが具体的に見えてきます。
1人で回している会社は少数派です
サイト運用を1人で回している会社は、実は1割強にとどまります。先ほどと同じBtoBのマーケティング担当者330名への調査で、担当者数は「『4-5人』が31.2%で最多、4名以上が約6割」という結果でした。2人から3人を含めると、複数人で運用している会社が87.6%を占めます。
内訳を見ると、担当者が1人の会社は4.6%、決まった担当がいない会社は7.9%で、合わせても12.5%です。サイト運用は1人が兼任するもの、という感覚は、実際に運用している会社の実態とはずれているわけです。
ただし、この数字を「4人採用しないと始められない」と読む必要はありません。ここでも母数を思い出してください。回答したのはマーケティングの戦略設計に関わる人たちで、すでに体制がある会社に偏っています。
始めるときは1人でも構いません。お伝えしたいのは、1人のまま続けるのが標準形ではないということです。増やす前提で設計しておくと、あとで詰まりにくくなります。
役割は4つに割ると見通しが立つ
人数の代わりに、役割で考えてみましょう。SEOの仕事は、大きく4つの役割に分かれます。
| 役割 | 担うこと | 兼任のしやすさ |
|---|---|---|
| 責任者 | 目的と目標を決める、社内の調整、予算の確保 | 他部署の管理職が兼任しやすい |
| コンテンツ | 狙う言葉を決める、構成を作る、原稿を確認する | ここが本体。専任が望ましい |
| 技術(テクニカルSEO) | サイトの構造や表示速度の改善、不具合の修正 | 情報システム部門と分担できる |
| 分析 | 数字を見て、次に何をするかを決める | コンテンツ担当が兼任しやすい |
1人で始める場合は、この4つを1人が順番に着ることになるでしょう。無理があるのは事実ですが、4つのうちどれが今まったく手つかずかが分かれば、次に埋める穴が決まります。多くの場合、最初に空いているのは分析の役割です。
もうひとつ、社内の他部署との関係も先に考えておきましょう。大規模サイトの運用でよく起きるのは、三すくみの状態です。
SEOの担当者は課題を見つけても直す権限を持っていません。開発の部署にはSEOの優先度が伝わっていないままです。運用の部署は日々の業務に追われて改善の時間が取れません。それぞれが自分の仕事をしているのに、課題だけが放置されていきます。
防ぐ手立ては、定例の場で課題と直す順番を一緒に決めてしまうことです。SEOの担当者が「お願いする側」に回ると、優先度は後回しにされやすくなります。決める場に同席していることが、実は人数より効くのです。
つまずくのは人材像と評価基準です
詰まっているのは、実は人の数ではありません。ただ、採用が難しい領域であることは確かです。公的な職業分類にSEO職という区分はないため、いちばん近い「情報処理・通信技術者」で見てみましょう。厚生労働省が公表している2026年6月の有効求人倍率は、常用(パート含む)の原数値どうしの比較で、この分類が1.33倍、職業計が1.01倍でした。求人数そのものは前年同月より減っているものの、それでも職業全体の約1.3倍の水準にあります。
ただ、独立行政法人情報処理推進機構が2026年7月に公開した「DX動向2026」を読むと、詰まっている場所は少し違うところにあるようです。同調査では、DXを推進する人材が量の面で不足していると答えた企業が85.5%にのぼりました。1,799社への調査で、母数はDXに取り組んでいる企業です。
注目したいのはその先です。同じ調査は、人材像を設定して社内に周知している企業も、評価基準を整備している企業も、いずれも2割に満たないと報告しています。必要なスキルを把握できていない企業は過半数を占めます。どんな人が必要なのかを決めないまま、足りないと感じている状態が広がっているわけです。
あわせて同調査は、評価基準を設定している企業やスキルを把握している企業ほど不足感が低い傾向がある、とも述べています。これは傾向であって、基準を作れば人手が増えるという話ではありません。それでも、採用の前にやれることが残っているという事実は、動き出す助けになるはずです。まずは先ほどの4つの役割のうち、自社に必要なものを1行ずつ書き出すところから始めてみてください。
最初に社内へ戻すのは権限です
体制を作るとき、作業を引き取ることから始める会社が多いのですが、順番としては権限が先です。ここで言う権限とは、サーバーの設定、ドメインの管理、アクセス解析、Search Consoleといった管理画面に、社内の誰が入れるかということです。
権限がないと、やるべきことが分かっていても着手できません。当社自身にも実例があります。2026年7月に自社メディアのトップページを作り替えたとき、古いURLを新しい一覧へ転送する設定が必要でしたが、サーバー側の管理権限を持っていないため、いまも未対応のまま残っています。社内の記録にも、サーバーとリダイレクトの管理権限を得たときに転送設定を追加する、と書かれたままです。
技術的にどうすればよいかは分かっています。それでも直せません。権限がないと、知識があっても手が止まるという、ただそれだけのことが実際に起きます。外注先に管理者権限が集まっている状態で内製化を始めると、同じことが繰り返し起きるでしょう。
権限を戻すときは、あわせて「誰が持っているか」を一覧にしておくことをおすすめします。サーバー、ドメイン、アクセス解析、Search Console、CMS、この5つで管理者が誰なのかを書き出すだけです。空欄や外部の会社の名前が並んだところが、そのまま内製化の最初の交渉材料になります。
今泉の視点:体制のご相談を受けたとき、私が最初に聞くのは人数ではなく「4つの役割のうち、いま誰も持っていないものはどれですか」です。人数から聞くと「1人です」で会話が終わってしまいますが、役割で聞くと「分析だけ誰も見ていない」というように、埋めるべき穴が名前を持って出てきます。穴に名前がついた瞬間、それは採用の稟議にも書けますし、外に出す範囲の相談にも使えるでしょう。増員が通らない会社ほど、この順番で考える価値があると思っています。
インハウスSEOを始める順番と続け方

最後に、どこから手をつけるか、始める前に見積もっておくこと、そして止まらないための手当てをお伝えしましょう。順番を間違えると、いちばん重たい作業から引き取ることになります。
作業より先に判断の理由を溜める
内製化の一歩目は、記事を自分たちで書き始めることではありません。いま外部が下している判断の理由を、社内に溜めるところからです。
作業から引き取ると、たいてい元に戻ります。原稿を書けるようになっても、どの言葉を狙うかや、順位が落ちた記事に手を入れるかどうかを決められなければ、結局は誰かに聞くことになるからです。手を動かす力より、判断する力のほうが後から手に入りにくいと考えてください。
その判断力は、経験の量からしか生まれないと思われがちです。ただ、近道がひとつあります。いま外部が下している判断について、結論ではなく理由のほうを記録しておくことです。結論だけを控えても、状況が変われば使えません。理由が残っていれば、次に似た場面が来たときに自分たちで当てはめ直せます。記録の取り方はSEOコンサル費用の読み方で詳しく扱いました。
この記録が溜まると、工程の切り分けにも効いてきます。外に出したままでよい工程と、社内に引き取るべき工程を、自分たちの判断で決められるようになるからです。外注を続けながら今日から始められて、費用も発生しません。内製化の準備として、これ以上に手軽な工程を私は知りません。
書く時間より書き直す回数が効く
社内の工数の見積もりが甘くなるのは、書く時間だけを数えて、直す時間を数えていないからです。
当社は自社メディアの記事について、公開前に必ず品質の採点を行っています。書いた本人ではない担当が100点満点で採点し、90点に届かなければ書き直して採点し直す運用です。2026年7月下旬から8月上旬に作った記事の記録が61本分たまったので、採点を何回回したかを数えてみました。機械的に回数を数えられた60本が母数で、合格したかどうかは問わずに数えています。
| 採点を回した回数 | 記事数 | 割合 |
|---|---|---|
| 1回で通った | 19本 | 32% |
| 2回 | 36本 | 60% |
| 3回以上 | 5本 | 8% |
1本あたりの平均は1.8回でした。3本に2本は、一度書き上げたあとにもう一度手を入れていることになります。これは当社の記事制作の記録であって、SEOの業務全体にかかる時間ではありません。
社内の稼働を見積もるときは、この回数を計画に入れてください。3本に2本は、書き上げたあとにもう一度確認と修正の時間が要ると見込んでおく、という考え方です。書く時間だけで組んだ計画は、たいてい途中で苦しくなります。
直す回数を減らす方法もあります。当社の場合は、狙う言葉を決める工程を「候補を広げる」「数字で絞る」「実際の検索結果を自分の目で見る」の3つに割り、それぞれで使う道具を固定しました。
工程を割らないうちは、丸ごと任せるか丸ごと抱えるかしか選べません。割って初めて、人に渡せる形になります。狙う言葉の整理の仕方はキーワードマップの作り方で扱っています。
3か月後に何が残っているかで見る
体制が続いているかどうかは、作った時点では分かりません。判定できるのは3か月後です。
当社にも苦い記録があります。毎朝決まった時間に投稿文を自動で作る仕組みを社内で組んだのですが、投稿文のファイルが手元に残っているのは、動かし始めた初日の分だけでした。仕組みが動いていたのかどうかを、あとから自分たちで確かめられない状態になっていたのです。
仕組みを作ることと、動いていたかどうかを確かめられる状態にしておくことは別だと痛感しました。体制は、立ち上げた日ではなく3か月後に何が残っているかで見てください。振り返る材料が残っていなければ、うまくいっていたのかどうかを誰も確かめられません。
よく見かける原因は、手を入れる時間が誰の予定にも入っていないことです。記事を増やす時間は計画に載りますが、公開済みの記事を直す時間は載りません。1年目はそれで回るでしょう。
2年目に入ると、新しく書く仕事と直す仕事が同じ人の同じ時間を取り合い、たいてい直すほうが後回しになります。50本まで増えた時点で、月に何本を新しく書き、何本に手を入れるのかを先に決めておくと、この衝突を避けられます。
見る仕組みがないと回っていません
当社にはもうひとつ、数字を見る工程が誰の担当にもなっていなかった時期がありました。
自社メディアは記事を積み上げていました。ところが2026年7月に流入の戦略を見直したとき、伸びない理由の4つ目として、計測から改善へのループがその時点まで動いていなかったことを社内の記録に挙げています。記事を書く工程は回っていたのに、数字を見て次を決める工程が抜けていたわけです。
そこで、隔週で数字を見て次の一手を決める、月に一度は生成AIからの参照状況を確認する、という周期を先に決めて仕組みに固定しました。担当者が思い出したときに見るのではなく、周期のほうを先に置いてしまうのがポイントです。
記事の本数は、内製化がうまくいっている証拠にはなりません。積み上がっていても、見る仕組みがなければ何も判断されていないからです。次の3つが埋まっているかを、いま確かめてみてください。
- 数字を見る日が、誰かの予定表に入っているか
- 見た結果として、次にやることが決まっているか
- その判断の理由が、1行でも残っているか
インハウスSEOのよくあるご質問
まとめ
- インハウスSEOは作業の場所ではなく、判断の場所で決まります
- 工程は「失敗がいつ現れるか」で社内と社外に振り分けます
- 体制は人数ではなく、4つの役割の空きから考えます
- 続くかどうかは、3か月後に何が残っているかで判定します
今日できることを1つだけ挙げるなら、自社のSEOの工程を紙に書き出して、それぞれに「失敗がいつ分かるか」を書き添えてみてください。社内に残すべき工程が、思ったより少ないことに気づくはずです。
そのうえで、どこまでを社内で持ち、どこを外に出すかは、事業の状況や社内の人の配置によって変わります。決めきれない部分があれば、記事制作・メディア支援でご相談を承っています。
「書く人がいない」「AIの品質が不安」という段階からご相談いただけます。調査・執筆・確認・納品までの進め方と品質基準を13ページの資料にまとめました。
